もうすでに明けておりますが、おめでとうございます。

去年の

に引き続き、今年も。

前日の晩、宴会していたので一日遅れになっちゃいましたが、今年もよろしくお願いします。

選定方針は、去年と同じ。

404 Blog Not Found:2008年のお年玉で買うべき本10冊
ここでは、一度買ったら一生ものとして読める本を慎重に選んでいます。ですから、「404 Blog Not Found:2008年の仕事始めまでに読んでおきたいビジネス書x10」のように、読む順番にこだわる必要はありません。何なら積読だって構いません。ただし、一度手に入れたら、引っ越しても手放さないでくださいね。何度も何度も読み返すことに、意味がある本なのですから。

順不同でお楽しみください。

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えの素(完全版全三巻)
榎本俊二

えの素

いきなりこれかよ!って声が聞こえてきそうですが、いいものはいい。

404 Blog Not Found:New Elements that Shake the World
しかし、これだけの超大作をものにしてしまうと、あとが大変だと同情を禁じ得ない。 「がきデカ」 の後の山上たつひこ氏、 「さる漫」 の後の相原コージ氏。ギャグ漫画家の旬はなんとはかなく短いのだろうか....

エロ・グロ・ナンセンスという、今なお低俗扱いされるマンガの中でも最も低俗なジャンルも、極めれば芸術としかいいようがないものになる。高度に発達した低俗は、芸術と見分けがつかないのです。

元々全9巻で、絶版後入手困難になっていたのですが、去年の夏に完全版として復刊。名作として扱われるには入手の容易さも問われるだけに、実にうれしいことです。

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働く理由/続・働く理由
戸田智弘

働く理由/続・働く理由

これ、まだ未書評だったのですが、いいタイミングなので。

ディスカヴァー社長室blog: あのベストセラー「働く理由」の続編 登場! ●干場
副題に、「99の至言から学ぶジンセイ論」とあるように(「働く理由」では、99の「名言」でした。「名言」を「至言」に変えてちょっとだけ差をつけた、編集担当千葉の努力を誉めてやってください!?)、ゲーテ、スピノザから、太田光、野村監督まで、古今東西の人生の先輩の名言を引きつつ、著者の戸田智弘さんが、仕事と人生について、成功と幸福について、熱く語りつつ、読者に、ちょっと止まって見る時空間を提供します。

全部読む必要はありません。気に入った名言を見つけられればいいのです。

ここでは一つだけ取り上げます。

「続・働く理由」P.49
型ができていない者が芝居をすると型なしになる。メチャクチャだ。
型がしっかりした奴がオリジナリティを押し出せば型破りになれる。
どうだ、わかるか?難しすぎるか。
結論を云えば型をつくるには稽古しかないんだ。
-- 立川談志(落語家)

私自身、「これでよし」という実感を持つのは、「型を得た」時です。

そしてblogというのは、絶好の稽古場です。

この世でいちばん大事な「カネ」の話

カネに関して、大事な話もたくさんあります。

わかりやすい本も、たくさんあります。

しかしその両方をカネそなえている本というのは意外に少なく、最近出た本の中で、その両方を兼ね備えた本となるとこれになるでしょう。

404 Blog Not Found:最もやさしいサイバラ本 - 書評 - この世でいちばん大事な「カネ」の話
本書が収録されている「よりみちパン!セ」というのは、子供でもきちんと読めるものでないと駄目な器だ。それを逆手に取った「正しい保健体育」は実に見事だったけど、本書は「金」という、誤解されてはセックスよりもやばい、それでいて二次性徴を迎える前からつきあわなければならず、そしてそれは今際の際まで続くという、まさに「いちばん大事な」話である。著者の直球は、正しい。
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男一代菩薩道

インド仏教の頂点に立つ日本人、佐々井秀嶺
小林三旅/ 今村守之構成

男一代菩薩道

もしくは「破天」。どちらを読んでもよいのですが、どちらも佐々井秀嶺の伝記です。

404 Blog Not Found:君は佐々井秀嶺を知っているか - 書評 - 男一代菩薩道
男一代菩薩道|アスペクト ASPECT ONLINE
■佐々井秀嶺の軌跡
1935年 岡山県生まれ、本名佐々井実。25歳で出家し、高尾山に入山。
1967年 渡印、マハーラーシュトラ州ナグプール市で布教活動を開始。インド憲法の父B・R・アンベードカルが創始した新仏教運動に影響を受け、仏教の再興と不可触民の救済に従事する。
1988年 ヒンドゥー社会からの度重なる弾圧をはねのけ、インド国籍を取得。
1992年 聖地・大菩提寺の奪還闘争、数千人の不可触民と敢行した5000キロの大行進は、全インドの注目を集める。
2003年 全インド宗教的マイノリティ委員会の仏教徒代表に就任。

タイを経て33歳でインド入りして以来、40年一度も日本に戻らず、仏教の生誕国で全国の仏教者を束ねている。それが佐々井秀嶺である。

こんな人がいる、というのを知っておくだけでも、人生の受け止め方が変わります。

日本という方法

すごい人を見たら、すごい国も見ておきましょう。

この国です。

とはいっても「とてつもない日本」ではありません。本当にとてつもないものは、そんな形容詞を付ける必要はないのですから。

404 Blog Not Found:この手があったか! - 書評 - 日本という方法
しかし、この日本という方法が生き残れるかどうかが、世界が、そう世界が今後うまくやっていけるかの分かれ目になると私は踏んでいる。特に重要なのは、世界が貧困を克服した後だ。その後に世界が平和にやっていけるかどうかは、世界に日本という方法をインストール、いやプラグインできるかどうかにかかっている。今はまだその時ではない。が、その時が来た時、日本という方法は生き残っているだろうか。

