培風館北村様より献本御礼。

タイトルどおり、スーパーサイエンティストである著者が高校生に向けて科学を語った書であるが、中学生でも読め、そしてサイエンティストを含めた大人でも得るところの大きい一般書。むしろ科学が苦手な人の方が楽しめるかもしれない。

本書「スーパーサイエンスハイスクール講義」は、第一級の生物学者であると同時に、第一級の生物学者を数多く育ててきた著者が、自らの専門である生物学に留まらず、科学全般の魅力を高校生に対して語った一冊。

目次 スーパーサイエンスハイスクール講義より
PROLOGUE/流れに枕す
1 自然科学とは?
1−1 自然科学とは?
1−2 自然科学の目的とは?
1−3 自然科学の手法は?
1−4 自然科学者とは?
1−5 自然科学者:私の定義
2 自然科学者列伝―温故知新―
2−1 序
2−2 数学者
2−3 物理学者
2−4 化学者
2−5 生物学者
2−6 自然科学者の素養
3 結論―中心原理―
3−1 序
3−2 まず自分で考える!
3−3 次に他者と議論をする!
3−4 いつも師がいる!
3−5 それ以外のよい方法はあるか?
3−6 ない!
3−7 どうして?
3−8 セントラルドグマ・中心原理
3−9 和:日本人の特性を生かす
4 自然科学者への助走
4−1 自然科学者としての生涯
4−2 高校生のときにすべきこと1
4−3 高校生のときにすべきこと2
4−4 高校生にすすめたい本1
4−5 高校生にすすめたい本2
4−6 新しい力をつける!
4−7 高校生から自然科学者へ
4−8 第一級の科学者を育てる
百代の過客/EPILOGUE/あとがき/謝辞/人物解説/参考文献/図出典/付録/著者紹介

個人的にうれしいのは、なにより先に数学を取り上げていること。著者が生物学者であることを考慮するとこれは驚きですらある。生物学者は数学が苦手な人がなるケースが多いという私の偏見がその理由である。この偏見、著者も共有しているようで、こう述べている。

P. 137
生物学では知識の量で論理を補っているようなところが多く、少ない基本原理に基づいて絶えず演繹しているのが生物学であって、ある意味では誰でもできる学問なのではないかといってもよい。言い過ぎであったらお許し願いたい。

しかし、数学は全ての学の母にして共通言語。やはり避けては通れない。そこをきちんと通っているだけでも本書は類書より頭一つ出ている。「リーマン予想」という言葉にお目にかかれるのは実に喜ばしい。

その一方で残念だったのが、地学の欠如。著者ほど広く深く物事を学んだ人でも、高校科学四種目全制覇は無理だったのだろうか。確かに四種目のうち選考者が一番少ないのだが、それだけにブルーオーシャンでもある。私が高校生に「科学者になりたいのだけど、どの科学がいいか迷っている」と言われたら真っ先に勧める。本書の地学不足を補う書としては、「地学のツボ」を勧めさせていただく。こちらは筑摩書房松本様より献本いただいたもの。

ちなみに私は、大検で四種目全制覇しているが、実はこれ、普通に高校でやると無理なのだそうだ。三種目までしか選べないのだとか。もしそれが出来る高校があるというのであれば、ぜひご一報を。

本書の指摘で以外だったのは、日本の科学者たちが苦手なのが競争ではなく協調だということ。個々人のレベルが遜色ないことはあまりに証拠が上がっている。にも関わらず「いまいちぱっとしない」のは、組織力の弱さ。私はなぜか科学者たちの愚痴もよく聞くのだが、その中の最たるものは、雑務の多さ。その雑務も、科学者でなくてもやらなければならない税務のようなものから、特定の研究に必要だけれども、研究の要ではないものの準備--たとえば酵素の入手--など多岐にわたるが、他の業種なら「人任せ」に出来るものを「自前」で用意しなければならないというのでは、たしかに差がついてしまうだろう。

だから本書に価値がある。科学者になってもならなくても、科学との付き合いは一生続くのが現代である。科学者だけに、科学の発展をまかせてはおけないのだし、科学者の功績を科学者たちが独り占めすることもまた出来ないのだから。

Dan the Fan of Science