日経BP中川様より献本御礼。
This is it.
プレゼンテーションについて学びたいなら、まず本書。
異論は認めようがない。
世界一から学べる機会がここにあるのに、「一番じゃないとダメですか?」なんて言えないではないか。
本書「スティーブ・ジョブズ驚異のプレゼン」に書名以上の紹介はいらない。強いて蛇足するのであれば原題の"The Presentation Secrets of Steve Jobs"に引き続く副題"How to Be Insanely Great in Front of Any Audience"ぐらいである。
いくら今や時価総額世界一のテクノロジー企業を率いているといっても、Jobsが世界一の経営者だという意見には異論の余地はいくらでもある。また同社の製品が"Insanely Great"、「超スゴイ」かどうかに異議を唱える人も少なくないだろう。しかしプレゼンテーションにかけてJobsの上を行く人の名を挙げられる人など地球上に存在するだろうか。
目次- プロローグ
- 第一幕
- 構想はアナログでまとめる
- 一番大事な問いに答える
- 救世主的な目的意識を持つ
- ツイッターのようなヘッドラインを作る
- ロードマップを描く
- 敵役を導入する
- 正義の味方を登場させる
- 幕間その1 10分ルール
- 第2幕 体験を提供する
- 禅の心で伝える
- 数字をドレスアップする
- 「びっくりするほどキレがいい」言葉を使う
- ステージを共有する
- 小道具を上手に使う
- 幕間その2 第一人者から学んだシラー
- 第3幕 仕上げと練習を行う
- 「うっそー!」な瞬間を演出する
- 存在感の出し方を身につける
- 簡単そうに見せる
- 目的に合った服装をする台本を捨てる
- 楽しむ
そのJobsのプレゼンテーション術を、Jobsでないあなたにも使えるようにしたのが、本書である。そう。「Jobsでないあなたにも」、である。本書は「その時Jobsはどうしているか」はもとより、Jobs以外の人がそれをどうしたのかという事例もふんだんに紹介している。
あの「ウィキノミクス」の訳者による翻訳も素晴らしい。元より「この本を訳すならこの人」という訳者であるが、それ以上に
404 Blog Not Found:書評 - ウィキノミクスいや、むしろこなれすぎている。特に固有名詞に関してはそうだ。「ボインボイン」がBoing Boingのことであるというのに気がつくのにしばらく考え込んでしまった。本書はケーススタディーが多いので、どうしても固有名詞の量が多く、そして横書きで見慣れた名詞がカタカナでこれだけ登場すると、さすがに目にさわる。むしろカタカナ化しない方がよかったのではないか。
という点が改善されているところがすばらしい。あくまでカタカナが基本であるが、英字の方が自然な固有名詞はちゃんと英字のままになっている。"iPod"は「アイポッド」ではないのだから。ウィキノミクスの頃の訳者を iPhone 3G だとしたら、本書は iPhone 4 ぐらい洗練度が上がっているのではないか?
それが一番よく反映されているのが、あちこちにさりげなくおかれた対比表。それが本書を読みやすい本に留まらず、使いやすい教材にしている。たとえばこんな具合に。
P. 188
あり得た紹介の言葉 ジョブズの紹介の言葉 新しいマックブックファミリーは厳しい Energy Star 基準を満足しており、臭素系難燃罪も使っていません。内部のケーブルも部品全てPVCフリーですし、エネルギー効率が高く、しかも水銀フリーのLEDバックライトディスプレイを搭載しています。 「業界で最もグリーンなノートパソコンだ」
"They are the industry's greenest notebooks."
そして心憎いことに、あのスピーチの解析が、"One more thing"としてついてくる。
目次 - 続き- アンコール 最後にもう一つ
- 謝辞
- 訳者あとがき
- 解説
- 参考文献・動画など
これ以上の参考書がありえるだろうか?
とはいえ、やはりこれだけは蛇足しておきたい。本書には「シーン0」が本当はあるのだと。
- プレゼンするに足りるプロダクトを用意する
いくらJobsが「現実歪曲空間」を展開しようとも、そこに Mac も iPod も iPhone も iPad もなければどうしようもない。どんなに素晴らしいプレゼンテーションも、中身がなければ単なる詐欺師の口上。このことは本書の One more thing である Stay hungry, stay foolish スピーチに関してすら成り立つ。Jobs が挙げた「三つの物語」が他人の作り話だとしたら、このスピーチが成り立つだろうか?
プレゼンというのは結局かけ算なのだ。0に何をかけても0。
しかし Great な製品を、 Insanely Great にすることは出来る。
Jobsのプレゼンテーションは、製品の一部なのだ。
プレゼンで製品を紹介するのではなく、プレゼンを製品の一部にしよう。
それこそが、本書、というより Jobs から学べる一番の教訓なのではないだろうか。
Dan the Ordinary Presenter

Jobs氏は自社の商品、サービスのプレゼンテーションを行い、自社製品の魅力を伝えるという点で凄いと思います。 私もiTunesのPodcastsでそのプレゼンテーションを観て、Apple製品のファンになった1人です。
それに対して、高田明氏は自社製品ではなく他社製品をテレビ(あるいはその他のメディア)でその製品の魅力を引き出して伝えているので、Jobs氏とは違った意味での素晴らしさを感じます。
高田明氏の不思議な、親しみを感じるなまり風で英語を話せて日本の商品を海外に発信できたら、日本の製品の魅力も海外の方にも伝わったりするのではないかなあとも思ったりします。難しいことだとは思いますが。