毎日コミュニケーションズ大澤様より献本御礼。

すごい。すばらしい。そしてちょっぴり悔しい。

「Googleとはなにか」ではなく、「Googleはこれから何をやろうとしているのか」ということに関して、Googleの外の人による結論として、もっとも腑に落ちるのが本書。正直言いたいことを言われてしまったという感じ。

Androidの敵はiPhoneじゃない。

それがわかるだけでも、一読の価値あり。

本書「Googleの正体」は、タイトルどおりGoogle論なのだが、会社論とは思えない読了感がある一冊。むしろそれは、数学の論文を読んで理解したような感じなのだ。

目次 - MYCOM BOOKS - Googleの正体より。
第1章 不気味なグーグル
第2章 富が湧き出す仕組み
第3章 拡大・成長のための最強の戦略
第4章 成り立ちから読み解くグーグルの姿
第5章 グーグルと私たちの未来

本書が数多の論と一線を画しているのは、他が検索、gmailなどのWebサービス、そしてAndroidやChrome OSといった「現象」を見てその「理由」をひねり出そうとしているのに対し、本書において著者はそういったことには目もくれず、ただGoogleの「公理」をそのまま「素直」に「理詰め」で演繹していること。

だからこそ、AndroidにとってのiPhoneは、WindowsにとってのMac OSではないという、驚くべきかつ当然の結論が自然と導きだされる。

P. 98
 現在、世界の人口は約68億人。しかし、インターネットにアクセスできる人工は19億人程度でしかなく、全人類の3.5人に一人しかインターネットを使っていない。
 あとの2.5人は、インターネットを見たこともないか、街に出かけた時にインターネットカフェなどで見るしかない。この「残りの2.5人」にどうやってグーグルを使ってもらうか。

それが、Androidであり、Chrome OSなのである。

これらは、残り2.5人にとっての、最初のインターネット体験装置となるために開発されたのだ。

iPhoneやMacは、すでにインターネットに囲まれて生活している人々にとって、最良のインターネット体験装置であることを目指しているのは明らかなので、実は少しもぶつからない。Bestを目指すのがAppleならば、GoogleはあくまでもMostを目指しているのだ。

それでは、なぜGoogleはMostを目指すのか。

それが彼らにとってのBestだからだ。

本書では、一検索あたりのGoogleの売り上げが、黎明期も今も変わっていないことが明らかにされる。その額、20セント。本書の分析では、GmailやGoogle Desktopなどの「イントラ検索」が含まれていないが、それまで含むとだいたい10セントぐらいだろうか。 dime a search. 単価は変わらないのだ。

それならば、単純に母数を増やせばいい。

残り2.5人が今の1人と同じように検索してくれるだけで、Googleの売り上げは250%増になるのだ。

ここで改めて、Googleの「公理」を見てみよう。本書に取りかかる前にぜひ見ておいていただきたい。

会社情報 - Google の理念
  1. ユーザーに焦点を絞れば、他のものはみな後からついてくる。
  2. 1つのことをとことん極めてうまくやるのが一番。
  3. 遅いより速い方がいい。
  4. ウェブでも民主主義は機能する。
  5. 情報を探したくなるのはパソコンの前にいるときだけではない。
  6. 悪事を働かなくてもお金は稼げる。
  7. 外にはいつも情報がもっとある。
  8. 情報のニーズはすべての国境を越える。
  9. スーツがなくても真剣に仕事はできる。
  10. すばらしい、では足りない。

これに、「0. Googleは営利企業である」を加えれば、Googleがやることは全て説明がつくのだ。100%。本書を読む前に、もしあなたが Brin/Page/Schmidt だったら何をするか考えてみる。彼らの人格を知っている必要はない。あくまで上の11個の「公理」を「定理」へと発展させていく。出てくる結論は本書のそれと、そしてこれからGoogleがやることと変わらないはずだ。

本書は、そんなあなたの考えの「答え合わせ」として読むとよい。著者が、本書を紹介している私が、そしてGoogleの「中の人」が願っているのは、自分の頭で考えることなのだから。

あとがき - P. 211
この本を読んでくださって、「私とは意見が違う、見方が違う」と感じられた方も多いだろう。そう感じたら、ぜひご自分のブログなどで意見を表明してみていただきたい。みんなでグーグルについて考える。それがインターネットというインフラをよい方向に導くための第一歩なのだ。

そう。 "Do no evil." 彼らにとって最も evil なのは、つまるところ、自分で考えるということを奪うことなのだから。

Dan the Searche(r|d)