早川書房より献本御礼。
邦訳はずいぶんと大風呂敷なタイトルであるが、賄えないほど大きすぎる風呂敷でもないし、確実に元がとれる風呂敷でもある。
しかし、未だ存在していない風呂敷でもある。どうしたらそんな風呂敷が出来上がるのか。本書でぜひ確認していただきたい。
本書「地球全体を幸福にする経済学」の原題は、"Common Wealth: Economics for a Grounded Planet"。前著「貧困の終焉」の続編であると同時に、「最底辺の10億人」に対する反論でもある。
目次- 序文/エドワード・O・ウィルソン
- 第1部 二一世紀のための新しい経済学
- 1 共通のチャレンジ、共通の富
- 2 過密化する地球
- 第2部 環境の持続可能性
- 3 アントロポセン―人類中心時代
- 4 気候変動のグローバルな解決策
- 5 水不足への対策
- 6 すべての生物種が共存できる環境
- 第3部 人口問題
- 7 地球規模の人口動態
- 8 人口転換の完成
- 第4部 すべての人に繁栄を
- 9 経済開発のための戦略
- 10 貧困の罠を終わりにする
- 11 変動する世界における経済的な安全保障
- 第5部 地球規模の問題解決
- 12 外交政策を再考する
- 13 グローバル・ゴールを達成する
- 14 力を合わせて
- 訳者あとがき
- 原注
- 参考文献
500ページ近い大著であるが、原題の"Common Wealth"をおさえながら読めば、あっという魔によめてしまう。著者の提案は簡単だ。「Their problems ではなく、Our problems として扱え」。
その点に関して、米国は正しい選択をした。原著が上梓されたのは2008年3月。次の大統領はまだ決まっていなかった。彼らが選んだのは、かたくなにまで"they"を避け、"we"を掲げる人だった。
序文世界経済が直面する危機の大半は、とどのつまり環境に由来するものである。たとえば、気候変動、環境汚染、水不足、生物種の絶滅、耕地の減少、海洋生物の減少、石油資源の枯渇、いつまでも残る再貧困地域、パンデミックの脅威、国内および国家間を危機に陥れかねないほどの不均衡な資源分担などである。
別のいい方をすれば、一国では絶対に解けない問題ばかりなのである。たとえ超大国といえど。
こういう時代にあって、この国には世界に向かって「これはオレタチの問題だ」と言えるリーダーに書いている。確かに。しかし面白いことに、本書では日本はうまくやっている例としてあげられているのだ。
P. 83さらに、イースタリーが例にあげる援助の失敗は、往々にして誇張され、しかもワシントンだけが標的になっている。日本が東南アジアで果たした重要な海外援助、たとえば東南アジアの基礎的なインフラストラークチャーとテクノロジーを整備して、日本の私企業が投資したくなるような環境を作り出し、一九六〇年代とそれ以後、工業製品の輸出国として成長させた事実は、イースタリーの著作ではほとんど無視されている。
しかし著者ですら見逃しているのは、日本がそれを行うにあたって、「グランド・デザイン」も「リーダー」もいなかったことである。「大東亜共栄圏」という「グランド・デザイン」は見事こけている。
これは、「皆が納得できる目標」さえあれば、各自がそれぞれのやり方と、それぞれの思惑で「それ」に向かって動けば、「求心力」がなくとも Common Wealth は達成できるという証拠になりやしないだろうか。むしろ強力なリーダーと綿密なグランド・デザインこそが、 Common Wealth の創設の邪魔になりはしないか。
いずれにせよ、著者が掲げる Common Wealth という大風呂敷を完成させるのに、米国というのは欠くことが出来ない「大はぎれ」である。米国が "Their Wealth" から "Our Wealth" へと舵を切り直したのは、実によろこばしいニュースではないか。
JFK said (P. 426)われわれはこの10年のうちに、月に到達することのほか、いくつかの目標を選んだ。容易だからではなく、それが困難な挑戦だからである。この目標を達成するには、われわれの最大のエネルギーと能力を結集し、その成果を見せなければならないからである。先延ばしをしないと決めたことだからである。我々が必ずなしとげると決意したことだからである。
それが成し遂げられて40年。世界はますますフラットになり、と同時にますます細切れになった。もしアポロ11号が月面に着陸したのが2001年から2008年だったとしたら、あの"one small step for a man, one giant leap for mankind"という名台詞は、"one small step for an American, one giant leap for America"だったのではないか。
月には、もう一度行くべきだ。今度は、「地球の他の部分をないがしろにしてきた」という「後ろめたさ」なしに。
Dan the Part of Mankind

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