教科書に使いたい良本。だけにオビの使い方がもったいない。

「「国家の品格」に異議アリ!」とはあまりに品格がなさすぎる。

本書は、「情緒の夫」としての論理の大切さを、情を損なわずに説いた一冊。著者による「なぜ勉強するのか?」の言葉を借りれば、理解力と想像力と表現力に三つを兼ね備えた良著である。

はじめに
第一章 論理が日本をよくする
対立概念で世界を見る
母性に振り切れた針を戻す
なぜ勉強するのか?
学校教育は子どもの能力を高めるか
第二章 論理的とはどういうことか
大局観を持つ
データにのっとって議論する
言葉で伝える
筋道を立て、勇気をもって表現する
企業と資本主義の論理
国民的議論を避けてはいけない
論理はどこからきたか
第三章 なぜ論理が大切なのか
藤原正彦氏に異論を唱える
世界に共通する論理を求める
第四章 情緒的すぎる国
秋葉原無差別殺傷事件はなぜ起きたか
教員免許更新より免許廃止を
高速道路バイク二人乗りは本当に「危険」なのか
ライフジャケットで命は守られるか
優しいサービスがムダを生む
根拠なき懐古主義に陥ってはいけない
第五章 情緒的民族の失敗
日本人は戦争に長けていたか
日露戦争が生んだ過信
太平洋戦争に至る非論理
目的の不徹底と根拠なき楽観〈ミッドウェイ海戦〉
己へのうぬぼれ、敵への過小評価〈ガダルカナル作戦〉
無謀がまかり通る不合理〈インパール作戦〉
アウシュビッツを上回る効率的大量殺人
「外道」だった作戦〈特攻〉
想像力のなさが生んだ判断ミス〈終戦工作〉
現代にまで続く教育のゆがみ
人は過去から何を学ぶべきか
おわりに

その中で、確かに「国家の品格」批判も登場する。これ、今まで目にした批判の中では最も良いもので、論理的でありながら情の乗った、批判かくあるべしというものではあるが、しかし本書の狙いが一段とスケールが大きい以上、あのオビは本書を卑小化してしまうのではなかろうか。

論理は情緒と対立するものではあるが、しかしトレードオフの関係にあるのでは決してない。むしろ私は情の強い人ほど論を発達させるという持論すら持っている。優れた論理の使い手は、単に理路整然としているのではなく、情を乗せるのが実にうまい。著者が日本のみならず世界に通じる作品を生み出してきたのも、「理にかなった情」あってのことだというのが本書を一読すれば明らかとなる。

「理にかなった情」ということで思い出されるのが、「シンドラーのリスト」だ。シンドラーの行動そのものは、情に突き動かされたものであることは見間違いようがない。「ユダヤ人を助けた方が得」という、理の帰結ではああはならない。しかし実際にユダヤ人を救うにあたって、シンドラーはあくまで論理的なのだ。

「この小さな手が、45mm砲弾の薬莢を磨くのに必要なのです」。リストの長さを少女一命分延ばしたのは、情ではなく理の力だったのだ。

本書が訴えている論理とは、そういう論理だ。

情緒なき論理は犯罪であり、論理なき情緒は寝言である。

Dan the Logically Emotional