これ、反対の対象は実はカジノ特区なんかじゃない。
la_causette: カジノ特区に反対する理由「国民の射幸心を煽り、勤労の美風を損い、国民経済の影響を及ぼす」が故に賭博行為を刑罰規定を持って禁止するというのが今の時代に合わないというのであれば、全国一律で賭博行為を合法化すべきだからです。他方、賭博罪の存在価値は今なお薄れていないということであれば、「特区」を作ってそこでのみ賭博を合法化する合理的な理由はありません。すなわち、特定の地域でのみ賭博を合法化するというのは理屈に合致していないのです。
反対の対象は、特区という考え方そのもの。
「日本を駄目にした」という言い方が私は大っ嫌いなのだけど、その私ですらこれに関してはそういうのにやぶさかでないほど、駄目な考え。
国家というのが実は特区であることは、日本では禁じられているカジノが世界中にあることからもわかる。カジノに行きたかったら日本で特区が設置されたりあるいは日本全国でカジノが解禁されるのを待つ必要はない。ウォーカーヒルや済州島やマカオなんて国内旅行と手間暇は変わらない。そうなっているのも、ありがたいことに日本の法律は日本という「特区」にしか及ばず、他の「特区」にはそれに従う義務も義理もないからだ。
ここで想像してみよう。世界に日本しかない世界を。
そこにはカジノがない代わりに、ありとあらゆる場所にパチンコ屋がある。アテネにはパチテノン、ローマにはパチンコロッセオ、パリにはCR凱旋門、NYCには出玉の女神、もちろん日本には銀河鉄道777(だったっけ?)…
そんな世界、私はごめんこうむる。
しかし、日本だけが世界なら、世界はすでにそうなっている。
山手線内でさえ駅前のいたるところにパチンコ屋がはびこっているし、パチンコ屋の駐車場で子供が熱中症で死ぬのは今や夏の風物詩だ。それでいて、「ゲーム脳の恐怖」は出版されても「パチンコ脳の恐怖」は出版されない国、それが日本だ。
la_causette: カジノ特区に反対する理由しかし、それは、特定の地域のみをえこひいきする「特区」制度を作ってよいという理由にはならないように思われます。
えこひいきしなかった結果が、これだよ。
何をひいきして何をひいきしないかは、それぞれの国が決めてよいことに今のところなっている。金持ちをひいきしたい国、起業家をひいきしたい国、ギャンブラーをひいきしたい国…いろいろな国という名の特区があって、そのおかげで税務も刑務も、それぞれの国を運営している人たちが悔しい思いをしているのは確かだ。私自身、国境のおかげで売掛金を回収しそこなったことが何度かある。
しかし「唯一の正しい法」に支配されることに比べれば、その方がはるかにマシである。いやなら逃げるという手が必ず用意されているのだから。
今の日本の閉塞感というのは、国内に逃げ場がないこと、これに尽きる。日本は小さな国でない上に、島国であるので「外に逃げる」というオプションは思いつきにくいし、思いついたとしても実行に移しにくい。言葉の問題がさらにそれに追い打ちをかける。もちろん逃げようと思えばいくらでも逃げられることは、私自身が実証例ともなってはいるのだけど、自らの経験と照らし合わせても、この国は逃げるコストの大きな国だ。
逃げという手は本来弱者こそ活用すべき手なのに、強者にしかそれが許されていない。
なぜ特区が必要か。理由はこれで充分なのではないか?
Dan the Rolling Stone -- Legally So Far
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