筑摩書房松本様より献本御礼。

東大生が「理性の限界知性の限界」に挑むと何が起こるのか - そして、何が起こらないのか?

本書は、その記録である。

本書「東大生の論理」は、「理性の限界」「知性の限界」で名高い國學院大學文学部教授である著者による、東大生観察録。講義録ではない。本書において東大生たちは著者の授業の生徒であると同時に、著者の観察対象である。

その著者が列挙した東大生の特徴は、以下の通り。

  1. 状況を整理して図式化する[分析力]
  2. 与えられた条件全てを満たす方法を発見する[適応力]
  3. 解の一般化を見いだす[洞察力]
  4. 負けず嫌いで再度チャレンジする[奮発力]
  5. 想像力が豊かで発想を発想を転換できる[独創力]
  6. 自主的に応用し研究を進める[行動力]
  7. 懐疑的で風刺できる[批判力]
  8. 理解できたと納得するまで諦めない[忍耐力]
  9. 思いのほか正義感が強い[倫理力]
  10. 感受性が鋭くユーモア・センスもある[機転力]

これに私は以下を加えたい。

  1. そんな彼らといえど、各個撃破すれば簡単に御すことができる[結託力の欠如]

著者は生徒達に、こんな課題を出す。

本日のコメントシートには、裏に「一万円」か「一〇〇〇円」のどちらかの金額を書いてほしい。どちらを選ぶかは個人の自由だが、クラスメートと相談してはならない。もし「一万円」と書いたシートがクラスの二〇パーセントを超えたら、プレゼントは何もない。しかし、もし「一万円」と書いたシートが暮らすの二〇パーセント以内だったら、書いてある通りの金額を君たち各々にプレゼントしようではないか…

その結果がどうであったかは本書で確認していただくとして、もしあなたがこの場にいたとしたらどうするか?私なら、クラス全体に聞こえるようにこう叫ぶ。

「出席番号の末尾が5か0の奴だけ一万円と書いて、残りの奴は一〇〇〇円と書け。賞金が出たら後で山分け」。

一方的に叫んでいるだけなので相談にはならないし、もしクラスメートがそれに従えばクラス全体が受け取る賞金は最大になるし、後で山分けするので一〇〇〇円と書く者も損はしない。

結託と再配分。実はこれこそが「アルティマ・ゲーム」や「囚人のジレンマ」に確実に打ち勝つ最良の方法なのである。なぜこれらのゲームでプレイヤーが胴元に勝てないか?ルールその他の方法でプレイヤーどうしの結託が封じられているからだ。

とはいえ、実際のところ東大生たちでなくともこれを「相談」すなわち「反則」と受け取る人々がほとんどなのではないか。コメントシートはとにかく、最終試験でこれをやられてはたまったものではない。

しかし一歩赤門の外に出れば、これは反則でもなんでもなく、我々が日頃やっている--あるいはやりそびれている--ことでもある。労働組合に至っては、それを反則とすることそのものを反則とするほどだ。

逆に結託を何らかの形で封じることが出来れば、少数による多数の支配もさほど難しくない。小はクラスから大は国家まで。

東大生というのは、このゲームで言えばあらかじめ裏に「一万円」と書いてあるコメントシートのようなものだ。それは断じて一万円そのものではない。それを自分だけのものだと思えば、あとで著者ないし娑婆に取り上げられてしまうのがオチだ。

社会的ジレンマの解は、社会的結託。

これは、きちんと教えるべきだったのではないだろうか?東大生たちにはなおのこと。

Dan the Player of the Game