こんなお題をいただいたので。

CNETパネリストが振り返る2009年:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan
さて、2009年のIT業界における3大ニュースを選ぶとしたらどんなものが思い浮かぶでしょうか。皆さんの意見を聞かせてください。

年を越す前に。

今年は単に2009年という年であると同時に、ゼロ年代最後の年。偶然の一致かもしれないが、「終わりの始まり」を強く予感させる1年であったように思う。

1. iPhoneの台頭とAndroid端末の登場 = ガラケー終わりのはじまり

日本で3Gが販売されたのは去年のことだが、今年の3GSの登場で、iPhoneも街で見かけるのが当たり前になってきた。地下鉄に乗ると、自分以外に持っている人がいないということがほとんどないほどに。来年にはAndroid端末も当たり前になってくるだろう。

この変化は、端末にとどまらない。むしろi-Modeをはじめとする、ネットの「あちら側」に「ふつうのWeb」とは独自に進化をとげてきた「ケータイWeb」がいよいよ「ふつうのWeb」と統合されていくということだ。それも「ケータイWeb」ではなく「ふつうのWeb」主導で。

mixiやgreeはFaceBookやtwitterに飲み込まれていくのだろうか?それはまだわからないが、iPhoneやAndroidの味をしめたユーザーが、ガラケーに戻ることは極めて難しい。

2. Snow Leopard/Windows 7 = 32bit終わりのはじまり

地味だけど大きいのは、OSの64bit化。ふつうのパソコンにも232 = 4GBのメモリーが乗るようになった今、32bit OSではそれを使い切れない。10年以上前から64bit OSは存在したけれども、いよいよ普通の人の普通のパソコンも64bit化しなければ「OSがパソコンに負けてしまう」ようになってしまった。

この点で一番うまくやったのが Apple だろう。Snow Leopard には「64bit版」は存在しない。全て64bit版であり、そうでありながら64bitをサポートしていないマシンでもきちんと動く。CPUアーキテクチャーを3度変えてきたAppleは、 Revolution を Evolutionary にやるのはお手の物だ。

かなり呆れたのが、 Windows 7 。なぜ32bit版などというものを出さねばならないのか?ただでさえ多い Editions がこれで倍近くに増えてしまう。

3. "downgrade" - Microsoft終わりのはじまり?

理由はわかっている。NetBookの存在だ。AMD64/Intel 64をサポートしていないCPUを積んだこれらの商品に、64bitは全く不要。その分重くかさばれば、 Ubuntu や Moblin に負けてしまう。

これまで「進歩する」一方だったコンピューターの世界で、「ダウングレード」という言葉がこれほど一般的になったのはこれが初めてではないか。実際 Vista ほど「ダウングレード」されたOSはこれまでなかっただろう。その不人気ぶり、評判が悪かったMeがかわいく見えるほどだ。WebのBTOサイトを見ると、あたかもXPの次のOSはWindows 7であり、Vistaは「なかったこと」にされている。

そのWindows 7ですら、ダウングレードオプションが用意されているケースが少なくない。

32bitと64bitの狭間である4GBのメモリーというのは、一人で使い切れる限界のように感じる。私のiMacは家族用の21.5インチ、私用の27インチともに8GBのメモリーを積んでいるが、方や「家族が全員使う」ものであり、そして方や「仮想マシンを同時に複数立ち上げる」ものであり、いずれも「一人で使うもの」ではない。

もはやこれ以上ハイスペックを売り込むためには、それを必要とする用途が必要なのに、それが払拭しているのだ。色数は16,777,216色以上増やしても意味がない。増やしたところで我々の目はそれを判別できない。動画のfpsもしかり。解像度も1080pで充分以上。パソコンの能力は、少なくとも画像と音声においては我々ユーザーのスペックを超えてしまったのだ。

これまでは、我々はパソコンのスペックに大して常に飢餓状態にあった。Wintelはそれに上手にのっていた。ところがここにきて、飢えが枯渇してしまった。回線もCPUもHDDも使い切れなくなってしまったのだ。

だったら「使えるぎりぎりのもの」を、「ぎりぎりの価格」で売った方がいいではないか。

そして、「ぎりぎりの価格」とは、OSに関していえば0円、である。Microsoftはダウングレードという恥辱に耐えてまでなんとかNetBookにもWindowsをプリインストールさせているが、正直 Ubuntu の方がよっぽど使いやすい。私が Mac OS X という、WindowsよりはUbuntuにずっと近いOSを使っていることもあるが、Windowsは何がどこにあるのかさっぱりわからない。そしてそれ以上に、なぜそれがそこにあるのかわからない。私が言っているいることがわからなかったら、WindowsのControl PanelとOS XのPreferences、そしてUbuntu (というよりGnome)のSystemメニューを見比べていただきたい。

で、Starter Edition では壁紙が変えられないと。Ultimate EditionならCPUまで変えられるとでも?

Enough is Enough!

正直この一年は、Microsoft製品-- 会社ではない --好きとはとても言えない私でさえ、Microsoftに同情してしまうことが多かった一年だった。Yahooは買収かなわず提携どまり。MP3プレイヤー市場はiPodにやられっぱなし。スマートフォンはiPhoneとAndroidの往復ビンタ。クラウドコンピューティングではAmazonとGoogleに先を越され、そしてLion's Shareを握っていたはずのコンシューマーOSでは、上からはMacに押され、下からはUbuntuに突き上げられている。そしてブラウザーのシェアにおいて、ついにIEも一位から転落した。

Windows 7 の売り方 -- 出来ではない -- を見る限り、かの社にはまだそこんところが本当にピンときているとはとても思えない。まるでバブル崩壊直後の日本を見ているようだ。おろおろしつつも「これは一時的な現象なのだ」と指をくわえていた、あの頃の日本に。

次の10年がMicrosoftにとっての失われた10年にならなければいいのだが…

Dan the Man with Too Many Platforms to Fiddle