エクスナレッジ深澤様より献本御礼。
世界一の富豪の等身大の姿が、最もよく描写された良著。
本書「バフェットの株主総会」は、オマハの賢人こと Warren Buffet が運営するBerkshire Hathawayの株主総会をヘッジファンドを運営する著者が2007年そして2008年の二度に渡って「巡礼」してみたレポート。何がそこで語られたのかであればそこに居た者であれば書けるが、本書のキモは何がそこで語られなかったかにある。
目次 - Amazonより
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朝早くから、午後の半ばまで、株主たちは思い思いの質問をし、バフェットがそれにひとつひとつ答える。質問者の数は50人以上。質問の内容は、投資で大成功する方法についてから、10歳の野心的な少女が最初に就くべき職業についてまで、多岐にわたる――
70代の バフェット と、そして80代の マンガー が5時間以上を費やして、50以上の質問に答えて行く様はすごいの一言。株主総会かくあるべし、と言いたいところであるが、著者--そしておそらく読者--は、そこである質問がほとんど全くなされていないことに気がつく。
事業会社としての、バークシャー・ハザウェイに関する質問だ。
投資会社としての同社のパフォーマンスは、神業と呼ぶに相応しい。バフェットが経営権を握った時点では18ドルだった株価は、2007年後半には15万1650ドル。その間に、ダウ・ジョーンズ工業平均は1425パーセント、14倍しか上がっていない。バークシャーへの投資は、ダウ平均への投資の533倍にもなったのだ。
しかし同社は、76もの事業会社の持ち株会社でもある。「ファミリー」と呼ばれるこれらの企業は、プライベートジェットの共同利用を進めるネットジェッツから、ナイフの製造メーカーまで含まれる。これらのファミリー企業にとって、オマハの株主総会はまたとないかきいれ時だ。ネブラスカ・ファニチャー・マートに至っては、この株主総会の週末だけで年間売り上げの1割以上を得ている。
この「ファミリー」が、ぱっとしないのだ。
バフェットはこれらのうち特に七社を、七聖人と褒め讃えた。これらの七社とは、
P. 364ワールド・ブック・エンサイクロペディア、バッファロー・ニューズ、掃除機のカービー、作業服のフェックハイマー、ギンズナイフなども手がけている複合企業スコット・フェツァー、シーズキャンディーズ、そして、バフェットの自慢の種で、”北米最大の家具店”と謳うネブラスカ・ファーニチャー・マート
である。これらのうち、一社でもご存知でかつバークシャーの株主でない日本人はいるだろうか。私も本書を読むまで知らなかった。だといって恥じ入る必要は全くない。なにしろ
P. 365シーズキャンディーズを除けば、”七聖人”はもう何年も前から聖者の行進をしていない
のだから。シーズキャンディーズにしても、たとえばネスレやユニリーバとはほどとおい。
何が、聖人たちを「まったり」させてしまったのだろうか。
是非本書で確認していただきたい。
そこにこそ、オマハの賢人の実像がある。
著者は二回にわたって株主総会に出席し、そしてその都度ネブラスカ・ファーニチャー・マートを訪れているが、その一方でバフェット本人とはあえて直接話していない。距離を保ってこそ見えてくることが確かにあるのだ。偶像崇拝とはほどとおい著者ですら、本人と直接対話したら「感化」されてしまうかも知れない。バフェットはそれくらい魅力的な人物であり、そしてパートナーであるマンガーはそのバフェットに劣らぬほど賢明な人物である。彼らの魅力を余すことなく伝えつつ、それでいてのぼせてしまうことがない著者ほど、バフェットウォッチャーとして適任の人物はいないだろう。バフェット伝は、正直この一冊で必要十分ではないか。
Dan the Layman
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