集英社新書編集部より献本御礼。
面白い。ハゲ(もちろん「毛がない人」ではなく「毛がなくなる」という現象)とは今のところ縁がない私にもこれだけ面白かったのだから、ハゲでお悩みの人にはもう髪、ではなくネ申のような一冊かも知れない。
本書「専門医が語る 毛髪科学最前線」は、タイトルどおり、毛髪の専門医による、脱毛と育毛の科学。
目次- はじめに
- 第一章 男はなぜハゲるのか
- 第二章 薬剤による男性型脱毛症の治療戦略
- 第三章 自毛移植による男性型脱毛症治療・最新型カツラ・近未来治療
- 第四章 円形脱毛症のメカニズムとさまざまな治療法
- 第五章 その他の脱毛症
- 第六章 女性の脱毛症は男性と「何」が「どう」違う?
- 第七章 髪についての誤解や思い込みを検証する
- おわりに
タイトルを見ても目次を見ても、至ってまじめな一冊であるが、ハゲという「疾患」には、なぜか笑いが伴う。動物たちを見回せば、てっぺんだけ毛が生えていることの方がよっぽど可笑しいのに、生えていない人を笑ってしまうというのはよく考えてみれば可笑しいの二乗だ。それがハゲを、物理的に意味が薄いのに心理的に意味が濃い現象としている。
しかしどれほど理屈をこねようが、ハゲを可笑しく思ってしまうのは仕方がないことなのかも知れない。これを見て笑わずにいられる人は、(ハゲた人を含めて!)そうはいないだろう。
それ故に、人類、特に男は昔からハゲをなんとかしようとしてきた。カエザルの月桂冠から小倉智明のズラまで、今までの主な対策は「義毛」が手段であったが、医学はついに「本物の毛」を生やさせるところまで来たのだ。
本書のオビには、著者自身の頭頂が登場する。これだけでも買いだろう。確かにこれは百聞は一見にしかずならぬ、万毛は一見にしかずだ。
[業務連絡:5月15日現在、Amazonに書影が上がっていない。上げるときにはオビをお忘れなく]
さらに驚きなのは、これが塗り薬ではなく飲み薬による成果だということ。その薬の名は、フィナステリド。商品名プロペシア。日本では2005年12月に認可されたばかりの新しい薬である。さすがに完全にはげ上がった部分を完全復活させるほどの効用はないようだが、いわゆるバーコードハゲのように、はげきっていない薄くなった頭であれば驚きの効果を発揮する。
てっぺんが完全にはげ上がった場合でも、あきらめるのはまだ早い。はげにくい部分からの毛を移植する方法だって確立されているのだ。毛包単位移植術という。こちらの効果は、写真で見る限りフィナステリド以上に劇的かも知れない。
ただし、費用の方もちょっと高い。100万から150万。しかし毛包を3000個も手で移植していくという、田植えならぬ毛植えの費用としてみればこれはむしろ安いのではないか。一ユニットに換算したら3000円。これだって立派な外科手術であるのに関わらずである。
私自身は、ハゲに関わらず、加齢に伴う肉体変化はかなり好きである。自分がハゲ体質でないことがちょっと残念なぐらいに。私の大学時代のルームメイトの一人は、20代にしてPatric Stewart(Start Trek TNG の Capt. Picard)ばりの見事なハゲで、かつ背中にまで体毛がびっしり生えていてほれぼれするぐらいだった。そんな私も白髪の進行は早い方のようで、髭などもう真っ白だ。ゴリラのようで結構気に入っている。
それでも、それが気になるという人々の気持ちは理解できるし(理解できないのはなぜそういう気持ちになるか。これはそう簡単にはわからないだろう)、そして脱毛が加齢に伴うものばかりでないということも確かである。たとえば円形脱毛症がどれほど誤解されているかは、本書を読めばすぐわかる。
毛がある人も毛がない人も、一読しておくべき一冊である。
Dan the Hairy Blogger

このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。