面白い。
クルーグマン:恒星間貿易の理論 - P.E.S.恒星間貿易の第一基本定理:貿易が共通の慣性系内の二つの惑星間で行われる場合、財についての利子費用は、輸送を行う宇宙船の慣性系内の時計によってではなく、その共通の慣性系内にある時計により測られた時間で計算されるべきである。
けれど、この第一原理に関しては、この論文の前にすでに応用がなされている。
それが、こちら。
原作が1974年なので、Krugman論文より4年早いことになる。Krugmanが本作を読んでいないはずはないのだけど、しかしReferenceに本作は出てこない。
以前にも
404 Blog Not Found:終わりなき肉欲との戦い私は本書をSci-Fiのベスト10、いや5に入れる。まだ読んでない方はぜひ一読を。
と紹介したことがある大傑作なのだけど、ウラシマ効果と利息の合わせ技は本作がはじめてなのではなかろうか(でも、ショートショートでそれだけ扱った作品があってもおかしくなさそう)。
終りなき戦い - Wikipedia超光速航法「コラプサー・ジャンプ」を発見した人類は、その活動の幅を宇宙へと大きく広げていた。だが謎の異星人に宇宙船を攻撃されたことに端を発して、人類はトーランと呼ばれるこの異星人との戦争を開始することになる。そんな中エリート徴兵法により徴兵された主人公のウィリアム・マンデラは、苛酷な訓練を受けトーランとの戦いに赴く。一つの戦いから帰還するたびにウラシマ効果によって数十年が経過し、家族や知人は次々と世を去り、地球の社会そのものが大きく変容していく。
そう。一つの戦いごとにウラシマ効果が発生するので、宇宙兵の給与はとんでもないことになる。
まず、一度目の帰還の時。
P. 169「きみたちの大部分は四〇万ドルほどの預金があるな。これまでの給料と利子だ。」
そして何度目かの帰還の時。
「おれの給料は八億九千二百七十四万六千十二ドルだった。幸運にも、貨幣が俵に詰められて送られてきたわけじゃない」
うらやましい?でも給料にありつくためには生き残らなくちゃならなくて....
P. 254主観時間でおよそ一年ごとに一回、戦闘に遭遇すると考えられる。各戦闘での生存の確率は三十四パーセントである。十年を戦い抜ける可能性は簡単に計算できるだろう。一パーセントの千分の二である。言い換えれば、リヴォルバーを使った昔ながらのロシアン・ルーレットを考えてみればいい。六つの弾倉に四発弾丸のつまったロシアン・ルーレットだ。これを続けて十回やって、脳漿が飛び散らなかったら、おめでとう!はれて除隊だ。
「戦争とは政治の手段である」と言ったのはクラウゼヴィッツだったけど、経済の手段でもある。
クルーグマン:恒星間貿易の理論 - P.E.S.この論文において発見された二つの定理を組み合わせると、我々は同じ慣性系にある惑星間での恒星間貿易の一貫した理論の基礎を得たことになる。恒星間貿易の航行は、惑星間で共通の利子率により評価される投資のプロジェクトとみなせるわけだ。これにより、要素価格、所得の分配、そして厚生への貿易の効果を、一般均衡分析のいつものツールを使って調べることができるようになる。そこから見えてくる世界、いや、というより宇宙の姿は、おかしな(lunatic)ものではない;月ではなく、星々なのだ[stellar, maybe, but not lunatic]。
しかし、恒星間戦争はlunaticなものになりそうだ。戦時国債のことを考えただけでも。
Dan the Mortal Economic Animal
この宇宙船が慣性系であるなら、
二つの惑星も、それぞれ別の慣性系になるはずだが。
(厳密には惑星は慣性系ではないとも言えるが)
このメタファーは、むしろ、混乱を呼ぶ。