そろそろこのニュースについて語っておくか。

livedoor ニュース - [年越し派遣村]失業者ら「今日からが勝負」撤収作業開始
東京・日比谷公園に昨年末出現した「年越し派遣村」には、約500人の労働者が入村し、1680人もの支援ボランティアが集まった。短期間で世間の注目を浴びた村の存在が浮き彫りにしたのは、底なしの雇用不安の実態と「働かされ方」の仕組みへの疑問だった。人災との指摘も出始めた「派遣切り」。村で同じ時間を共有した入村者やボランティアは何を感じたのか。

まず驚いたのが、「500人しか集まらなかったの?」ということ。

複数の団体が主催してこの人数。しかも日比谷公園という絶好のロケーションで。

東京というのはすごいところで、一声かけただけでも100人を超えるような宴会がすぐ出来たりする。勝間さんが一声かけただけで、1000人を超えるような講演会が催される。「東京で催される集まり」として、「客」が500人というのはいかにも少ない。

それにも増して驚いたのが、ボランティアの数。1680人。「客」一人に「ホスト」が3人以上。これでは「人助け」というより「人助けをネタにボランティアたちが自己表現を楽しむイベント」と見なされかねない。これだけボランティアが来たら、その10倍、5,000人は「客」が来ないとだめだと当初は思った。

「派遣村」の偽善 - 池田信夫 blog
もちろん「政治活動を主目的に活動している」ことは明らかだ。しかも、かなりメディアの扱いに慣れたプロがやっている。中核になっているのは労組や共産党の活動家だろうが、彼らは表に出ず、取材にはボランティアが対応する。「派遣」を前面に出したのも巧妙だ。労使紛争はメディアではあまり取り上げないが、派遣という新味があればネタになる。

と見られるのも無理はない、と感じた。

しかし、500人の失業者、1680人のボランティアというのは、ニュースバリューとして「臨界点」を充分超える大きさではあった。だからこそ「それ以外」の人が、否定的、肯定的を問わず意見を持ち、それを発言することにつながった(本entryを含めて)。

それでいて、500人というのは「既存の仕組み」を援用しただけで「救い出せる」程度に小さい。

livedoor ニュース - <年越し派遣村>207人に生活保護 千代田区1カ月分支給
東京・日比谷公園の「年越し派遣村」にいた失業者のうち、生活保護を申請していた207人に対し、東京都千代田区は1カ月分の保護費を支給することを決めた。申請者の大半は所持金がほとんどなく、住居や仕事を探すことが難しい事情を考慮、短期間での申請を認めた。

もしこれが5,000人だったら、こう行ったかどうかは疑問だ。

年越し派遣村というイベントには、少なくとも二つの目的があったはず。

  1. 見ず知らずの人に、「そこに解決すべき問題がある」ことを報せること
  2. 参加者に、具体的かつ充分な救いの手を差し伸べること

「何人集まった」とか「どんな意見が上がったか」という「中途過程」だけ見ると、私には正直あまり成功したようには見えないが、それでも、いやそれゆえに年越し派遣村は

livedoor ニュース - 【眼光紙背】鶏口とならず、牛後となるべし
日比谷公園で展開されている「年越し派遣村」は、弱者救済の観点からも、政治的な観点からも、極めて成功した「運動」と言っていいだろう。

という結果になったのだと思う。

もちろん、その上にさらに

  1. 参加していない人にも、具体的かつ充分な救いの手を差し伸べること

という大目標があるのは確かで、そしてこの大目標を考えると、やはり「年越し派遣村」は小さ過ぎたという見方もできなくはない。

livedoor ニュース - <年越し派遣村>4施設の相談窓口 厚労省継続認めず
「年越し派遣村」実行委員会は9日、同村にいた失業者が身を寄せている4施設の使用期限が12日に迫っていることから、施設にある住宅などの総合相談窓口設置の継続を求め、厚生労働省と交渉した。同省は継続を認めず、実行委は再検討を求めた。

おそらく政府の側は、「これは今回ばかりの一過性かつ特別な措置」と思い込んでいるはずだ。喉元過ぎれば忘れられる熱さなのだ、と。

しかし、そういう大目標はたった一回のイベントで達成すべきことでは本来ないはずで、「大目標が未達だから失敗」という人は、一四半期だけ見て「今年の目標に達していない」というようなものだ。

livedoor ニュース - 【眼光紙背】鶏口とならず、牛後となるべし
そうしたプライドは一度、脇に置いて、立場は違っても数の力を活かすことのできる場所の一因となる。鶏口とならず牛後となり、大きな運動体の一員として運動の下支えをしたり、他人にすがる。それもまた1つの「努力」の形である。

それをあれだけ秩序だって、あれだけ迷惑がられずに達成したというのは、たしかにすごいことではないのか。

Dan the Witness