文藝春秋田中様より献本御礼。
実は発売前に献本いただいたのだけど、書評が遅くなったのは「不透明な時代を見抜く「統計思考力」」を読んだ後に読んでほしい一冊だったから。というわけでお待たせしました。
"Don't panic, use data"の効用を一般的に説いたのが「統計思考力」なら、それを「食糧」に適用したのが本書。知的空腹感を満たすと同時に、情的不安を抑えるという二つの効果抜群の一冊だ。
本書「「食糧危機」をあおってはいけない」は、我々の経済活動のうち、もっとも基本的かつ切実で、それ故に「あおられやすい」食糧に関する疑問一つ一つを、データを駆使して丁寧に解き、説いた一冊。
目次 - 文春のサイトもAmazonもしょぼいので、大幅増補
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項レベルまで目次を引用したのは、それが本書が「木を見て森も見ている」ことの一番の傍証だから。そして「木を見て森も見る」ことこそ、まさに専門家の面目躍如なのだ。データさえあれば我々素人でも森を見れることを教えてくれたのが「統計思考力」であり、そして放っていても我々は木を見てしまうものだが、両方に目を配るだけの手間ひまともなると、専門家が必要となる。
で、目次を見ての通り、手前味噌ながら森に関しては本blogの主張とほぼ一致している。
しかし、木々に関しては、私にとっても目から鱗な話が満載だった。特に肉に関する言及は、森しか見る余裕がない素人には提示できない視点だろう。メインディッシュも美味だったが、つきだしとかデザートとかといった脇役が素晴らしかった。
で、温暖化と食糧供給の関係なのだが、本書は決して
おごちゃんの雑文 ? Blog Archive ? 論理的思考が出来ない経済学者は単なる妄言吐きどうせ大勢つっこんでるんだろうけど。
「食糧危機」をあおってはいけない 言いたい趣旨には賛同するのがけど、地球が温暖化すれば、食糧生産は増える。この一言で全てがどっちらけだ。自ら妄言吐きだと白状したようなものだから。
と安易に結論づけているわけではない。特に降雨の予測がまだきちんとできないことを紹介しているのは科学者ならではの誠実である。それらをふまえた上での「地球温暖化は食糧生産アップの要因」なのだが、どうして著者がそう結論づけたのかは、ぜひ本書で確認してほしい。
余談だが、書名をAs-Isで blog entry のタイトルにするのは、木を森と誤認しやすいので避けた方がよさそうだ。
もちろん、私は本書の意見に全面的に賛成しているわけではない。食糧危機を今まで克服してきた人類の叡智に対する楽観には私はそれほど違和感を感じないのだが、その分配に関する人類の愚行を過小評価しているように感じた。しかしそれとて、あおるレベルにはないという著者の主張には全面的に賛同する。「まあもちつけ」である。もちは余るほどあるのだから。
これだけ具沢山で、1150円はお買い得にもほどがある。ただあまりに具が多いので、「統計思考力」を先に読んだ方がおいしく残さず食べられるだろう。ごちそうさまでした。
Dan the Well-Fed
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