ソフトバンククリエイティブ織茂様よりPDF献本御礼。

今最も注目せざるを得ないこの二社に関して、今後もいくつもの本が書かれるだろうが、現時点において、真っ先に読むべきなのが本書ということになる。なぜなら、両社に関して最も重要なのは、両社の協調と競争では実はなく、両社が世界に何をもたらし、そしてこれから何をもたらそうとしているかであり、そして本書ほど、それがコンパクトに収まった本はないからだ。

本書「アップルvs.グーグル」は、タイトルどおりAppleとGoogleの協調と競争について書かれた一冊でもあるが、両社のfrenemy関係を通じて、今後のIT世界がどのように変わって行くかを、現時点においてまとめた一冊。

目次
まえがき
第1章 ポストiPhoneの世界で何が起こっているのか?
林 蜜月関係の果てに敵同士を「演じている」アップルとグーグル
小川 PCの時代が終わり両社の思想の違いが浮き彫りになった
第2章 「戦争」はどこで起こっているのか?
小川 戦場は「デバイス」から「クラウド」へ
林 モバイル時代のOS戦争は、互いに「敵」を必要とする
第3章 それぞれの戦略と戦術
小川 世界を変える2社の真逆のアプローチ
林 「誰でも」と「上質な体験を誰でも」の違い
第4章 戦いに割って入れなかった日本企業が学ぶべきこと
小川 「ユーザーの声を聞く」だけではイノベーションは生まれない
林 今は真剣勝負の時代
あとがき

勘違いして欲しくないのであるが、本書はそれだけで完結した一冊ではない。「アップルとグーグルのすべて」ではないのだ。むしろ本書はそれを知るための起点となる一冊であり、本書読了後に読者はこの話題に関する本をもっと読みたくなるだろうし、そして読むべきである。たとえば「なぜ「上質な体験を誰でも」を目指したAppleが、時価総額でMicrosoftを抜いたのか」は、本書を読んだだけではわからない。これに関しては『デジタル東洋経済』の「アップルの正体」が出色の出来だった。PC/MacのブラウザーでもiPhoneでも何とか読めるが、最も快適に読めるのはiPadだった。無料なのでぜひ目を通しておいていただきたい。

また。この話題は本blogでも好んで取り取り上げているので、以下のリンクが「次に読むべき本」を見つけるのに役立つはずだ。

ああ、なんとここでもAppleとGoogleだ。両社に関する情報へのアクセスもまた、両社の製品を通じて行う羽目になるわけだ。なんでこんなことになったのか。10年前にこんなことになるとは誰が予想していただろうか。

しかし、両社とも、願望していたはずである。

世界を、変える事を。

両社と他の同業他社の最大の違いが、そこにある。

両社とも、本気で世界を変えようとしているのである。製品が売れてその結果世界が変わるというのではなく、世界を変えるために製品を出すという点において、両社は双璧なのである。

両社について知っておくべき最も重要な点が、そこなのだ。

変わるではなく、変える。

本書を先に読むべき理由が、そこにある。これこそ真っ先に抑えておくべき点であり、そして本書はそれで丸ごと一冊なのだ。Jobsの言葉でいえば、"everything else is secondary"ということである。

しかしsecondary以降もきちんとやってこそ、世界は変わる。

そのsecondary以降が、両社の最大の違いだ。

The Bestを目指すAppleと、The Mostを目指すGoogle。

両社がどんな場合に戦い、どんな場合に手を結ぶのかも、それがわかれば見えてくる。

それにしても、本書を読了してからはたと考えてしまった。

もしこの両社がなければ、世界はどうなっていたのか、と。

Macはおろか、Windowsすら出現していないのではないか。

もちろんwwwもなく、通信はあれど世界はパソコン通信はなやかりし頃のままだったかも知れない。検索はもちろん日経テレコンで、検索はあいかわらず「プロの犯行」。

そしてもちろん本blogも存在しない。本blog以前にblogなるものが存在しない。

そう考えると、両社の存在の大きさが、改めて実感できる。

「もし両社が存在しなかったら」。それを念頭におきながら本書を読み進めることをお勧めする次第である。

Dan the Frequent User Thereof