もっと漫画を紹介しるとおしかりを受けたので。マイナーというにはあまりに大御所ではあるけれど、本作は格好の「競合」があるので。

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フロマンガ (全四巻)
吉田戦車

風呂漫画といえば、昨今は「テルマエ・ロマエ」がもてはやされているけど、どちらが笑えるかといえば、こちらに軍配が上がるのではないか。同作が「くすっ」ぐらいだとすると本作は「コーヒー牛乳返せwww」ぐらいの違いがある。

本書「フロマンガ」は、おそらく本邦初の、そして「テルマエ・ロマエ」がなかったとしたら本邦唯一のになったかも知れない、風呂漫画。しかし、これは結構不思議なことでもある。

なぜ不思議かといえば、人間が無防備な瞬間というのは格好のギャグの対象だからだ。無防備な瞬間といえば何と言っても性交と用便だが、この二つをテーマにしたギャグ漫画が枚挙に暇がないのに(エログロで最高傑作といえばやはり「えの素」)なぜか入浴は「お色気」とは結びつけられても「笑い」とは結びつけられなかった。おそらく風呂ではリラックスしすぎてギャグどころではなかったのだろう。

それを笑いに結びつけたのは、やはりこの人吉田戦車だった。吉田戦車といえば不条理。まさにこの点が、「テルマエ・ロマエ」との最高の違いで、テルマエ・ロマエの魅力がまさに条理--ああすればこうなるの連鎖--にあるのに対し、吉田作品は予測が全く経たない。いや、でたらめではない以上、そこにはなんらかの法則があるはずで、たけくま教授に言わせると「本人は法則に従って描いているみたいです」とのことなのだが、しかしその法則というのがさっぱりわからない。トラシメヌス湖畔の霧の中で奇襲されたローマ兵のような気持ちだ(ローマ人の物語�靴鮖仮�)。

どこをどうひねると、「お父さんとフロに入らなくなる日まで」メーターなどというものを思いつくのか?抜け忍ならぬ抜け毛はどこから(生えて)来るのか?フロスキー星人は?浴人26号は?

作者の源泉の湯量は底なしとしかいいようがない。「戦え!軍人くん」から数えて21年も経つのに。条理にたよらずによくもここまで。おっと、これを調べるのにWikipediaを見たのだけど、本作が連載中とあるぞ。第四巻(奥付2009年12月31日)のオビに「ついに完結。」とあるのだが。

理屈に沿った笑いが結構イケることを、「テルマエ・ロマエ」が再び教えてくれた今、理屈抜きの笑いに本作で(もう一度)つかってみるのもいけるのではないか。

Dan the Furophilia