ブルーバックス出版部の山岸様より献本御礼。
実にいい頭の体操だった。何とか全問解くことが出来たが、改めて感じたのは、算数とは「小学生までの数学」では決してない、ということ。大人がやりなおすだけの価値は、確かにある。
本書「やりなおしの算数」は、今は亡き月刊「現代」に連載していた「中高年のためのやり直し算数道場」を改めて一冊にまとめたもの。
目次 - やりなおし算数道場 小学校でこう教わりたかった! 歌丸優一 花摘香里 講談社より- 仕事算
- ニュートン算
- 比の文章題
- 過不足算
- 集合
- 旅人算etc.
- 通過算
- 流水算
- 時計算
- 循環小数
- 約数の個数と総和
- アマリーサリーバラバリー
- N進法
- 場合の数・順列(並べ方)
- 場合の数・組合せ(選び方)
- 場合の数・腕試し編その1
- 場合の数・腕試し編その2
- 面積
- 相似形と線分比
- 積み木の問題
- 立方体の切り口
たとえば、以下の問題。あなたはどう解くだろうか。
P. 51何人かの子どもたちにキャンディーを配ります。1人に4個ずつ配るとキャンディーが10個余り、7個ずつ配るとキャンディーが5個足りません。
(1)子どもは何人いますか?
(2)キャンディーは何個ありますか?
大人、というより連立方程式を知っている人であれば、こんな感じであろうか。
子どもの数をx、キャンディーの数をyとすると、
4x + 10 = y -- (1)
7x - 5 = y -- (2)
(2) - (1) で、 3x - 15 = 0 、よって x = 5
(2)または(1)に x = 5 を代入すると、y = 30
数学の答えとしてはこれでOKなのだが、しかし算数では方程式はまだ使えない。あなたならどうするか。以下は、算数の答えの一例だ。
キャンディーを4個から7個に増やしたら、10個余るのが5個足りなくなった
→ キャンディーを一人あたり3個増やしたら、15個余計に必要になる
→ 子どもは15÷3で5人。
→ キャンディーは4×5+10=30個
確かに方程式を使うと、ほとんど考えなくても解ける。問題をそのまま方程式に書き直し、方程式をそのまま解けばよいのだから。式が勝手に解いてくれる。これこそ方程式の醍醐味なのだが、しかしそれは頭をそれだけ使わないということでもあり、そして解法の一般性が高い分、答えを出すのが遅くなる。
それと比べて、算数ではいちいち別の問題に別の解法をひねり出さなければならない。その分頭を使うし、そして解法の一般性が低い代わりに答えがずっと速く出る。
実は上の問題、10歳の長女とその4倍の年齢の妻の双方に解いてもらった。算数的に解いた長女は、数学的に解いた妻の四倍速く回答した。算数の圧勝である。
私自身は、物心がついた頃には代数を使っていたのをはっきりと覚えている。もっとも私の物心がついたのはすごく遅くて、今の長女ぐらいかそれより後なのだが。そのせいか本書の算数がかえって新鮮だった。そして今でも何とか算数的に解くことも出来る自分を発見してちょっとうれしくもあった。
数学が難しくて頭が痛くなってきたら、算数に回帰してみるのもよいかも知れない。脳の別の部位が刺激されるのがはっきりわかる。本当ですヨ。
Dan the (Classical) Computer
算数:喧嘩屋(我流)