人類は「宗教」に勝てるか

しかしこの国のすごさは、この国だけ見ていてもわかりません。

この国の外がどんなであるか、この本が教えてくれます。

404 Blog Not Found:「人類最大の敵」 - 書評 - 人類は「宗教」に勝てるか
P. 46
予期した通り、そのセミナーを登録した学生は全員がクリスチャンであった。遠藤周作の「沈黙」の英語版などをテキストとしながら、何週間かは楽しくクラスが進行した。ところが、ある日、授業の最中にしくしくと泣き出す女子学生がいた。私なりクラスメートなりが彼女を傷つけよるようなことを言ったのかと考えてみたが、どうもその様子はない。
そのままにしておくわけにもいかないので、思いきって、理由を尋ねてみた。涙を拭きながら、カリフォルニア出身の日系二世だった彼女は、次のように語った。「隠れキリシタンもイエスの教えに命を捧げましたが、私もクリスチャンとして洗礼を受けました。私の父も兄も洗礼を受けてくれました。ところが、母だけが頑として洗礼を受けようとしません。それどころか、ご先祖が大切だといって、毎日、仏壇に手を合わせています。私は母が好きですが、このままでは彼女は地獄に落ちてしまいます。」

この感覚は、実体験してみないとなかなか解りづらい。別に改宗しなくとも教会で結婚式が挙げられるこの国で、「入信しなければ地獄行き」と信じている人がいて、それどころかそう信じている人の方がはるかに多いのだということはなかなかわからない。

日本語が亡びるとき

厳しいことをいうようですが、「この国がすごい」というのは「この国の人々がすごい」を意味するわけでは決してありません。この国の人々ほどその国のすごさに無頓着な人々もそうはいない。

宗教もそうですが、言葉ほどそれが如実に表れている分野もそうはないのではないでしょうか。

404 Blog Not Found:今世紀最重要の一冊 - 書評 - 日本語が亡びるとき
逆になぜ今まで大丈夫だったかを考えれば、なぜ今は「絶対、大丈夫」ではないかは明白である。日本語は、島国であるという「距離」と1億3000万(日本の人口よりわずかに多いのは、わずかではあるが日本人でない話者もいるから)、世界の50人に一人、それも最も経済的に豊かな方の一人が話し手であるという「質量」によって「自然」に護られてきた。なぜ日本語が「ねんごろに扱われなかった」かといえば、そうする必要がなかったからである--今までは。
しかし、前述のとおり、この二つの「堀」は、急速に埋まりつつある。すでに「距離」という外堀は埋まっている。そして今世紀いっぱいかけて、「質量」という内堀も埋まってしまうのだ。
この両方が埋まった時、日本語を護るものは、もはや何もない。

となりの車線はなぜスイスイ進むのか?

ちょっと文系な本が続いたので、ここからは理系に。

404 Blog Not Found:道に出る人、必読! - 書評 - となりの車線はなぜスイスイ進むのか?
その中でも、やはり一番の見所は「交通安全」に関する話題だろう。第7章「危険な道の方がかえって安全?」に出てくる、道路標識を95%撤去したら、交通量が減らなかったにも関わらず事故が60%減ったロンドンのケンジントン・ハイ・ストリートの事例は、目から鱗というか、目から標識というか、重大事故が起こると信号機が「生えてくる」この国においてはなおのことびっくりである。

理系度では「渋滞学」が上ではありますが、しかし「渋滞学」が「実験と理論」に重きを置いているのに対し、こちらは観測に重きをおいているという点でうまく「すみ分けて」います。

地球温暖化の予測は「正しい」か?

最後の一冊は、これにしました。

404 Blog Not Found:地球はとにかく頭が冷える良本 - 書評 - 地球温暖化の予測は「正しい」か?
本書「地球温暖化の予測は「正しい」か?」は、気候シミュレーションの第一線で研究している著者が、気候シミュレーションとはなにか、気候シミュレーションはどうやって地球温暖化という予測を出したのか、そして今後気候シミュレーションはどうなっていくのかを、研究者ならぬ一般人にもわかりやすく、しかし要点を落とさずに書いた一冊。

地球温暖化というのはセンセーショナルな話題なだけに、なかなか「地球と一緒に頭も冷やせ!」というわけには行かないのですが、本書の地味さがこの派手な本が多い話題の中でいっそう輝きを増しています。

まとめ - あまりまとまってませんが

繰り返しになりますが、今回も前回と同じく、「なるべく時を経ても価値を減じない」という点を考慮して選んでいます。そして「価値を減じない」の中には、「そう簡単に入手困難にならない」という点も入っています。いくらよい本でも、読めなければ存在しないに等しくなってしまいます。

去年は、いわゆる社会人となってから最も本を読んだ年でしたし、最も多く本を頂いた年でもありました。実にうれしかった一方、それらの本の参考文献があっさり絶版していることも多く、いかに本というものが簡単に入手困難になってしまうのかを思い知らされた年でもありました。去年紹介した「オイラーの贈物」も、中古でしか手に入らなくなってしまっているのは残念なことです。

かといって、本を在庫しておくのがどれほどの困難かということを、私自身身をもって知っております。気安く「絶版しないでよ!」というには、文字通り本の重さを私は知りすぎています。

せめてここで紹介した本ぐらいは、末永く入手可能にしていただけるとうれしいのですが>出版社各位。

Dan the Learner