全く懲りないなあ。

「規制の範囲、むしろ拡大」——漫画家3団体、都条例改正案に反対声明 - ITmedia News
漫画家3団体が、都の青少年育成条例改正案に反対する声明を発表。「漫画家の表現の自由を侵害する恐れが極めて高い」とし、都議会が改正案を否決するよう強く求めている。

石原慎太郎は障子にイチモツをぶっ差したうえに嫌がる女を手込めにするハレンチな小説で名をはせた。映画化された時は映画館の回りで婦人団体が「こんな映画を見てはいけません」と言って回ったそうだ。そういう人間が率先して漫画の表現規制をやる様は喜劇だがその先にあるのは悲劇。less than a minute ago via web

同感なのだけど、それ以上に、「表現の自由」という反対理由ではいつまでたっても懲りないこともそろそろ分かったので、別の視点から表現規制撤廃を説得してみることにする。

一言で言えば、「税金の無駄遣いはやめろ」ということ。

なぜそれが税金の無駄遣いといえば、表現規制には「子供たちを有害な情報を遠ざける」効果が見込めないからだ。それ以前に「子供たちに有害な情報」が「子供たち自身に有害」か多いに疑問なのだけど、この点に関してはすでに

で述べたのでここでは繰り返さない。

1. ブラウザーの向こうは東京都ではなく世界

インターネットが殺したもののリストは下手をするとスキャンされた本の目録より長いかもしれないけど、そのなかでも既に死んでいることに気が付いていないものの最たるものが、検閲の有効性。インターネットの母国米国も、世界最大のユーザー数を誇る中国も、やばい情報を一生懸命見せないようにあれだけがんばっても全然うまく行かない。串鯖(proxy server)なんていくらでもあるし、外交機密だってDVDに焼いちゃえば Lady Gaga のCDと見分けがつかないし。

ポルノよりはるかにヤバく、そして遥かに少ない人しか興味を示さない情報すらこれなのに、ポルノを法律で何とかできると思い込むのは、「美人はウンコしない」ってのと同じぐらい滑稽で無益な思い込みだといいかげん気づくべし。情報化が可能なものは、それがなんであればそれを「なきものにする」ことが出来る政府はもはやこの惑星には存在しない。

2. 実は一番の負け組は出版社

そうしてがんばって条例を改正し、そして今後も条例を「青少年のために」改正しつづけたとしよう。するとどうなるか?エロマンガはなくなるか?

これまたネットに答えがすでにある。日本国では局部が露出した実写ポルノは販売できないはずなのだが、そんなものはネットでいくらでも手に入る。それも「洋物」どころか、日本人が出演し日本で撮影されたものがいくらでも。エロマンガも、そうなるだけのこと。すでに「ビニ本」は死んで久しい。殺されたのではない。誰からも必要とされなくなって「餓死」したのだ。

むしろこれを機会に電子書籍化が加速して、エロマンガに思わぬルネサンスが到来するかも知れない。

それを実は狙っているのだとしたら東京都もなかなかの策士だということになるけれど、条文にも言説にもそんな気配は一切ないなあ。

「えー紙?」「キャハハハハハ」「紙が許されるのはコロコロコミックまでだよねー」っとなったあげく、結局泣きを見るのは出版社と印刷所というオチしか見えないんだが、大丈夫か?

3. 検閲官は双方を満足させようと努力すればする程、両方から恨みを買う

誰が何を検閲するかに関わらず、検閲官に実作業をやらせる限り、検閲には必ずグレーゾーンが生じる。知事の書いた小説だって立派にグレーゾーンに入っている。「あれはOK」というからには「いや、NGだ」という人を納得させるだけの理由を「主文」で述べなければいけない。それを作品ごとにやる手間暇というのは一体どれくらいなのだろうか?自分が検閲官になったつもりで考えてみたが、ものの三秒で気が遠くなってやめた。

それでいて検閲官というものが讃えられた世というのは、古今東西存在しない。OKを出せば検閲賛成派がつき上げ、NGを出せば今度は検閲反対派がブーイングしまくる。2,300年ほど前ならうるさい連中はまとめて坑に放り込んで埋めればよかったかも知れないけれど、21世紀の知事にできるのは、せいぜい気に食わない人々を「三国人」だの「ババア」だのと呼び捨てる程度。

どう考えても、割にあわない。

私は検閲官をやらされている東京都職員一同に同情を禁じ得ないと同時に、「それは都の仕事ではありません」といい意味でお役所仕事に徹した上で、東京都にしか出来ない仕事に戻るべきだと一納税者として申し上げる。

検閲なんぞ、民間にやらせればよいのです。

App Store や ニコニコ動画を見ればわかるでしょ?

Dan the Taxpayer