新潮社後藤様より献本御礼。

やっぱサイバラはこうでなくっちゃ!

この世でいちばん大事な「カネ」の話」もいいけど、「毎日かあさん」もいいけど、やっぱ一番似合うのは、極彩色だ。

本書「西原理恵子の太腕繁盛記 FXでガチンコ勝負!編」は、FXを肴どころか、連載のいいわけにして、「いつもどおりのサイバラ」を縦横無尽に披露してくれる一冊。本書には申しわ毛、すなわち岩井志麻子の陰毛程度に活字化されたインタビューも入っているが、メインディッシュはなんといってもサイバラとアクユウたちだ。

なにせ、こうである。

岩井志麻子: ぶっさいおっさんのくせに何がホストじゃ私が食べたいのは素人のかたくてあおくて若い台湾バナナ
西原理恵子: しまこちゃんはまんこはひろいのに心はなぜこんなにせまいのかしら

これがあるからこそ、「毎日かあさん」もあるのだ。

作者がえらい--いや、えらくみえる--のは、「毎日かあさん」を得ても本書のサイバラを捨てていないこと。よくあるでしょ?メジャーデビューした途端に、過去の自分を黒歴史としてなかったことにしちゃう人が。

しかし、作者の絵は、それを許さないほど下手なのである。「味がある」「あれはあれでうまい」という意見が間違いだとは言わないけど、それはむしろ作者を理解したことにならない。なぜなら、それを理解しないと「毎日かあさん」と本作が同一作者であることが理解できないからだ。

作者は、日本で一番「下手が似合う人」なのだ。

下手なのは絵だけではない。FXももちろん、人生のありとあらゆることが下手である。実際はそうではないらしいのだが、少なくとも作品からだけではそれはわからず、「本当は上手なサイバラ」を作者はつまりばらかにしない。

下手を開き直る、というのとは違う。

下手をスタイルに昇華しているのだ。

ヘタウマと言いたくもなるが、それも違う。ヘタウマというのはあくまで絵でやるものだ。

作者は、人生でそれをやっている。

類似品があれば、「ヘタウマ」のようにそれらをまとめる名前をつけたくなるところだが、今のところ作者は class of her own なのでそうも行かない。「サイバラ的」と呼ぶしかない。

サイバラは、やはりすごい。

下手が似合うようにするのは、上手になるよりよっぽど難しいはずなのだから。

Dan the Fan Thereof