著者より献本御礼。
初出2010.02.23; 「儲けにつながる「会計の公式」の表紙も参照
で、書評しようとしたら、もう磯崎さんにぺんぺん草も生えないほど完璧に書かれているという。
しかしそれを言えば、「国語算数理科しごと」「借金を返すと儲かるのか?」で書くべきことを全部書いたはずの著者が本書を著したことに申し訳がたたないような気がするので、私も書くことにしよう。
本書に、何が書いていないかを
本書「借金を返すと儲かるのか?」は、前著「国語算数理科しごと」を「理念編」とすれば、「実践編」に相当する。中学生以上であれば、いきなり本書からはじめてもいいだろう。
なのになぜ著者は本書「12歳でもわかる!決算書の読み方」を著したのか。
新著を著すに足りる新発明をしたからだ。
それが、B/Sを人相書きにしてしまうという手法。これがいかにすごいかといえば、プロをもってして
isologue - by 磯崎哲也事務所: 「12歳でもわかる!決算書の読み方」~お金のことを知らずに「社会人」になってしまった人の会計入門~特にこの「似顔絵」貸借対照表はスゴい発明。15世紀末にイタリアでルカ・パチョーリが複式簿記の本を書いて以来の革命かもしれません。(笑)
というほど。人相であれば12歳どころか12ヶ月の子供でも読めてしまうではないか!
ただし、決算書における良い人相は、ヒトの遺伝子に組み込まれている良い人相とは少し違う。どう違うかは本書で確認していただくとして、この方法であれば「わからなく」とも「読む」のであれば12ヶ月はとにかく3歳でもできるようになるのは確かだ。すごい発明である。
とすると、人は見た目が9割であるように、会社もまた見た目が9割であるのだろうか。
本書には、人相決算書のケーススタディとして武田薬品とアステラス製薬が出てくる。その過程でキャッシュフロー計算書の読み方も学べるようになっているのだが、実は一番肝心なことを見落としている。
なぜ、武田薬品は「人相書きが悪くなる」ことを承知でミレニアムを8335億円で買収したのか?
こればかりは、いくら決算書を読んでもわからない。
しかし、製薬会社の業界構造が分かっていればたちどころにわかる。
両者の決算書をいくら読んでもわからないことが、たとえば「医薬品クライシス」を読めばたちどころにわかる。こちらは新潮新書編集部より献本御礼。そして同書を読んでから改めて本書を読むと、製薬会社の財務の特殊性が改めて浮き彫りになる。
曲がりなりにも製造業の両者の自己資本比率は、なぜこれほどまでに高いのか。両者とも八割近く。まるで上場したてのIT企業のようではないか。
そしてその答えもまた、「医療品クライシス」を見ればよくわかる。「人相」的には非の打ち所がなさそうな両者、いや製薬会社全般が、構造的な、そう、各社固有ではなく、製薬業界の構造そのものに起因するクライシスのまっただなかにいることが。
会社を人体にたとえたら、決算はまさに血算。血液検査が健康診断の基本であるように、実に多くのことがよくわかる。最も短時間で最も多くのことを読めてしまうのが決算だ。しかし血液を見ても健康状態の全てが分かるわけではないのと同様、決算を見てもわからないことはかなりある。そして人相と同様、決算もまた化粧しやすいものの一つでもある。
それを理解することが、12歳から先の決算書の読み方ということになるのだろうか。
しかしそれは、本書をクリアーした後の話だ。
決算書が読めずに会社を見立てるのは、血液検査抜きの健康診断に等しい。
そこまでは、言い切ってよいのではないか。
Dan the Bookkeeper of His Own
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