老いたな、大前さん。

大前氏 アップルは失敗繰り返しアンドロイドに負けると予測(NEWSポストセブン) - エキサイトニュース
アップルのCEOのスティーブ・ジョブズは、今まさにパソコンのMac(マッキントッシュ)と同じ失敗を繰り返そうとしているように見える。“Macの失敗”とは、OSを他の企業には売らず、ハードとワンセットで自分で売ろうとしたことである。

15年前とはルールが変わったのに。

いや、変えたというべきか、

インターネットの自らの重みと、Appleが。

以下、学習難易度順に不等式をならべてみる。

1. 利益>売上

まずはこちらをご覧いただこう。

これは一年間を通してみたAAPL, GOOG, MSFT の「IT三巨頭」の株価の騰落にNASDAQのそれを重ねたものだが、MSFTはおろかGOOGまでNASDAQよりアンダーパフォームなことにやや驚かされる。しかし最も驚きなのは、APPLの上昇率だろう。今年の5月26日にMSFTを時価総額でも抜いて以来その差はさらに広がり、今やAAPLの時価総額は$300Bを伺うところまで来た。MSFTのそれは$240弱、GOOGのそれは$190強。

それでいて、割高感はそれほどない。P/Eがそれほど上がっていないからだ。AAPLは21.5、MSFTは12.03、GOOGは24.71。MSFTの割安感が目立つが、これこそWindowsの呪いというものだろう。よりによって携帯OSにまでWindowsの名をかぶせるとは。 iOS が Mac OS X Mobile で Android が Phonix だったらこうなっていただろうか。しかし重要なのは、Androidを擁するGOOGより、AppleのP/Eは低いということ。

Appleの株価には、利益の裏付けがあるのだ。

企業の持続可能性は、利益で決まる。

売上では、ない。

個人事業から世界最大の会社まで。

大前さんが絶賛していたAOLとTime-Warnerの合併のその後を見れば、それがわかる。AOL Time-Warnerが再び分かれた時に失われた時価総額、およそ11兆円。これもすごいが、わずか一年でそれ以上に時価総額を得たAAPLはさらにすごいとしか言いようがない。

2. 長期>短期

2010年だけ見ると、Appleの成長は「まさか」であるが、Jobsの復帰以降のAppleを見ているものからすれば、むしろ「やはり」という感が強い。Appleの製品が「途切れていない」からだ。

これに関しては

にも書いたのだが、GoogleとMicrosoftの分を補足すると、両者ともやはり続ける力においてAppleに見劣りする。Nexus OneにGoogle Wave…ProでもAirでもないプラスティックのMacBookにクリソツのChrome PCは続くのだろうか? Microsoftに至っては、続ける力以前にはじめる力を疑いたくなる状況だ。Windows Phone 7 で巻き返すというのならKinって一体なんだったんだ?

続ける力がいかに重要かは、MacBook AirとApple TVに見ることが出来る。どちらも初代は話題になった「だけ」だったが、メイジャーチェンジ後大ヒットとなっている。Windowsだって95まではそんな状況だったのだ。Googleは…あまりに多くのことに手をつけ、あまりに多くのものを放置しているのでまとめようがない。多分中の人々にすら。

3. 減らす>増やす

1995年。ほとんどの人にとって、インターネットはまだはじまったばかり。当時は接続できること自体がすごいことだった。サードパーティーのソフトを買わずともOS自体が接続をサポートするWindows 95が爆発的ヒットになったのはあまりに当然のことだった。

以来15年。インターネットというのは日常茶飯事になった。先進国ではパソコンどころかケータイも普及して久しく、そのどちらもすでにネット接続が当たり前になっていた。一生かかっても見切れないどころか、一ページ見ている間に生涯に見ることが出来る以上の早さで生み出されるWebページ。その隙間にアップロードされる、一生かかってもダウンロードできないほどの適法違法有象無象のファイルたち…

ネットワーカーたちは、心底うんざりしていたのである。

コンピューターとネットの、うざさに。

Googleは、そのうざさを減らすことで自らの価値を高めてきた。必要なページをすぐに見つける検索、スパムフリーのWebメール。そして著作権団体の訴訟にもびくともしない動画投稿サイト…

Appleも、しかり。「Karma-Free」な音楽販売システムは、今や音楽だけではなく映画や番組も、そしてアプリも売るシステムへと進化をとげ、「1000曲をポケットに」入れる事ができる音楽プレイヤーは、今やWebそのものをも持ち歩ける万能電話になった。

その過程でいかに多くのものが無視され捨てられてきたか。Google八分にFlashバンドル廃止…その都度「自由の敵!」というシュプレヒコールが上がれど、過ぎてしまえばシュプレヒコールを上げた者さえ両社のとりこになっている。

Googleの株価の迷走ぶりは、自らの価値を見失っているぞという市場からのメッセージではないか。AAPLはとにかくNASDAQよりアンダーパフォームとは情けないにもほどがある、と。

Appleはこの点でぶれることがなかった。Jobsの最大の功績は、Appleのぶれをぴたりと止めたことにある。ぶれを大きくしそうなものごとを、全部捨てさせたのだ。

改めて振り返ってみると、前世紀には三つの不等式の向きは全て逆だった。利益は四半期で語るべきもので、1円より多く稼ぐ事より1円でも多い額を集めてくることが優先され、そして狭く深くを追求する者より広く浅くを追求するものがもてはやされた。

今は、全ての不等号が逆転している。

古き佳き日本の企業には、むしろ順風ともいえるのではないか。

老舗日本的な慣習など、とっくに捨てたものがほとんどかも知れないけれども。

そんな2010年もあと3日。なんだかんだ言ってAppleの主要新製品を全て買った自分に呆れつつ、電話付きのものだけで14機種も出た Android端末を「どれにしようか」と迷ったあげく、ついに一台も入手せずに終わりそうなことが少し寂しく、そしてそのことに多いに納得した一年であり、今後10年の潮流がしっかりと感じられた一年であった。

Dan the Man with Too Many Apple Products Bought, and Even More Competitive Products Tried