これを書評しそびれていたことを思い出した。
これ、間違いなく、一般書専門書を問わず、ブラックホールについて書かれた書籍の中で最も包括的な一冊。満漢全席、まさにブラックホール三昧。
ブラックホールで核攻撃!? 天才物理学博士、緊急逮捕で衝撃自白中 : Gizmodo Japan(ギズモード・ジャパン), ガジェット情報満載ブログもしや人工ブラックホールなんて作り出し、異次元の発見なんてできちゃったら、トンでもない手段で悪用されちゃったりとかしませんかね...
安心していい。本書を読めば、そういうブラックホールが仮に出来たとしても、悪用できるような代物でないことがすぐにわかるから。
本書「カラー図解でわかるブラックホール宇宙」は、ブラックホールとは何であり、どんな風に出来、そしてそれによって何が起こるかを、文字だけではなく図で示した一冊。
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サイエンス・アイ新書というと、競合するブルーバックスなどと比べて、図が多く、それだけ平易な代わりに「やさしくしすぎ」という印象もある。
しかし、本書はその点は無遠慮。なにしろクルスカル図やペンローズ図まで遠慮なく出てくるのだ。他に出てくる本となると、「現代天文学小事典」ぐらいだろうか。こちらは一般書としては最も難しい部類に入る。下手な専門書よりも難しい。余談ではあるが、そろそろ改訂して欲しい頃だ。「現代物理学小事典」「新・物理学事典 」として改訂されたのだし。
本題に戻る。だからといって本書は数式が理解できないと読めない本では決してない。本書の主役は、数式ではなく図。特に素晴らしいのは、最も単純なシュヴァルツシルド・ブラックホールだけではなく、回転しているカー・ブラックホールの近傍で何が起きるかも図で示していること。時空のひきずり効果を言葉ではなく図にしたものとなると、本書が始めてではないか。
その他、スター・ボウが実際にどう見えるかや重力レンズ効果が実際どうなっているかなど、本書はブラックホールを「一目見て納得」するための本である。著者は実際そのためにプログラムを書き(VBというところがプロの天体物理学者にしてアマチュアプログラマーといったおもむきで微笑ましい)、計算でブラックホールを再現している。どの図にも一見の価値がある。
もちろん、図だけではなく文章も素晴らしい。例えばgizmodeの記事のような疑問に対して、本書は明快な解答を与えている。
P. 136ブラックホールがどれくらいの物質を吸い込むことができるかについては、「ホイル=リットルトン降着(Hoyle-Lyttleton accretion)」と呼ばれるプロセスで見積もることができる(図13-2)。たとえば10億トンの質量をもったブラックホールが地球脱出速度程度の10km/sで地球内部を運動したとすると、ブラックホールの経路にそって半径1万分の1cmの領域の物質を吸い込むだろう。毎秒0.3gぐらいになる。この割合でブラックホールが成長すると、2倍になるのに約一億年もかかる。
ましてや、LHCで出来うるブラックホールはもっと小さくて、ホーキング輻射で一瞬にして蒸発してしまうのがおちだ。え?ホーキング輻射って何?本書で確認してください。
ブラックホール茶漬けを食べてもおなかいっぱいになれるほどの知的満腹が味わえます。
Dan the Black Hole of Knowledge
何を言ってるのまだ分からないが、
科学理論はじめ理論は所詮仮説。
妥当だから採用されているだけで、反証があれば棄却されるって言うのは文系でも同じでしょ。
別の説明が可能だから相対性理論も繁栄したし、銀河クラスの力学になるとこれも破綻してる訳だし、いくらでも余地はある。
理論の欠陥や死角を見つける人を物理学者と言います。