ダイヤモンド社今泉様より献本御礼。
今回の「世界経済危機」の特徴の一つは「わかりにくいこと」だが、そのわかりにくい現況を解説した本の中で、もっとも包括的かつわかりやすい一冊である。
もっとも、これでも私は危機の半分しか解説していないと強く感じるのだが。
本書「世界経済危機 日本の罪と罰」は、今、世界経済で何が起きていて、それに日本がどう関わっているかを、実に手早く、しかしわかりやすくまとめた一冊。
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著者がなぜこれほど早く本書を上梓できたかといえば、一つには著者の週刊ダイヤモンドにおける連載が「下書き」となっていたところがある。しかしそれ以上に大きいのは、問題の本質が今にはじまったことではないということがある。
それが、オビに記された一行だ。
主犯・アメリカに、投機資金を供給し続けた共犯・日本。その代償として、これから未曾有の大不況が日本を襲う!
世界はこの鬼子をずっと孕んでいて、その鬼子が今年「誕生」しただけなのだ、というのが著者の一環した主張なのである。
本書を読むと、改めて
“ドメでよかった”日本経済 - Chikirinの日記まず最初に感じること、それは「国際的な国、企業、人ほど大変」ってこと。これは今回の経済危機の大きな特徴だ。
というのがいかに危険な誤解かがわかる。「それは著者やあなたの偏見でしょ」という反論には、以下のリンクを紹介するにとどめておく。
つぶれているのはドメばかりではないか。
確かに「悲鳴の大きさ」を危機の大きさと取り違えれば、これは事実だ。しかし国際的な国、企業、人がなぜ大きな悲鳴を上げることができるかといえば、それだけ痛みに敏感で、かつ健康だからだ。そうでないところというのは、悲鳴を上げる体力すらない。「ドメほど楽」というのは、末期がんの患者が、風邪で高熱を出した人を見て「大変ですなあ」というようなものである。
新たな「失われた10年」が始まる - 池田信夫 blogむしろ急性の症状が出たアメリカのほうが問題を認識し、国民にも危機感が共有されているので、立ち直るのも早いだろう。日本でもっとも危機的なのは、危機感が欠如していることである。
に、著者も私も同意するゆえんである。
それでも、私は著者の危機感はまだ足りないと感じる。著者は現在の経済状況に危機を感じつつも、価値観そのものには危機を感じていない。その様子は、たとえば日野市の浄化槽とシリコンバレーの下水の話に表れている(P. 104)。著者はこれを「貧しい日本、豊かなアメリカ」という文脈でとらえているが、私に言わせれば浪費と投資の取り違えだ。環境負荷という点においては、浄化槽の方が下水道よりよっぽど優秀なのだから。
著者はいくらかはアメリカ的浪費に疑問を投げかけてはいるものの、それが今回の危機にとって本質的なものであるとまではとらえていない。もっとも、その点は私には不満ではない。この著者にそれを求めるのはないものねだりである。
おそらく読者が最も読みたいのは、最終章の「いかに対処すべきか?」だろう。正直元気が出ることは何も書いていないが、積極投資に値する唯一の対象が教育というのは、私も同感だ。最近も私はある経済関連雑誌のインタビューで、「10万円あるならFXではなく本を買え」と言ったが、危機感もないのに本をめくっても時間の浪費にしかならないというのも残念ながら事実なのである。
というわけで、今度こそは、著者の主張に危機感をもって耳を傾けていただければと思わずにはいられない。共有すべきは意見ではなく、危機感なのだから。
Dan the Economic Animal

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