わかってないなあ。
どっちも。
太陽光発電の現状に関しては、Wikipediaがむちゃくちゃ詳しい。
一般書では「新・太陽電池を使いこなす」がやはり一番のお勧めなのだけど、初版が1999年で、さすがに手に入りにくくなっているので、まずは上の記事を読んで欲しい。
で、ねらーとはてな村民の多くがしている誤解をまず解く。
「原発作れよ、原発」
私も一技術者として、実は原発大好きだったりする。が、日本において原発を今以上作るべきではないと考えている。以下その理由。
- 原発は「今から出力を二割増にして」が出来ない
電力というのは、使いやすくて貯めにくい。そのくせ使用量は刻一刻と変わる。そのため基本的に「使う時に作る」ことになるのだが、原発の場合、一度動かしたら出力を上げ下げするのが非常に難しい。そのため原発は常に一定出力で運転させつつ、不足分を火力発電所で補っているのが現状だ。
面白いことに、電力使用量は太陽の動きと連動している。昼間が多くて夜が少なく、夏が多くて冬が少ないのだ。年末年始にはなんと東京電力の発電量の九割が原発由来ということすらあった(ただし柏崎刈羽停止前)。原発をこれ以上作っても、夜間や休日には電力が余ってしまうのだ。
太陽光発電は、これをちょうど補完するような出力特性を持っている。「原発か太陽光か」ではなく、「原発と太陽光」というのが望ましい組み合わせだ。
- 原発は今日発注して明日出来るものではない
実際には10年以上の歳月がかかる。それだけあれば、太陽光発電のコストが同等になる可能性は非常に高い。
- 原発は分散して建てられない
原発を建てられる用地は限られている。そのため原子力発電所の多くは、「何号機」という形で複数の原発を同じ発電所の敷地に建ててきた。それゆえに、その土地が持つリスクもそこに集中してしまう。世界最大の原子力発電所である柏崎刈羽が止まったことでこのことは誰の目にも明らかになったはず。
「またハコモノ行政かよ」
確かに。しかし今までのハコモノは「高価格、消費型」で、ハコを作った後は利用はされても、そのハコそのものが何かを生産するということはほとんどなかった。利用者が金を落とすことを期待して作った三セクのリゾートがあちこちで無惨な姿をさらしているのはご存知のとおり。
しかし、こちらは電力という、貨幣のつぎに流通性が高いものを生産するのである。しかも事実上メンテナンスフリー。極端なことを言えば、廃屋の屋根に太陽電池パネルを置くだけでも効用があるのだ。その点が、人が来なければ効用が発生しない、今までのハコモノとは違う。
「でも高いじゃん」
特性だけみるといいことづくめのほぼ唯一にして最大の泣き所がこれ。なのだけど、あと4年もすればグリッドパリティ、すなわち既存の電力会社ともタメをはれるところまで価格が低下すると見られている。
太陽光発電のコスト - Wikipedia太陽光発電のコストの相場は、いまのところ他の電源の数倍とも言われる。電力量あたりのコストでは価格競争力が不足するため、現時点では普及促進に際して助成が必要とされる[3]。ただし用途などによっては現状でも価格競争力を有する。普及に伴い、ほぼ経験曲線効果に従ってコストが低下しており[4]、世界的には2012年頃には系統電力よりも安価になる(グリッドパリティに到達する)と見られている[5][6]。
しかも、すでにタメをはれるほど安価に作っていると主張するベンチャーすら現れている。
First Solar :: Lowering the Cost of Solar Electricity :: Company OverviewFirst Solar has achieved the lowest manufacturing cost per watt in the industry, $1.08/watt for the third quarter of 2008
「太陽光発電そのものはクリーンでも、それを生産するエネルギーと資源のコストが高い」
最大の神話はこれだろう。実のところ、CO2ペイバックタイムもエネルギーペイバックタイムも1年から3年ほどである。
太陽光発電の環境性能 - Wikipedia価格的にペイバックしないから環境的にもペイバックしないという主張が見られるが(武田邦彦など)、価格と環境負荷が常に比例するという論拠に科学的証明は無く、日本および各国での調査結果にも反する。
武田邦彦に関しては、山本弘も「“環境問題のウソ”のウソ」で批判的に検証している。
二十兆円分の太陽電池ってどこにあるの?
こうやって見ると、太陽光発電に張るのははずれようのない賭けに思えるし、私もそちらに賭けたい。が、残念ながら
勝谷誠彦様の華麗なる脳みそ:勝谷総理の日本経済回復策 - livedoor Blog(ブログ)たとえば、と私は夢想する。二兆円の金をバラまくくらいならばいっそ二十兆円を投じて日本国のあらゆる建物の屋根にソーラーパネルをつければどうか。
もうまく行かない。理由はシンプル。二十兆円ならあっても、二十兆円分もの太陽電池を作る能力は今のところ世界にないからだ。
右のグラフを見てみよう。太陽電池の世界の総生産量は、3500MWをやや上回るぐらい。これに現在の平均単価である300円/Wをかけると、1.05兆円となる。二十兆円ばらまくには、2007年の生産能力の20倍も必要なのだ。システムコストと設置コストが太陽電池本体と同じぐらいだとしても10倍。太陽電池は供給が需要に追いついていない、現代では数少ないアイテムなのだ。
だから、出来ることを今やっておくべきだろう。このグラフを見ると、先行していたはずの日本は見事に欧州に抜かれている。この日本の頭打ち状態は、補助金が止まった時期とも重なるが、それ以上に政治が停滞していた時期と重なる。
太陽光発電は、いわば卵から孵ったばかりのヒナである。立派な鳥になるのはもうはっきりしている。日本において壁にぶつかっているのが確かだからこそ、私ももう卵ではないヒナの側に立つ。
Dan the Taxpayer
>私も一技術者として、実は原発大好きだったりする。
本当に技術者ですか?w
考えが浅すぎ。技術者じゃなくて評論家じゃないの?
理由はコメの方々が大半指摘してくれてる。