二児の父として、このことは知っているつもりだった。

関連entriesも少なくない。

なのに、いかに知らなかったかを改めて思い知らされた。

かつて親だった人も、すでに親になった人も、これから親になる人も、必読。

難しい本ではないので、高校生以上の未成年も、読んでおくべき。

本書「子どもの貧困」は、日本の子どもの貧困がいかにひどいかを、情ではなく理で説いた渾身の一冊。

はじめに iv
「子どもの貧困」は決して、ごく一部の特殊なケースに限られた現象ではなく、すべての人の身近にある問題である……。本書の目的は、日本の子どもの貧困について、できるだけ客観的なデータを読者に提供することである。データは、政治を動かす上でパワフルなツールである。これらのデータを精査しながら、「日本の子どもについて、社会が許すべきでない生活水準=子どもの貧困」が何であるかを、読者とともに考えていきたい。
目次 - 岩波新書 子どもの貧困より
はじめに
第1章 貧困世帯に育つということ
1 なぜ貧困であることは問題なのか
2 貧困の連鎖
3 貧困世帯で育つということ
4 政策課題としての子どもの貧困
第2章 子どもの貧困を測る
1 子どもの貧困の定義
2 日本の子どもの貧困率は高いのか
3 貧困なのはどのような子どもか
4 日本の子どもの貧困の現状
第3章 だれのための政策か―政府の対策を検証する
1 国際的にお粗末な日本の政策の現状
2 子ども対策のメニュー
3 子どもの貧困率の逆転現象
4 「逆機能」の解消に向けて
第4章 追いつめられる母子世帯の子ども
1 母子世帯の経済状況
2 母子世帯における子どもの育ち
3 母子世帯に対する公的支援―政策は何を行ってきたのか
4 「母子世帯対策」ではなく「子ども対策」を
第5章 学歴社会と子どもの貧困
1 学歴社会のなかで
2 「意識の格差」
3 義務教育再考
4 「最低限保障されるべき教育」の実現のために
第6章 子どもにとっての「必需品」を考える
1 すべての子どもに与えられるべきもの
2 子どもの剥奪状態
3 貧相な貧困観
第7章 「子ども対策」に向けて
1 子どもの幸福を政策課題に
2 子どもの貧困ゼロ社会への11のステップ
3 いくつかの処方箋
4 「少子化対策」ではなく「子ども対策」を
あとがき
主要参考文献

データは、私を動かす上でパワフルなツールである。最も動かされたのが、第三章の3である。

PP. 95-96
図3-4は、先進国における子どもの貧困率を「市場所得」(就労や、金融資産によって得られる所得)と、それから税金と社会保険料を引き、児童手当や年金などの社会保障給付を足した「可処分所得」でみたものである。税制度や社会保障制度を、政府による「所得再分配」と言うので、これらを「再分配前所得/再分配後所得」とすると、よりわかりやすくなるかも知れない。
これをみると、十八カ国中、日本は唯一、再分配後所得の貧困率のほうが、再分配前所得の貧困率より高いことがわかる。つまり、社会保障制度や税制度によって、日本の子どもの貧困率は悪化しているのだ!

な、なんだってー!?

あまりのことに、この図3-4が本当か検索してみたところ、以下のグラフを見つけた。

Economic Survey of Japan 2006: Income inequality, poverty and social spending
37139501fig4_6_E.

....まじである。他国との比較がない代わり、経年変化も載っている。日本はこれまでずっと、政府が子どもから奪ってきたのだ。

404 Blog Not Found:貧乏な社会で子を産むな
はっきり言って、この国は子供の面倒はあまり見ない。これがまだ欧州諸国との比較だけなら、高福祉の代償として高税率があるのだから当然という言い方も出来ようが、一人っ子政策を導入した、いわば建前上は日本より遥かに子供に対して厳しく、社会資本も貧弱ならば親の収入も低い中国と比較してすらそうなのだ。

「面倒をあまり見ない」とは、我ながらずいぶんと甘い認識だった。面倒を見ているのは、国ではなく子どもだったとは。

さらにすごいのが、ひとり親世帯の子どもの貧困率。五割を超え、六割に届く勢いで、OECD加盟国の中ではトルコに続きどうどうの二位である。親が遊んでいるわけでは全くない。就労率は八割を超えており、これはデンマークより高い。「女性の就労率が低い」というのは、母子家庭においては全く事実ではない。この国でシングルペアレントであるというのは、どうやらワーキングプアへの最短距離のようなのだ。

本書には、他に血の滲むようなデータがこれでもかこれでもかと出てくる。正直、ページをめくるのがこれほど鬱になる書物というのは滅多にない。しかし、なぜこうなってしまったかといえば、私が、そしてあなたがそのことから目をそらしてきたからなのだ。

まずは、知って欲しい。

我々自身の、子どもに対する罪の重さを。

Dan the Father of Two

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