出版社より献本御礼。
「まさか」0。「やはり」100。我が意を得た一冊。
あなたが何らかのプロであれば、同様の感想を抱くはずだ。
もしそうでないのなら、まだあなたはプロになりきれていない。
本書「最高齢のプロフェッショナルの教え」は、タイトルどおり現役最高齢の15人の言葉を、著者たちが引き出したもの。
目次- 91歳 現役最高齢「漫画家」やなせたかし
- 60代で人気漫画家となった「アンパンマン」の生みの親
- 88歳 現役最高齢「パイロット」高橋淳
- 戦前から70年、2万5000時間を飛んだ、その名も「飛行機の神様」
- 78歳 現役最高齢「ギター職人」矢入一男
- 数々の有名ミュージシャンを魅了した伝説の「ヤイリギター」の生みの親
- 96歳 現役最高齢「喫茶店店主」関口一郎
- 銀座の名店「カフェ・ド・ランブル」店主は80年間、コーヒーの研究を続けてきた
- 85歳 現役最高齢「落語家」桂米丸
- 落語芸術協会の最高顧問。いまだ新作に挑戦する85歳の落語家
- 83歳 現役最高齢「ライフセーバー」本間錦
- 30年以上、水死事故ゼロの記録を樹立。「海の守り神」と呼ばれる、水難救助隊隊長
- 93歳 現役最高齢「スキーヤー」高橋巌夫
- 日本初の音楽プロデューサーから転身、雪原を舞い踊る93歳のスキーヤー
- 89歳 現役最高齢「ピアニスト」室井摩耶子
- 本物の音楽を知りたい一心でドイツに渡った、この道80年の日本を代表するピアニスト
- 82歳 現役最高齢「花火職人」小口昭三
- 星が消える花火「マジック牡丹」を開発。3世代で伝統を支える82歳の花火職人
- 84歳 現役最高齢「杜氏」継枝邑
- 半世紀かかって磨き上げた腕と経験により、多くの日本酒コンクールで金賞を受賞。
- 90歳 現役最高齢「DJ」安藤延夫
- 会社倒産後、47際で日本初DJとして再出発。若者や外国人を魅了する最高齢DJ
- 84歳 現役最高齢「バーテンダー」山下達郎
- この道、65年。札幌ススキノの名店「BARやまざき」で多くの文化人を魅了してきた
- 51歳 現役最高齢「JRA騎手」安藤光彰
- 48歳でJRA騎手免許試験に合格。地方競馬から「遅咲きの移籍」を果たした異色のジョッキー
- 83歳 現役最高齢「洋樽職人」斎藤光雄
- 55年間、数々の困難を乗り越えてきた日本のウィスキー樽造りのパイオニア
- 103歳 現役最高齢「声楽家」嘉納愛子
- 歌の心を伝えるために103歳になった今も歌い続ける
最高齢だけあって、51歳の安藤を除いて日本人の平均寿命より上である。しかし彼らの言葉に、加齢臭はない。ほのかな華麗臭があるだけで。肖像写真が、またいい。それぞれ年齢相応で、若作りなところは一切なく、しかし目つきが少しも老いていない。
歳をとってもかくありたい、ではなく、このように歳をとっていきたい。
そう。現在系。
彼らを彼らたらしめているのは、「最高齢」ではなく「現役」の方なのだから。
彼らの中に、「歳をとったらこうなりたいと思ってやってきた」などという人は一人もいない。
全員が、「明日はもっとうまくやろう」の積み重ねで今に至っている。
そのことは、以下の台詞に集約されている。
P. 233「もしも20歳に戻れたら何をする?」と聞かれても、これまでの人生にとても満足しているから戻りたいとはちっとも思いません。大好きな歌をやってこられて、本当に楽しかった。先のことなんか全然考えず、やってきただけなんですけどね。
103歳 現役最高齢「声楽家」嘉納愛子の台詞である。
「資本主義はなぜ自壊したのか」もう一つ、最近、国民の不評を買ったのが「後期高齢者医療制度」の導入である。七十五歳以上の高齢者を対象に、年間六、七万円程度の保険料を年金から天引きするという。
たしかに老人医療費の増大は深刻な問題ではあるだろう。だが、厚労省によって「後期高齢者」と指定された人たちは日本が経済大国になるうえでの立役者に他ならない。いかに財政難だとはいえ、そのような功労者に対して、いきなり保険料を年金から天引きするという過酷な政策を打ち出すのは、国家として正しいあり方だろうか。
むしろ、どんな知恵を使ってでも「日本社会に対する貢献に感謝して、これから医療費はすべてタダにいたしますので、安心して余生をお過ごしください」とするのが為政者というものであろうし、「敬老の精神」というべきものであろう。
彼らがこれを聞いたら苦笑するか一喝するかのどちらかだろう。
P. 141ヨーロッパに行かずに藝大の教授になっていたら、もっと早く家を建てることができたかもしれない。年金ももらえていたでしょう。私は年金をもらっていないんです。だから貧乏しながら活動を続けているんですけどね(笑)。
こちらは、89歳 現役最高齢「ピアニスト」室井摩耶子の台詞。
天職は、年金に勝る。
そんな彼らも、はじめから天職に巡り会えたわけではない。そういう幸運な例も本書には出てくるけれど、どちらかといえば最初に登場する「還暦過ぎてから売れだした」やなせたかしのように、それまでずいぶん道草をしてきた人が多い。「好きだから続いている」のは確かだが、やりもしないで好きになったわけではないのだ。
その意味で「仕事の選り好みなんてするな。目の前の仕事をきちんと片付けろ」と主張する「20代で人生の年収は9割決まる」の主張は正しい。「いきなり天職」組ですら、「目の前の仕事をきちんと片付けて」きたのだから。本書で最も早く天職を見つけたのは88歳 現役最高齢「パイロット」高橋淳。小学生の時にはもうパイロットになると決め、16歳にはもうグライダーに乗っていた彼の最初の仕事は、一式陸攻での雷撃任務。
終戦を迎える直前の1945年7月。そのころぼくのいた鹿児島の基地にはもう。ぼく以外の機体以外は残ってなかった。
一度目の挑戦で一生ものの仕事を見つけるのは、これくらい壮絶なことなのかもしれない。
しかしそこまで壮絶な体験をしなくても、天職はいつか見つかる。
仕事を引き受け、やりとげ続けていれば。
最高齢ではないけれど、「現役」「天職」といえば、やはりこの人が思い起こされる。
And the only way to do great work is to love what you do.
この人も一発で天職を見つけたが、この人ほど壮絶な代価を支払った人もそうはいない。天職を首になって再就職するなんて、よほどの天職なのだろう。
103年、生きていて思うのは「人生は公平だ」ということ。苦労したら同じだけ、恵みがあるんです。
だとしたら、苦労は先の方がいい。
この台詞に、納得できるようになるまでは。
Dan the Man with Callings
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