幻冬舎小木田様より献本御礼。

これはすごい。前著「六法で身につける 荘司雅彦の法律力養成講座」を読了したとき、これ以上単純明快な法律入門は出ないと思ったが、それを超えたのは著者自身だった。

つぎはぎだらけの脳と心
話をする時は、相手に知識はまったくなく、知性は無限にあると思って話せ

13歳のあなたも、そうでなくなってしまったあなたも、本書とであれば対話できるだろう。

本書「13歳からの法学部入門」は、法といえばそういうものがある程度の知識しか有しない人に、なぜ法なのか、どのように法なのか、そして法には何ができて何ができないかを、根源から説いた一冊。

目次
はじめに
第1章 法律って本当に必要なんだろうか?
第2章 ぼくの正義、君の正義、みんなの正義
第3章 なぜ人を殺してはいけないのか
1 殺人について考える
2 死刑について考える
3 刑罰について考える
第4章 自由と民主主義の微妙な関係
第5章 権利を実現するのは大変だ!
第6章 法律を読んで頭を鍛える
1 憲法の枠組みについて知っておく
2 条文と判例について読んでみる
3 法的三段論法を理解する
第7章 日本人は裁判が苦手?
あとがき - 13歳の君と、かつて13歳だった大人の皆様へ

実のところ、「法といえばそういうものがある程度の知識」というのが法治国家においては難しい。法は実のところ「空気化」、つまりあって当たり前の状態に我々の物心ついた時からある。しかし法そのものの意義を解くには、そうでない状態--本書で言うところの「自然状態」まで話を引き戻さなければならない。

PP. 59-60
 君がこの本を自宅で読んでいる最中、だれから君の家に忍び込んで、ナイフを持って飛びかかって来たとしよう。
 君が侵入者に向かって「ぼくを殺すと刑法一九九条に殺人罪になるぞ!ついでに、物を脅し取って行ったら強盗殺人になって死刑または無期懲役になるぞ」と叫んでも、そいつがそんなことお構いなしで襲ってきたら(九十九%、お構いなしだろうね)、だれかが助けにきてくれるまでの間、君は自力で自分の身を守らなければならない。
[中略]
 もし君が殺されて犯人が逮捕されれば、犯人は「住居侵入罪」と「殺人罪」で処罰される。でも、君の命は来ない

本書には、こんな形而上ならぬ「法上」= metalegal な話がたくさん出てくる。いずれも難問だ。そう。著者のような法律家にとっても。

はじめに
 この本の目次を見ると、最初の質問のほかにも、「自由と民主主義」「権利と義務」のよいうに、一見わかっていそうで深く考えだすと頭が混乱してしまう項目が書いてある。
 でもね、頭が混乱するぐらい、寝る事もご飯を食べることも忘れて考え込むことは、最高の思考の訓練だ。スピードの速いことばかりが重視される時代に、ネットで検索してもすぐに答えが出てこない問題を、じっくり考える経験は、後で必ず大きな成果となって君に返ってくる。

著者が専門家であると同時に、専門バ化を免れている理由がここになる。

専門バ化は、専門家が多かれ少なかれ必ずかかる病気ではある。しかし病状が悪化しやすいことにかけて法律家の右に出るものはいないのではないか。それがどれほどひどくなりうるかは、「裁判所が道徳を破壊する」を読んでもわかる。本書にも同書で出て来た尊属殺人罪が例題として登場するが、その取り上げられ方の違いには、「これが同じ法律家の言説か」と驚かずにいられない。

「自由、ときどき正義。」とは、本書のオビの文句である。

我々の一般市民の法との接し方も、「自由、ときどき専門家」であるべきだろう。

P. 206
それに、制度は一度できたからといって、永遠に存続させねばならないものじゃない。一個人の基本的人権を尊重するという理念に照らしつつ、柔軟に取り込んでいくべきか、改善していくべきか、場合によっては制度そのものを廃止すべきか、議論し、検討を重ねていけばいい。それこそが、これから大人になる君たちに課せられた役割だ。

それを人任せにするということは、主であることを放棄することでもある。これから主となる諸君も、すでに主となった我々も、それだけは忘れてはならないのだ。

Dan the Ordinary Citizen