ディスカヴァーより緊急献本御礼。

史上最も人間離れして見えた人の、人生のアルバム。

ファンでなくとも、打ちのめされる。

そしてファンであれば、少しだけ癒される。

本書「LIFE MICHAEL 1958-2009 ライフ誌特別編集 マイケル・ジャクソン追悼」は、Michael Jackson の人生録。わずか80ページだが、なんというページの重さだろう。これを超える伝記はおそらくありえないのではないか。

Michael Jackson は、「超人」だった。やることなすこと、人がやったとは思えない。そして後には自分の姿すら、大人でも子どもでもない、サイボーグとしか言えないものとなっていった。

この様子を、江口寿史は「眠る」でこう揶揄していた。

でもあいつだけは眠らない。だってロボットだもん

実際、映画 Moonwalkerの中で、マイケルは本当に巨大ロボットになっていた。

それが、我々の知る超人マイケルだ。

しかし、その中味は我々と変わらない、かよわい人間だった。自らも子どもみたいで、子ども好きで、それなのに幼児虐待の嫌疑をかけられて、抗鬱剤が死の間際まで手放せなくなった、人間だったのだ。

モーツァルトからエルヴィスまで、神に愛された人というのはその愛の重みに押しつぶされるかのように早逝する。マイケルはそのエルヴィスの娘を最初の妻とし、そしてエルヴィスのようにこの世を去った。

P. 20
「そのうち、マイケルは黙り込みました。わたしをじっと見つめ、それから静かに、断固とした口調でこう言ったのです。『僕もエルヴィすのような結末を迎える気がするんだ。彼とまったく同じ死に方をね』」

その次のページの写真が、すごい。

この一枚だけが、No Michealで、これ以外にはありえない墓碑になっている。

この両ページを目にするためだけにも、本書を入手する価値がある。

第三者的に見てしまえば、彼の人生はその終わりまで完璧だった。アマデウスの娘を娶り、そしてアマデウスのように去る。Moonwalker にしかありえない完璧さだ。

そう考えると、彼はむしろ長生きしたことになるのかも知れない。元岳父の寿命は、彼より8年も短かった。

ディスカヴァー社長室blog: マイケル、アマゾン順位上昇の秘密 ●干場
読み応え、いや、聴き応えあるエントリーとなっている。
【渾身の1冊!】「LIFE MICHAEL 1958-2009」いよいよアマゾンでも予約開始!:マインドマップ的読書感想文
◆私なりに好きな曲を何曲かご紹介。

私はどちらかというと、神「でしかなかった」、Thrillerな80年代前半の彼より、神と人との葛藤が強まった80年代以降のBadな彼の方が好きだ。「メシウマ」ってわけじゃなくて(それ以前になんでそれが「メシウマ」なのか分からない。マイケルにもわからなかっただろう)、虚と実の狭間で苦しむ彼が、しかしそこから逃げずに踏みとどまっている姿が好きなのだ。だから私の All time best は "Leave me alone"だ。彼にかかれば、「泣き言」すらグラミーなのだ。

しかし、生の観客の前で、泣き言は言わない。

Leave Me Alone - Wikipedia, the free encyclopedia
Despite the success of the single, this song never appeared on any of Jackson's world tours.

幻となったワールドツアーでは、どうだったのだろうか。今となっては知る由もない。

Dan the Earthcrawler