新潮社後藤様より献本御礼。

ちょっと紹介しにくいかな....と思ったら渡りに船なentryが。

日本に起業家が少ない理由 - Chikirinの日記
上に書いてある「社会適応スキル」てのは、“現在社会において求められるいくつかの関門を要領よく切り抜けるスキル”ってこと。今の日本だと具体的には受験でいい成績をおさめるとか就職の面接で巧く乗り切るとかね。そういうスキルの高い人と低い人がいる。高い人が左側で低い人が右側ね。
縦は「自己抑制キャパシティ」、簡単に言えば「どの程度くだらんことに耐えられるか」ということ。

面白い。けど事実はもっと単純じゃないかというのが本書を読了しての感想。

本書「マイクロソフト戦記」を書いたのは、こんな著者。

トム佐藤『マイクロソフト戦記―世界標準の作られ方―』|新潮社
1960(昭和35)年大阪府生まれ。新規事業開発コンサルタント。十三歳で渡英、ロンドン大学卒業(天文物理学専攻)。イギリスマイクロソフト入社後、マイクロソフト日本法人でウィンドウズのマーケティングを担当する。著書に『だからアメリカで起業した』。

あ、これじゃわからないか。さすがにこれでは短過ぎる。

著者がマイクロソフトに入る前....

  • 大学卒業直後、会社を起こして二つ潰し
  • なりゆきでMSXのコンサルタントをしていたら...
  • マイクロソフトからお呼びがかかった

というのが著者のマイクロソフト入社のきっかけ。一頃で言うと、起業ドロップアウトだったのだ。それが1985年。そしてWindows 3.0が出て、DOS/Vが日本に登場する1月前に、マイクロソフトを退社している。本書は著者が大学を卒業してからマイクロソフト退社するあたりまでの著者の自伝兼年代記である。

年代記、という部分に関しては、正直いまいちの出来。仮に出来がよかったとしても、Windows 3.0というのは私のような中年にすらもう古き佳き思い出になりつつある。せめてWindows 95までの歴史があれば、想定読者の記憶も鮮明だったはずなのだが。

しかし、である。

本書は、こういう「起業失敗から成長企業の中核人材へ」というキャリアパスの実例として、実に面白くかつ説得力がある。そしてこういう形での中途採用というのは、20年近く経った今でもシリコンバレーのデファクトスタンダードなのだ。そこでは成長企業が起業失敗のセイフティ・ネットとなっている。

ここで日本の会社を見回して欲しい。起業失敗者が成長企業、もしくは大企業の幹部となった例はどれくらいあるか?

私がCTOをしていた会社は、この点で実に希有だった。私自身も、「失敗」こそしていないけれど、小企業のおやじ(まだ辛うじておにいさんだったか)。個人的には「むしろ当然」と思っていたが、周りを見るとその希有さがより目立っていた。

日本に起業家が少ない理由。それは中途採用が少ないから。

それが著者の答えであり、私の答え。

ヴェンチャーの幹部、というか創業者直属の「トップ下」を見ると、むしろ大企業の中堅が「横滑り」してきた例こそ多数派。彼らは専門分野という「縦方向」には強くても、分野がまたがったり、そもそもまだ分野そのものが確立していない「横方向」には弱い。だから創業者(かつ社長)がより強い求心力で彼らを結びつけないと、会社が簡単にばらばらになってしまう。

これに対して、起業経験者は縦方向にも横方向にも「伸び」が効くので、彼ら自身が会社を束ねる糊としての機能を果たせる。どちらが「使えるか」といえば後者。しかし本書の著者も、そしていみじくも私も示したように、彼らはあまり自社に「長居」をしない。なぜ日本の会社が中途採用を嫌うかといえば、中途採用者は中途で退社するのに躊躇しないということもあるのだろう。

404 Blog Not Found:惰訳 - 起業における神話トップ10」にあるように、実のところ起業の成功率はどちらも同じぐらい。むしろかの国の方が高いぐらい。しかし失敗した後が全然違う。かの国には「失敗済み」は付加価値だが、この国では瑕疵なのだ。

実はこのことは、「マイクロソフト戦記」という本書の主題はおろか「世界標準の作られ方」という副題でもない。しかしそのどちらより、「起業敗者復活戦」の内容は面白かったし、読者の役に立つだろう。

Dan the Employer of His Own