角川oneテーマ21より献本御礼。

これは、やばい。

質問というものの正体を、ここまで明かしてしまったとは。

質問とは疑問符のことでしかないという人、必読である。さもなければいつまでもなぜ自分がやられっぱなしなのかが「?」のままだろう。

本書「人を動かす質問力」は、弁護士という質問のプロが、質問とは一体なんなのか、そしどんな時にどんな質問をすると何が起きるのかを、白日の下に晒した一冊。

目次 - Amazonより
はじめに
なぜ、いま質問力が求められるのか?/なぜ、私は質問力に目覚めたのか/人生を成功に導く、質問の6つの力
第1章 知りたい情報を楽々獲得する6つのテクニック
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョン/全てを聞き出す6つのベーシック・クエスチョンとは?/答えやすい質問をする/質問を始める前にチェックすべき4つのポイント/シャーロック・ホームズの推理質問法とは?/ダメな質問の7つのパターン
第2章 聞くだけで人に好かれる質問力
好きな人の質問には何でも答えてしまう?/人に好かれるための6つの法則/人に好かれる最強の方法は犬を真似ること/会話が盛り上がるポイントを見逃すな /「質問ブーメラン」で相手の関心を見抜く/質問する態度は言葉以上に影響を与える/クエスチョン&サイレント
第3章 その気にさせる質問力
人をその気にさせる2大原則/まずは感情を動かし、その後理性に訴えかける/人を動かす質問のシナリオを作る/説得したければ、質問を!/意見を押しつけず、相手が動きたくなるような質問をする/質問する側にまわって会話の主導権を取る/「仮にクエスチョン」で本音を引き出す/脅し文句も質問で/反論にはポジティブに応酬する/決断を迫る質問とは/誤導質問~知らない間に肯定させる禁断の技術/私もアダムに逆らえなかった希少価値の法則/必ず成果を得たい時の、質問三段構え/「小さなイエス」で相手を縛る、質問金縛りの術/「皆やっているよ」の強力なパワー
第4章 人を育てる質問力
部下を育てられない上司とは?/いい上司は、食べ物を与えず、食べ物を得る方法を与える/質問するだけで、子供が急に勉強するようになる/相手の行動を抵抗なく変えてしまう魔法の質問/上司の2つの責任とjは?/ポジティブな質問に言い換える/核心をつく質問で、自分を取り戻させる~母親の心に劇的に浸透した、看護師の質問
第5章 議論を制する質問力
人をその気にさせるのに議論をする必要があるか/ソクラテスと弁護士はなぜ議論に負けないのか/質問で、相手の価値観をこっそり変える/「そもそも流議論術」/妻に携帯を見せろと言われたらどうするか~議論における立証責任
第6章 自分を変える質問力
金持ち投資家と破産寸前の男~会社の同期2人は何が違ったのか/人生で成功するための3つのルール/7つのフィードバッククエスチョン/問題解決のための 8つのクエスチョン/短所を長所に変える逆転クエスチョン/視点を変える質問でよりよい解決策を/今すぐ自分を変えるための質問ワーク

質問(question)は、問い合わせ(query)とは似て非なるものだ。

もちろん問い合わせのためになされる質問もあるが、それは質問の理由としてはマイノリティに過ぎない。

それでは質問とはなにか。

時には祝賀(congratulation)であり(第一章)、魅力(attraction)であり(第二章)、誘因(motivation)であり(第三章)、育成(cultivation)であり(第四章)、論破(refutation)であり(第五章)、そして進化(evolution)でもある。「素の」質問(question)は、「素朴な疑問」ぐらいにしか実は登場しないのだ。

本書のキモは、質問とは答えを得るためのものではなく、回答者を縛る(spellbound)するものであると喝破したことにある。回答者は、その質問に素直に答えるにしろはぐらかすにしろ、何もしないことをも含めて何らかの反応(response)を強いられる。質問者となることは、それだけで回答者より優位に立てるのだ。

本書には、そういった質問の皮をかぶった言葉の武器が、これでもかというぐらい詰まっている。「質問に素直に答えてしまう」タイプの人は、正直ムカつくのではないかというほど。しかしこういう武器に対抗する唯一の手段もまた質問力であることを読者は学ばざるを得ない。学ばなければ一方的に質問という武器にのされるだけだ。是非本書で学んで欲しい。

一つだけ本書にも乗っていないティップを。きちんと出来れば本書のあらゆる質問攻撃をはねのけられる。

それは何かというと、質問を受けたときには、必ず「この人はなぜこの質問をしたのか」というメタ質問を自問すること。それだけで、質問という迷彩ははげ落ち、相手が突き出して来た武器の正体が見える。

ところで、日本では学び場でも職場でも、生徒や社員は回答ばかりを強いられている印象を私は強くもっている。本書を読めばわかるとおり、回答者というのは立場的に不利であり、それだけ難しい。

もっと生徒や社員に、質問させる側にまわらせたらどうか。その方が質問力の大前提となる質問欲も上がり、質問欲が上がれば回答欲も自ずと上がるのだから。

Dan the Inquisitor