著者より献本御礼。

良本。基本的に

『7つの心』の本田解説その1〜コンセプト | Mr.Honda(ミスターホンダ)のココロ・トーク〜みかみ塾-本田屋〜宇部・周南・下松・光エリア
子ども達のためのビジネス本

であるのだが、「子どもが使えるものは大人にも有用だ」という原則どおり、本書は大人が読んでも役に立つ。

それだけに、このメタ設問がどうしても出てしまう。

そもそも学校や塾で教えていることが、何の役に立つのか、という。

本書「君の成績をぐんぐん伸ばす7つの心のつくり方」は、前述どおり子ども達のためのビジネス本。成績アップという「事業」を、いかに楽に楽しくやっていくかということに関して、かつての生徒としても元塾の講師としても、二児の父親としてもほぼ異論ない。

目次
第一章 1つ目の心「目標」
第二章 2つ目の心「できる!」
第三章 3つ目の心「忍耐」
第四章 4つ目の心「継続」
第五章 5つ目の心「言葉」
第六章 6つ目の心「感謝」
第七章 7つ目の心「信念」

その要諦は、「勉強」の非勉強化、あるいは「楽習化」にある。勉強=勉めて強いることが、どれほど非生産的なのかを、私は本blogでも著作でもさんざん主張してきた。

404 Blog Not Found:勉強したら負けだと思っている
一つ確かな事は、勉強しないと学習できぬ者は、楽しんで学習できる者には逆立ちしてもかなわないということ。およそその道のトップで、いやいやそうなったものなどいない。身につけるべきは、勉強力ではなく楽習力なのだ。
プログラマに必要なたった一つの力 - プログラマになりたいあなたへの手紙:ITpro
「プログラマ35歳説」が都市伝説と言い切れないのは,何とか「勉強」を続けられる限界が,35歳であるのでしょう。言い方を変えれば,「勉強」では35歳までしかもたないということです。その先も続けたければ,楽習力を何とか手に入れるしか ありません。努力して,自分に強いて,なんとかついていくのではなく,楽に,楽しく,学び,習う---。

本書は、これを子どもに説いているところが画期的だ。「勉強」では不惑まで持たないということは、いずれはわかる。0x20 = 32歳を過ぎてもわからない人は、餓死か過労死を覚悟するべきだすら私は思う。ならばその事を、子どものうちから知っておいてもよいではないか。私自身、そのことは「娑婆に出る」前に知っていた。が言語化するには至らなかった。それをやってのけた著者を賞賛せずにはいられない。

その点において一つ残念だったのは、ルビを振っていないこと。ルビさえ振ってあれば私の長女でもそのまま読めたのに。本書のメインターゲットである中高生にはこれでも充分易しいのだが、「子ども達のためのビジネス本」ということであれば、もう少し器にも気遣ってほしかった。

と、ここまではビジネス本としての本書の評価。ここからは成績アップをビジネスとして捉えることそのものについて少し語る。我々が子供たちに課している目標は、本当に適切なのだろうか。

小学五年生の娘の宿題を見ていて改めて感じるのは、問題のくだらなさ。特に社会科はこれが顕著で、未だに「○×工業地域」などという言葉を覚えさせている。娘が成人する頃にゴーストタウン化していないのがどれくらい残っているのだろう。20世紀型の授業をいつまで続ければ気が済むのだろう。

塾というのは、その片棒を担いでいる組織であると同時に、それにささやかな抵抗ができる組織でもある。学校のために教えなければならないことをこちらで変更することは出来ないが、それを出し抜く方法はいくらでもある。私もそういう方法をいくつも作っては生徒達に披露し、生徒達にも親にも感謝はされたが、それを嬉しく思う一方、しかし学校でやっていることそのものがおかしいとまで言えない立場が心苦しかったものだ。

やる気に関する驚きの科学
If Then式の報酬は、このような作業にはとても効果があります。単純なルールと明確な答えがある場合です。報酬というのは視野を狭め、心を集中させるものです。報酬が機能する場合が多いのはそのためです。だからこのような狭い視野で目の前にあるゴールをまっすぐ見ていればよい場合には、うまく機能するのです。しかし本当のロウソクの問題では、そのような見方をしているわけにはいきません。答えが目の前に転がってはいないからです。周りを見回す必要があります。報酬は視野を狭め、私たちの可能性を限定してしまうのです。

学校や塾で教えているのは、すでに狭められた視野に心を集中させるものばかり。だからどうしても「勉強」になってしまう。そこから自由になれるのは卒業した後で、それも束の魔、今度はどれだけ速く刺身にタンポポをのせられるかという仕事が待っていたりもする。

もう少しなんとか出来ないだろうか。目標を与えるのではなく、自らそれを発見させるよう誘導することは出来ないだろうか。いくら問題を解くことに長けても、問題そのものが役立たずでは子供たちが二重に損してしまうではないか。

ビジネスの本当の醍醐味は、問題を解くことにではなく見つけることにあるのだから。

Dan the Perpetual Student