こちらもまたオライリー矢野様より定期便にて献本御礼。

素晴らしい。脱帽。

理論に関しても、実践に関しても、オープンソースに関してこれ以上書かれているものは現時点で存在しない。オープンソースという言葉から利益を得ている人は必読。

本書を買わなくてもいいから。

そう。本書は原著のみならず、訳文も全文が CreativeCommons Attribution-ShareAlike (3.0) で公開されているのだ。

本書「オープンソースソフトウェアの育て方」には、「オープンソースソフトウェアとはなにか」という「オープンソース論」も、「オープンソースソフトウェアをいかに始め、いかに育てるべきか」という「ハウツーオープンソース」も余すところなく載っている。それもそのはず、著者はCVSとSVNという、オープンソースを育てるのになくてはならない「哺乳瓶」を、それ自体オープンソースで育て上げた人なのだ。

目次 - オープンソースソフトウェアの育て方より
日本語版に寄せて
序文
この本を書いた理由は?
どんな人たちに読んでほしい?
情報源
謝辞
免責
1. 導入
歴史
「フリー」と「オープンソース」の違い
現状
2. さあ始めましょう
手持ちのもので始めよう
ライセンスの選択と適用
うまく引っ張っていく
広報
3. 技術的な問題
プロジェクトに必要なもの
メーリングリスト
バージョン管理
バグ追跡システム
IRC / リアルタイムに行なわれるチャットシステム
RSS フィード
Wiki
ウェブサイト
4. プロジェクトの政治構造と社会構造
優しい独裁者
合意に基づく民主主義
全てを記録しておく
5. カネに関する問題
開発者を長期に渡って雇用する
企業の人間としてではなく、個人として振る舞う
動機を隠し立てしない
カネで愛は買えない
契約する
プログラミング以外の活動を支援する
マーケティング
6. コミュニケーション
書いたことがすべて
陥りがちな罠
扱いにくい人たち
巨大化への対応
バグ追跡システムでは議論しない
宣伝・広報
7. パッケージの作成、リリース、日々の開発
リリースに番号を付ける
リリースブランチ
リリースを安定させるプロセス
パッケージング
テストとリリース
リリース候補
リリースを告知する
複数のリリースラインを管理する
リリースと日々の開発
8. ボランティアの管理
ボランティアを最大限に活用する
技術的な作業だけでなく管理作業もみんなで
パッチマネージャー
引き継ぎ
コミッター
クレジット
プロジェクトの分裂
9. ライセンス、著作権、特許
使用する用語
ライセンスの特徴
GPL とライセンスの互換性
ライセンスを選ぶ
著作権の保有と譲渡
デュアルライセンスの仕組み
特許
さらなる情報源
A. フリーなバージョン管理システム
B. フリーなバグ追跡システム
C. なんで自転車置場の色まで気にしなきゃならないの?
D. バグ報告のやり方を説明した例
E. 訳者あとがき
F. 著作権表示

おかげで、目次もただの文字ではなくリンクとして掲載することができた。本書は私が読んだ中で「最も読むべき」本とも「最も面白い本」とも言い切るのは苦しいが、「最も文句のつけどころがない本」であることを認めざるを得ない。

脱帽。

見てのとおり、本書は買わなくても読むことができる。しかし本書はパンフレットではない。300ページを超える大著であり、具体的なソフトウェア名が列挙された技術書でもある。Webページだけで全文を読むのはかなり苦しい。この分量だと紙で読むのが最もありがたい。そして理念書でもあるので、必要なところだけ読むのではなく通読しておきたい。Webで挫折した人は、迷わず紙を手に入れるべきだろう。

その意味で、もう少しコンパクトな版型にして、もうちょっとだけ値段を抑えて欲しかった。A5ないし四六版で2,000円だったら完璧だったのだが。

それでも本書が出てしまった以上、そしてWebに公開されている以上、本書を読まずしてオープンソースを語るのは、約款を読まずして保険に契約するようなものになったと言ってよいだろう。今後、「読まなかった」は言い訳にできない。

というわけで、必読、必読、必読。紙でもWebでもいいから。

Dan the Open Source Programmer