プレジデント社中嶋様より献本御礼。
現書名どおり、あの"The Little Kingdom"がかえって来た。
今後もAppleとSteve Jobsに関する本はいくつも出るだろう。
しかし、Apple創業からAppleを追われるまでの物語、Star Warsで言えばEpisode I-IIIに相当するこの時期の物語として、本書を超えるものは現れないだろう。
今や王どころか皇帝と呼んだ方がふさわしいJobsは、「一介の平民」からいかにして新たな王国を築き、そして自ら築いた王国を追われたのか。
古代の英雄譚としか思えない現代史が、ここにある。
本書「スティーブ・ジョブズの王国」は、今や世界随一のヴェンチャー・キャピタリストである著者が、かつてTimeの記者だった時代にAppleを取材して著した"The Little Kingdom"(邦訳:「アメリカン・ドリーム」)を、「帝国時代」しか知らない現代の読者向けにプロローグとエピローグを追補して復刻(return)した物語。
目次- 増補版プロローグ
- 序章 The Journey is the Reward
- 第1章 一九五〇年代のシリコンバレー
- 第2章 スティーブ・ウォズニアックの少年時代
- 第3章 スティーブ・ジョブズの少年時代
- 第4章 クリームソーダ・コンピュータ
- 第5章 ジョブズの初恋
- 第6章 電話狂時代
- 第7章 インド行きとアタリへの就職
- 第8章 ホームブリュー・クラブの活況
- 第9章 マイクロプロセッサの誕生
- 第10章 社名はアップル・コンピュータ
- 第11章 宇宙始まって以来の偉大な設計者
- 第12章 社長人事
- 第13章 アップル2のデビュー
- 第14章 スコットとジョブズの「戦争」
- 第15章 大物支援者たち
- 第16章 成長の痛みと組織の歪み
- 第17章 億万長者続出!
- 第18章 ようこそIBM、心から歓迎します
- 増補版エピローグ
- 解説 林信行
2010現在、Steve Jobsと言われて思い起こすのはこれだろう。
本書解説によると、高校の英語教科書にも採用されたそうだ。
つまり、「メインストリーム」ということである。もしシリコンバレーの物語が「ローマ人の物語」だとしたら、ユリウス・カエサル役はこの人しかいない。
しかし貧乏とはいえ由緒ある貴族の家庭に生まれ育ったカエサルとは異なり、JobsもWozも平民であった。共通しているのはCapto Mundiで育ったことか。しかし彼らが生まれ育った当時、そこには Silicon Valley という名前すらない辺境だった。
Jobsもかつてはヨソモノ、ワカモノ、そしてバカモノだったのだ。そうでなければ新たに王国を築く理由などないではないか。
本書はさまざまな読み方が出来る。ヴェンチャービジネスの創業のケーススタディ。ギークヴェンチャーがスーツカンパニーへと変節する過程の記録、ギークとナードの比較人類学…
しかし、本書の読み方として最も素直かつ面白いのは、あくまでも一物語として読むことではないか。
ビジネスとは、結果が全てではないにしろ第一に優先される活動である。
にも関わらず、本書の序章はこの言葉で始まる。
The journey is the reward.
目的地ではなく、旅そのものが旅の報酬というわけである。
JobsとAppleの道程は、まさにそのようなものであった。
読書も、また旅である。
"The destinations are the rewards" ではあまりにつまらない。
Bon Voyage!
Dan the Journeyman
P426「日本製品はわが海岸に打ち上げられるときは、死んだ魚も同然だ」
「アップルだけがなぜ売れる!?」ヒカルランド
P160「日本人は死する魚のように海岸に押し寄せてくる。
やつらは波際に打ち寄せる死魚の群れだ」
The Japanese havehitthe shores like dead fish.
They're just like dead fish washing up on shores.
同じ原文を訳したと思われる日本文ですがどちらが忠実でしょうか。