翔泳社外山様より献本御礼。
今や何百冊とある「左脳vs右脳本」の中では、最も面白く使えそうな一冊。
しかし同時に強く思ったのは、「これでは足りない」ということ。
それでも、足りない以前に「気がついていない」人が多すぎる。まずは気づいて欲しい。コカコーラーと砂糖水の違いがなんなのか。
本書「マーケティング脳vsマネジメント脳」は、「製品を育てたい」マーケティングと、「会社を育てたい」マネージメントが、なぜ互いを理解できないのかということを、これでもかというぐらい徹底的に考察した一冊。目次を見るだけで、それは明らかだ。
目次 - マーケティング脳 vs マネジメント脳:SEshop.com/商品詳細
|
|
目次からも明らかなように、本書はマーケティングよりの一冊であり、そうなっているのには理由がある。
マーケティングの方が、「難しい」からだ。何が難しいかというと、「正しさを説明するのが」難しいのだ。マネジメントは言語的で論理的。それゆえ「どうすればよいか」を言葉で書くことが出来るし、「正しいマネジメント」は、業種が変わってもそのまま適用可能だ。極論してしまえば、製品がなくてもマネジメントは成り立つ。
それに対して、直感的で感情的なマーケティングは、現物が目の前にないと「正しさ」がわからない。マネジメントはもとより、マーケティングの人にすらそれは事実だ。マーケティングの世界では、ブツがあってナンボであり、それゆえ業種の壁を乗り越えるのは難しい。
これほど違う両者であるのに、両者を混同するのは実に簡単なのである。マーケティングの現人神クラスのJobsですらそうなのだ。さもなければ砂糖水を売っていたScullyをApple Computer(当時)に入れた挙げ句、追い出されるような羽目にはならなかったはずだ。
そしてこのことは、本書自体にも言える。
本書の分析で一番うならされるのは、コカコーラやRed Bullsといった清涼飲料水に関するものである。これらはローテクで、作る気になれば誰でも作れるものである。その中で唯一簡単に作れないものがブランドであり、そしてこのブランドはマネジメント脳には作れないという本書の主張には異論を挟む余地がなさそうに思える。
しかし、iPhoneやGoogleとなると、どうだろう。
これらは、マーケティング脳だけでは絶対に作れない。こういった商品に関する本書の分析に、私は違和感を感じまくらずにはいられなかった。例えば本書はAmazonが書籍以外のものを売り始めたことに対し「悪い兆候」といい切っている。Amazonが売っているのが書籍であれば、これは正しい分析であるが、違うのである。Amazonが本当に売っているのは、データベースと在庫システムなのである。そのことにいち早く気づいた Tim O'reilly はさすがだ。
AppleがiPhoneもiPodもMacも売っていることに対しても著者たちは同様の感想を述べているが、その一方でiTunes Storeにはほとんど言及していないのは実に痛い見落としである。Appleが売っているのは"iLife"(同名のソフトウェアスイートではなく概念)であり、iPhoneもiPodもMacも「部品」にすぎない。こういう「確かにそこにあるけれども、手に取ってみるのは難しい」製品を、著者たちは見事に見落としている。デジタルネイティヴたちはこういう「もの」に実感を感じているはずで、著者たちの「マーケティング脳」はその意味でちょっと古すぎるのではないか。
しかしその点を差し引いても、本書の知見は得るところが多い。特に日本の場合、マーケティング脳がもう少しあればもっと成功したのにというものが目白押しで、むしろ原著の米国よりも有用性は高いのではないか。
Dan the Right-Brainer
申し訳ないが、edryさんのコメント意味不明です。
danさんの書評は別にわかり辛くは無いけど。
本読んでみないとわからないが、とりあえずこの書評読んだ上でのコメントとして、「マーケティング脳」VS「マネージメント脳」って対立が何か違う気がする。「マーケティング脳」VS「エンジニア脳」ならわかる。「マネージメント脳」ってその2つに両足架けてる、違うレイヤーの「脳」だと思うんだけど。。。
とりあえず本は読んでみます。