文藝春秋下山様より献本御礼。
臥せっているうちに「極東ブログ: [書評]ハチはなぜ大量死したのか(ローワン・ジェイコブセン)」が上がってしまったが、ここでも書評しておく価値がある一冊なので。
本書「ハチはなぜ大量死したのか」の原題、"Fruitless Fall"を見て、「沈黙の春」の思い出した人も少なくないのではないか。本書の主題は確かに「アメリカの養蜂で起きた異変」ではあるのだけど、それよりも一段と広い視点、すなわち現在の工業化した農業と、それが「工業化された」生物に与える過負荷に対する警告の書として読むべき一冊になっている。
目次 - Amazonより- ハチが消えた
- あなたのその朝食は
- 集団としての知性
- 何かがおかしい
- 犯人を追う
- 夢の農薬
- おかされた巣箱を見る
- 人間の経済に組み込まれた
- 複合汚染
- ロシアのミツバチは「復元力」をもつ
- もし世界に花がなかったら?
- 実りなき秋
- 初霜
本書の主題であるColony Collapse Disorder = 蜂群崩壊症候群の原因は、未だ明らかになっていない。もちろん本書を読んでも明らかにならない。規制ダニ、農薬、ノゼマ病....さまざまな候補が列挙されるが、真犯人はわからずじまいだ。
しかし本書はその犯人探しの過程を通して、いかにミツバチたちが農業において大活躍しているのか、それゆえにいかに酷使されつづけているのか、そして昆虫と虫媒花たちの「蜜月」に、いかに人間たちが割り込んできたのかを徐々に明らかにしていく。果実(fruit)は受粉(pollination)なしには得られず、それゆえミツバチたちなき秋は、実りなき秋を招くのだ、と。
ミツバチ。英語でも Honey Bee と言う。日本語で「働きもの」というとアリをイメージすることが多いが、英語で働き者の代表格がむしろ Bee であるのは、あくまで自分の巣のために働くアリよりも、人のためにも役立ってきたということも大きいのだろう。ちなみに英語の Bee というのは日本語の「ハチ」よりも限定的で、スズメバチのように腰がくびれたものは Hornet と言う。
しかし今やミツバチたちのアメリカにおける主な仕事は、蜜集めではなく受粉であることを本書は紹介している。蜂蜜はコーンシロップと中国産の「往復ビンタ」を食らっている一方、アーモンドブームが巣箱のレンタル料を、20ドルから140ドルへと押し上げた。アーモンドの「実」は、実は「仁」。全ての花を実にしてしまってはかえって困る他の果物と異なり、「果物」を捨て「種」を取るアーモンドでは、全ての花を受粉させないと商売にならないのだ。このコーンシロップに関しては、日本も一枚噛んでいる。コーンスターチというでんぷんをブドウ糖果糖液に変える技術は実は日本製。日本に多大な外貨をもたらしたこの技術が、養蜂業を苦しめることになる。このことが本書に出てこないのがちょっと不思議だった。しかし本書にはこうした思いもかけないジレンマが数多く登場する。「夢の農薬」は養蜂家の悪夢であり、復元力を持つロシアのミツバチはそう簡単に人間の思い通りになってくれない....
残念ながら、自然も本書も「だからこうすればいい」という明快な回答を与えてはくれない。むしろ本書の教訓は、単純明快な回答というものがいかにあちこちに軋轢をもたらすのかということだろう。しかし「あるがまま」の自然では、我々は充分な実りを得ることは出来ない....
本書は、ある意味「花」なのだ。それも未受粉の。そこにどんな実を成らせるかは、読者次第というわけだ。あなたはどんな「ハチ」になるだろうか。
そうそう。邦訳には原著になかったニホンミツバチというおまけもついてくる。これがなかなか「おいしい」。なぜ著者が書き落としてしまったかわからないほど。以下はそのニホンミツバチの驚異的なクリップ。
スズメバチにもダニにも強いニホンミツバチは、しかしセイヨウミツバチの代わりとはなっていないようだ。「よりロバストなハチを」という願いは、アフリカミツバチという実に手痛い教訓を残している(これも本書でもっと触れて欲しかった)。私自信ミツバチアレルギーなので、ハチに対しては敬意というより畏怖がむしろ強い。学生寮の壁の中に巣を作っていた彼らに文字通り殺されかけたこともある。一寸の虫の魂は、五分どころではすまないだろう。
Dan the Honey Sucker

本書は、まだ未読ですが以前読んだ
「悪魔の新・農薬「ネオニコチノイド」」
という本を思い出しました。
この農薬にて8が大量死し、人体にも影響が
あるいった内容でした。
ご参考までに。