集英社新書編集部より献本御礼。

折しも今夜

に出演するので、実にありがたい参考書となった。

事業仕分けについて知りたい人は、必読。放送だけでは見えない実情が実によくわかる。

本書「「事業仕分け」の力」は、「仕分け人」「代表」でもある著者による「事業仕分け」のドキュメンタリー。「事業仕分け」そのものもまた事業である以上、ポジショントークに終止することを危惧しつつ読了したのであるが、その心配は杞憂であった。

目次
はじめに
第1章 「政治文化」の革命としての事業仕分け
第2章 事業仕分けとは何か
第3章 事業仕分け最前線
第4章 事業仕分けに対する批判に答える
第5章 有権者の意識改革としての事業仕分け
補章 事業仕分けの歴史

それが杞憂に終わった一番の理由は、著者がなぜ事業仕分けが必要なのかを、「仕分けという事業の中の人」としてではなく、納税者代表としてきちんと把握していることにある。

P. 27
 事業仕分けは、次の三つの点で日本の政治文化を変えるきっかけになりました。
 一つは、議会の役割は、予算を増やすことではなくて、減らすことだろいうところへ意識を転換させるきっかてとなった点。
 二つ目は、事業の目的と手段というものは、区別して議論するのが当たり前などだというところに立ち返らせる景気となった点。
 三つ目は、事業は必要だと主張するほうに立証責任があるのであって、不要だというほうに立証責任があるのではないと、認識を改めさせた点。

この中でも最重要なのは、三つ目であろう。民間であれば当たり前のことことが、政府においては必ずしも当たり前でなかった。もちろん「政府のどの部門でも等しくそう」というわけではなく、税金が投じられている機関でもこうも違うものかというのを浮き彫りにしただけでも「事業仕分け」は効果があった。

もちろん、事業仕分けという事業は完璧ではない。切らぬべき事業を切ってしまうこともあるだろうし、切るべき事業を切り損ねることもあるだろう。しかし重要なのは、事業は必要だと主張する者が立証すべきだという、市井にあってはごく当たり前の責任を役人たちにまっとうしてもらうことにある。同じ失敗するにしても、今度はそれが有権者に見える。失敗を「内輪でもみ消す」ことはずっと難しくなる。

第三WGの仕分け人、永久寿夫(PHP総合研究所常務取締役は以下のように語っている。

PP.165-166
今回の仕分け結果は、基金の国庫への返納を求めた「埋蔵金」約一兆一二〇〇億円を除くと、削減額約六七〇〇億円となる。そして、実際の二〇一〇年度予算の概算要求から削減できたのは、仕分け対象外の事業に仕分けの結果を反映させたものなどを含めても九六九二億円。そのうち事業仕分けの結果が直接反映されたのは六〇〇〇億円程度であるという。

その後「評価は分かれるにしても、「歩留まり」が低いとすればその理由は明らかである」と続けているが、初回にしてはなかなかのものではないだろうか。

一朝一夕で終わらせるべきものではない。本書も補章において前与党が果たした役割にもきちんと触れている。政権が交代した後も続けられることを一納税者として願わずには、いや要求せずにはいられない。結果責任を追うのは我々なのである。説明責任を求めるのはその第一歩なのだから。

Dan the Taxpayer