まさか長女の宿題を手伝っているうちに夏の大三角という言葉に出会うとはねえ。

そんなわけで夏の大三角の一角、Denebを調べたらあまりに面白かったので。

残りの二角であるあまりに有名な織姫(Vega; α Lyrae)と彦星(Altair; α Aquilae)に比べて、デネブはあまりにわかっていることが少ない。で、なぜ少ないかといえば、遠すぎるから。遠すぎて、そもそも距離がきちんとわかっていなかったぐらい。

デネブ - Wikipedia
あまりに遠いために年周視差が非常に小さく、これまで距離は1500-3200光年と推定されてきた
デネブとは (デネブとは) - ニコニコ大百科
しかし距離は、アルタイル16光年、ベガ25光年に対し、デネブは3200光年(一部では1600光年)と圧倒的に遠い位置にあるため、実際はとんでもなく明るい。というか、肉眼で見える恒星の中では最も遠い部類に入る。
deneb - Wolfram|Alpha
distance from Earth | 3226 ly

「1500光年から3200光年ってどんだけぇ〜」と娘に詰問されて、星の距離をどうやって測るかを滔々と講義する羽目になったのですが、確かにこの1000光年オーダーの距離って、最も基本的な方法である視差法では遠すぎるし、銀河ではなく星一つなのでセファイドを使うわけにも行かず、ましてやハッブル定数から逆算するのもままならないという、ちょっとした「測距の穴」になっているようです。こういう星までの距離は今までは絶対等級から逆算していたのですが、それだとこれだけ誤差が出る、と。

ところが、ヒッパルコスの観測で、デネブまでの距離は1,340光年以上1,840光年以下に修正されたようです。これでも誤差が三割、500光年もあるのですが以前の倍以上よりずいぶんと改善されています。英語版のWikipediaMSN Encartaにもすでに反映されていたので、日本語版Wikipediaにもそれを反映したのですが、こんな都内でもくっきり見えるような星のことでもこんなにわかっていないということに改めて驚きです。

ところでこのデネブの推定年齢は200万歳(これも再計算が必要?推定質量も15Msun-30Msunとばらつきがあるし)。大きな星ほど寿命が短いのでこうなるわけですが、アウストラロピテクスの時代にはまだなかったわけです。そう考えると改めて驚きです。我々のご先祖の時代にはまだない星を我々が見ているということに。

Dan the Stargazer