海と月社松井様より献本御礼。
すっかり書評が遅くなってしまった。おそらく全米一有名で、ほぼ確実に全米一面白い起業ブロガーの一冊だというのに。
著者のとおりに、おそらく現時点において最も使えて、そして確実に最も面白い起業マニュアルである。
本書「完全網羅 起業成功マニュアル」の原題は、"The Art of the Start"。「直訳」すると「起業法」になるだろう。ちなみに"The Art of War"が「孫氏の兵法」の英訳。もちろん著者はそのことを強く意識している。"War"に対して"the Start"と定冠詞が入っているのは、それが単なる「はじまり」ではなく「起業」であることを表している。
目次 - Amazonより今では How to Change the World の中の人して知られる著者だが、古株のMacファンはむしろ"The Macintosh Way"を書いた人として知られているかも知れない。私は彼が MacWorld Expo に来たときにちゃっかりサインをいただいたことがある。
そしてその頃から、彼の文体は変わっていない。
その大胆で慎重なユーモア感覚は。
慎重という面は、本blogでも紹介したことがある。「404 Blog Not Found:惰訳 - 起業における神話トップ10」の元記事は著者のblogである。著者は現実から目を背けない。背けない以上、起業の神はディテールに宿るという現実に正面から取り組み、結果本書には実にこまごまとした実例が山のように登場する。よくぞ「アントレプレナーシップ」のような大著にならなかったものだ。
MBAのクラスで起業を習うのであれば、その教科書はこの「アントレプレナーシップ」となるだろう。こちらも献本御礼。しかし、起業にMBAはいらない。むしろ邪魔ですらある。MBAが役立つのは、続業からであって起業ではないのだから。
それでは、起業に最も必要なのは何だろう。
Fun、である。
この一点において、本書はおよそぶれることがない。起業というのはその目的のみならず、過程においても実に多くのFunを必要とする。資金などなくても起業はできるが、Funがなくては無理である。逆にFunを続けられるのであれば、資金は後からついてくる。
およそ優れた本というのは、その主張がスタイルと一致しているものであるが、本書もまた例外ではない。本書は役に立つ以上に面白いのである。もちろん「興味深い」(interesting)という意味の面白さではなく、「笑いが絶えない」(fun)という意味の面白さである。一カ所だけ紹介しよう。
P. 157最後にもうひとつ、やはり無視するべき特徴がある。業務遂行上の弱みである。スティーブ・ジョブスの強みの一つが思いやりだという人はいまい。ビル・ゲイツの強みが美的デザインだという人もいないだろう。
起業にSWOTはいらない。SOTがあればいい。いや、Tすらいらないかも。SOれでいいのだ。
起業を志す人も志さない人も、まずは本書で多いに笑って欲しい。そしてもしあなたが笑い以上の何かを欲するのであれば、今度は笑わずにもう一度真剣に本書を読み返して欲しい。それでも抑えきれぬfunへの渇望が残っているのであれば、迷わずに起業しよう。
起業とは、起社でも起債でもましてや起忙でもなく、読んで時のごとく、業(karma)を起こす(start)ことなのだから。
Dan the Starter


後者ですが、薦められるがママに購入。昨夜読了しました。