というわけで、本日は早川書房様のお招きで以下に行ってまいりました。
ノーベル平和賞受賞者ムハマド・ユヌス氏来日記念セミナー アカデミーヒルズ最新著作『貧困ない世界を創る〜ソーシャル・ビジネスと新しい資本主義〜』の邦訳版が刊行されたばかりのユヌス氏に、ソーシャル・ビジネスのコンセプトから実践面、そしてその拡大によって世界を変える道筋までを語っていただきます。
とてつもない人による、とてつもないセミナーでした。
以下、その語録。惰訳にご留意のほどを。
- 早川氏の紹介の中で、銀行家(banker)というのがなくてよかったか。今日日バンカーは嫌われ者もいいところですし、ましてや日曜の午後にあいたいような人種ではありませんから
- 私が銀行家になったのは、事故のたまものです(accidental banker)
- 私は銀行のこと(banking)のことを何も知らなかった。だから出来た
- 知らなかったので、ふつうの銀行(conventional bank)の逆を行った
- ふつうの銀行は金持ち(the rich)に貸し、グラミン銀行は貧乏人(the poor)に貸した
- ふつうの銀行は担保(collateral)を取り、グラミン銀行担保のことは忘れた
- ふつうの銀行は与信(credit record)を気にし、グラミン銀行は気にしなかった
- ふつうの銀行は貸し倒れにあえいでいる。グラミン銀行の貸し倒れ率は0.5%を切っている
- どっちが優秀な借り手だったのか
- 47人に27ドルを貸したのがきっかけ。今では
- 口座数800万
- 職員数28,000
- 貸出額毎月1億ドル、毎年10億ドルほど
- 口座所有者の97%が女性
- 年利20%に関していくつか。まず、金利は4種類ある
- 一般貸出:20%
- 預金金利:8.5-12.5%
- 住宅ローン:8%
- 教育ローン:0%
- 弾:「私も口座を開けますか?」ユヌス「今ネット口座に取り組んでいる」
- 最近NYCでもサービスをはじめた。借りれない人がそこにいるから。彼らは借りれない以前に銀行口座を開かせてもらないのだ
- 日本でもやらないかって?いいね。定額給付金の12,000円で口座を開設してもらおう
- 貧困を生み出したのは貧者ではない。貧困を作り出したのはシステムであり、そしてシステムを作ったのは我々なのだ
- 貧困は人造物である。人が作ったものであれば、人が壊せないわけがない
- 資本主義(capitalism)が悪いんじゃない。資本主義が半分しか完成していないのが問題なのだ
- 資本主義の解釈が狭すぎるのが問題なんだ
- Making money to make money doesn't make sense. Making money to make the world better does make sense.
- [訳:金儲けのために金儲けするのは理屈にあわない。世界をよくするために金儲けするのならあう]
- これまでのビジネス(conventional business)の目的は利益(profit)の最大化。社会ビジネス(social business)の目的は幸福(happiness)の最大化。あるいは苦痛(suffering)の最小化。
- 社会ビジネスの目的(objective)は、具体的でなければならない。「利益」というのは十分具体的なものではない
- 雇用を求めるな。自分を雇用しよう
- 我々には自らを雇用する権利がある
- 政府は何でも作れるが、いったん作ったものを壊せない
- Don't give food or money. Give options
- [訳:食事や金ではなく、選択肢を与えよ]
- Don't seek jobs. Give jobs.
- [訳:職は探すものではない。与えるものだ]
- purpose of charity is to get people out of charity. purpose of welfare is to get people out of welfare.
- [訳:慈善の目的は、人々を慈善から解放すること。福祉の目的は、人々を福祉から解放すること。]
- Human being is bigger, not beggar
- [訳:人類は偉大であって乞食ではない]
- 貧困は博物館行きに
Dan the Audience
また、いままでお金などが介在しなかった農家同士の隣近所の付き合いに集団責任の融資によりお金が入り込んだことで、ギスギスしたものになってしまったり、返済集団の中で能力のない人に対するいらだちなども生まれてしまっているそうです。
また、ビジネスモデルに関しても集団でみやげ物みたいなバッグを作ったりとかこじんまりしたものが多くて、地下資源開発みたいな、ドラスティックにその国の貧困を解決するような事業は結局一部の権力者に握られたまま、みたいな現状は容易に変わりそうはなさそうです。
それでも「貧困層になんとか返せて銀行も利益を得るだけの金利で融資し、彼らに現金をもたらす」という悪徳高利貸しよりははるかにマシなコンセプトの有効性は立派だとは思うのですが・・・・・
評価はしつつもあまりこれで世界が変革できるような幻想を持つべきではないし、ユヌス氏はカリスマ性もあるだけにちょっとの批判と警戒も必要であろうと思う今日このごろです。