東海大学出版会 田志口様より献本御礼。

キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━!

待っていた、待っていた、待っていた。

この本の復活を。

願わくば、「小飼弾が選ぶ最強の100冊+1」の前に復活してほしかった。入手困難だったので泣く泣く外したのだけど、最強の100冊が10冊になっても本来入っていてしかるべき一冊。

なのにAmazonときたら、「この本は現在お取り扱いできません」だと?

すぐに在庫されると思うのでリンクしておくが、念のために東海大学出版会も併記しておいたので待てない方はそこから注文してほしい。

本書「オイラーの贈物」は、

はじめに
唯一の式 -- オイラーの公式:

e = cos θ + i sin θ

を理解することを目標に、基礎的な数学全般の学習が一人でできるように工夫した、全く新しい形式の入門書

である。そう著者が本書の初版でいい切ったのは、1993年6月。15年あまりたった今もこのことは全く変わりないことは、初版もちくま学芸文庫版も、5,000円以上の中古価格がついていることからも伺える。

それだけ出しても、実はいいのである。なんたってこの贈物はプライスレスなのだから。

目次 - 東海大学出版会|書籍詳細>新装版 オイラーの贈物より
新装版まえがき/はじめに
第I部 基礎理論
1章 パスカルの三角形
1.1 数の種類
1.2 二項展開とパスカルの三角形
1.3 パスカルの三角形に色を塗る
1.4 無限数列とその極限
1.5 収束の判定法
1.6 数列の和
2章 方程式と関数
2.1 方程式の根
2.2 複素数の四則
2.3 1のn乗根
2.4 方程式を電卓で解く
2.5  関数とグラフ
2.6 関数の最大値・最小値
2.7 関数の凹凸
2.8 平方根を求める
3章 微分
3.1  連続関数の性質
3.2 微分の定義
3.3 平均値の定理と関数値の増減
3.4 導関数を求める
3.5 微分法の基礎公式
3.6 冪関数の微分(指数の拡張)
3.7 ニュートン・ラフソン法
3.8 関数のグラフを描く
4章 積分
4.1  面積と定積分
4.2 原始関数
4.3 冪関数の積分
4.4 積分法の基礎公式
第II部 関数の定義
5 章 テイラー展開
5.1 テイラー多項式
5.2 テイラー級数
5.3 一般の二項展開
6章 指数関数・対数関数
6.1  指数法則
6.2 指数関数
6.3 指数関数の性質
6.4 対数関数
6.5 対数関数の級数展開
6.6 常用対数
7章 三角関数
7.1 弧度法と円周率
7.2 三角比
7.3 加法定理(図式解法)
7.4 三角比の値を求める
7.5 三角関数の定義
7.6 ド・モアブルの定理
7.7 三角関数の微分
7.8 三角関数の級数展開
7.9 逆三角関数
第III部 オイラーの公式とその応用
8章 オイラーの公式
8.1 オイラーの公式の導出
8.2 オイラーの公式の応用
9章 ベクトルと行列
9.1 ベクトルの定義とその算法
9.2 行列の定義とその算法
9.3  逆行列と連立一次方程式の解法
9.4 複素数の行列表現
9.5 オイラーの公式の行列表現
9.6 行列のn乗を求める
9.7  回転行列と正n角形
10章 フーリエ級数
10.1 ベクトル空間
10.2 無限次元空間
10.3 フーリエ級数
10.4 フーリエ級数の応用例
第IV部 附録
附録A 発展的話題
A.1 ユークリッドの互除法
A.2  ディオファントス方程式
A.3 式に対するユークリッド互除法
A.4 等差数列
A.5 数学的帰納法と帰謬法
A.6 整数論の基本定理
A.7 順列と組合せ
A.8 二次方程式と確率
A.9 連分数
A.10 無理数であることの証明
A.11  ピタゴラス数の一般解
A.12 数列の一般項と行列
A.13 代数方程式の代数的解法
A.14 導関数を用いた判別式の表現
A.15  高次方程式の例題を解く
A.16 部分分数分解
A.17 有理関数の積分
A.18 一階線型微分方程式の解の公式
A.19  行列形式による微分方程式の解法
A.20 三次元のベクトル
A.21 三次の正方行列
A.22 ラプラス変換
附録B 各種数表
B.1 10000までの素数表
B.2 99までの自然数の逆数
B.3 10までの自然数の階乗とその逆数
B.4  20までの整数の!!
B.5 素数に対する自然対数のより詳しい値
B.6 自然対数の表
B.7 2の平方根の値(4000桁)
B.8  常用対数log10 2の値(4000桁)
B.9 ネイピア数eの値(4000桁)
B.10 円周率πの値(4000桁)
B.11  オイラーの定理γの値(4000桁)
B.12 度数法による三角関数法
B.13 逆正接関数の表
B.14 数の広場
B.15  文字の広場
B.16 パスカルの三角形(白紙)
第V部 問題解答
新装版あとがき
索引

しかし、5,000円というのは、専門書を買い慣れた人であればとにかく、本をあまり買わない人にはあまりに高い。本書の主読者たる中高生ともなればなおのこと。専門書を主に出版している東海大学出版会が、500ページを超える本書を、文庫ではなくA5版で税込み1,890円で新装してくれたことに全人類を代表して感謝したい思いだ。

おそらく全人類的に現在最も知られている数式は、 E = mc2 であろう。これは実際においてv=0の特別な場合であるのと同様、上記の式をθ=πとした時に得られるのが eπi = -1 である。その簡素さにおいて E = mc2 に劣らず、それよりも2世紀以上前に発見され、そしてその応用範囲の広大さにおいて遥かに凌駕するこの式がそれよりも知られていないのは、実に、あまりにもったいないことである。

この式は、実は高校数学の頂点にして、大学数学の出発点にもなっている。ただし、必ず教えてもらえるわけではなく数学を選択した場合のみ教わる式である。これは日本のみならず、米国でもそうだった。

なんと、もったいない。

この式は、成人後の数学好きと数学嫌いの分水嶺にもなっている。これの前に挫折すると、本当は好きなのに数学嫌いと勘違いしたまま残りの人生を過ごしかねない。我が妻がまさにそうだった。これに至る過程で通る三角関数でつまづいたのだ。しかし、この式までたどりつけば、三角関数は、小学生にとっての鶴亀算が中学生には連立方程式でバターをナイフが切るかのごとくずっと簡単に解けるのだ。

そして、この式を乗り越えてしまえば、たとえ専門家でなくとも、大人になった後でも数学好きでいられる。

本書は、これから「大人」になろうとしている人々と、つまづいて「大人」になり損ねた人のためにある。

この式を知らずして死ぬのは、セックスを知らずして死ぬのに匹敵するもったいなさだと謹んで弾言していただく。そしてセックスがそうであるように、何度愛でてもこの式の美しさは変わらない。いや、萎えても枯れても朽ちぬという意味ではこちらの方が上かもわからない。人類の至宝、いや、数学は超人類的な価値を持つはずなので全知的生命体の至宝である。

何よりすばらしいのは、この至宝は何人たりともひとりじめ出来ないこと。その美しさを愛でるには、ただその見方、感じ方を知ればよいのである。本書はまさにそのためにある。まだその美しさを知らぬ人も、そしてすでに知る人も、存分に味わい、感じ、そして愛でて欲しい。

This is the one!

Dan the Mathphile