大竹先生のお勧めで入手。
大竹文雄のブログ: だまされないための年金・医療・介護入門学習院大学准教授の鈴木亘氏の「だまされないための年金・医療・介護入門」という本は、社会保障がもたらしている世代間不公平の実態を明らかにしてくれる。
久々に弾言する。今後は本書は読まずして、社会保障について語るべからず、と。
それだけにハードカバー、1995円という価格設定が惜しまれるが、それだけの価値はある。いいすぎかも知れないが、社会保障費を滞納してでも読んでおくべき一冊だ。
本書「だまされないための年金・医療・介護入門」は、現在の日本の社会保障制度がなぜ持続不可能なのかを明らかにした上で、それを持続可能にするためには何をすべきなのかをきちんと語った、現時点では唯一の一冊。
「唯一の一冊」と言いきれるのには、わけがある。
目次 - 書籍 だまされないための年金・医療・介護入門 | 商品案内 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンラインを大幅追補
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まず本書の前半では、我々がどう「だまされて」いるかを、「だます」側の主張をとりあげつつ明快に解説している。「娘に語る年金の話」や「”年金破綻”は本当か??年金の誤解を解く!(1) | 社会・政治 | 投資・経済・ビジネスの東洋経済オンライン」(何たる皮肉)は完全に論破されていて、赤木智弘も多いに溜飲を下げるはずだ。
「だまされない」、すなわち現状をきちんと指摘しているという点においては、同じく大竹先生お勧めの「大貧困社会」も本書に勝るとも劣らない。本書ほど綿密な考察がない一方、要点はきちんと押さえられている上に、感性に訴えるという点では本書を一歩リードしている。
しかし、本書を「唯一まともな社会保障本」たらしめているのは、「ならどうするか」という対案にある。一言で言うと、それは賦課方式から積立方式への切り替えである。「大貧困社会」や類書が不十分なのは、賦課方式を捨てていないからだ。同様の主張は木村剛をはじめ過去になくはないし、私自身これまで同様の主張を繰り返してきたが、その具体的な方法と試算までなされている点で、本書は一歩前に進んでいる。
なぜ、賦課方式では駄目なのか。この点に関しては、大竹先生がまとめてくれている。
大竹文雄のブログ: だまされないための年金・医療・介護入門社会保障は世代間の助け合い、という言葉があるが、日本の制度は助け合いになっていない。一方的な負担だからだ。もらう方が、若い世代を十分に助けるのであれば、助け合いになるかもしれないが、現実の日本の制度は、若い世代から1960年以前生まれの世代への所得移転にすぎないのだ。これから高い経済成長が続けば、若い世代の負担はたいしたことがないかもしれない。しかし、過去20年間の日本経済の状況をみた上で、将来の日本の高い経済成長を確信できる人はどの程度いるのだろう。そんな不確実な話で若い世代は納得してくれるだろうか。社会保障による世代間の負担格差は、社会保障制度の大幅な改革がない限り、確定していることなのだ。2005年に生まれた子供たちは約3500万円の借金を最初から背負っているのである。
積立方式の利点は、なんといっても社会保障に対する少子高齢化の影響をゼロにできることである。「その代わりインフレの影響を受ける」という主張が散見されるが、むしろデフレの方が懸念事項になって久しいのはご存知のとおり。本書の価値は、積立方式への切り替えのみが「たった一つの冴えたやり方」と断言したところにある。
しかしそれは、本書の読後感をむしろより苦くしている理由でもある。本書にあるとおり積立方式に切り替えても、世代間不公平はゼロにはならない。年金世代がすでに受け取った分があまりに巨大だからだ。
世代間戦争 - 池田信夫 blog日本の財政は、世界最悪のねずみ講なのだ。
たとえだまされたことがわかっても、すでに支払われた分が回収できないという点においても、現状は史上最大のねずみ講なのだ。
そして、それにさらに追い打ちをかけるのが、改革の難しさだ。右の人口逆ピラミッドを見れば、本書の改革案がいかにまともでも、いやまともであればあるほど通らないという絶望的な気持ちになってくる。この点に関しては本書も「国民の社会保障問題への感心・理解こそが鍵」というのみで、事実上のお手上げ状態である。
「だまされていることは、皆もう知っている。しかしそれがわかったところで何になるというのだ」。そんな無力感は、本書を読むことでむしろ強まるかも知れない。それでも、「あとは実施あるのみ」まで練られた案があるのとないのとでは、ゲームを最初からやるのと最終ステージからやるのとぐらいの差がある。私も正直「ラスボス」の攻略法をまだ思いついていない。が、本書があればすぐにそこからはじめられる。もはや最初からゲームをやっている時間は、ない。本書というセーブポイントからはじめるべきなのである。
Dan the Taxpayer


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