私にとっては、むしろ魅力的な案だ。
アゴラ : 消費税の段階的増税を - 池田信夫したがって、たとえば「消費税率を2020年まで毎年1%ずつ上げる」と決めれば、一種の人為的インフレを起こすことができ、消費が刺激されます。この増税と同時に法人税や所得税を引き下げ、税収中立にすればよいのです。
しかしあなたにワーキングプアの自覚があるなら、断固反対すべきだと率直に申し上げる。
なぜか。
消費税には逆進性があるからだ。
消費税はフラットなので累進も逆進もないように見えるのだが、それは収入から消費にまわす率=消費性向が一定である場合にのみそうだと言える。実際には、より高収入の人の方が貯蓄にまわす率が高められるので、消費性向は高収入な人ほど下がることになる。
では、具体的にどれだけ下がるか。
残念ながらあまり資料が見当たらないのだが、それでも以下を見つけることが出来た。
これのP.29「年間収入五分位階級別家計収支」から抜粋したのが以下である。
階級 | 平均月収 | 平均年収 | 消費性向 |
---|---|---|---|
I | \247,471 | \2,969,652 | 82.50% |
II | \350,704 | \4,208,448 | 76.00% |
III | \456,509 | \5,478,108 | 73.80% |
IV | \555,728 | \6,668,736 | 72.50% |
V | \823,614 | \9,883,368 | 66.40% |
参照点が少ないのだが、これを直線で近似してみると y = -2e-08x + 0.8664 と出た。R2は 0.9293 と高い。
これを
に反映させてみる。反映させてみるついでに、社会保険料を折半でなく全額にして計算してみる。要するに、「実年収」は年収+折半分と見るわけだ。これで、雇用主があなたのために支払ったお金がいくら政府に行き、あなたの手元にいくら残るのか、本当の姿がより鮮明になる。
それが、以下である。
青が消費税である。現在の、国際標準よりもかなり低い5%でも、逆進性が見て取れる。この点においては、完全フラット--実は最高額以上は率でなく額もフラット--な社会保険料よりたちがわるい。
さらに消費税が10%だとどうなるか。
こうなる。
ここでは、税込み消費額も消費性向も変わらないものとして単純計算したが、逆進性はさらにくっきりと見えるようになる。実際の消費性向は、さらに傾きが深くなるのではないか。なにしろ消費税を節税する一番簡単な方法は、消費せずに貯蓄することなのだから。
この消費税の逆進性に関しては、元記事も指摘している。
アゴラ : 消費税の段階的増税を - 池田信夫消費税は逆進的な性格をもっているので、所得分配の不平等化を防ぐには、負の所得税(給付つき税額控除)で最低所得保障を引き上げればよい。
しかし、所得税の逆進性が、消費性向に由来していることまでは指摘していない。折角負の所得税で手取りが増えても、消費性向が変わらなければ実効年収はさほど大きくはならないのだ。
日本経済に限らず、世界経済の最大の問題は、金が足りないことではなく金が余っていること。それにも関わらず--いやだからこそ--金が足りない人が多いことではないのか。
断言しよう。消費税を上げて喜ぶのは、ノンワーキングリッチであると。
Dan the Taxpayer
という思考からの転用だったり。