著者より献本御礼。

よくわかってらっしゃる。日本のキャラというものを。

そう、キャラ。

in でなくて by な理由が、ここにある。

キャラの構成要素諸君、必読。

本書「世界が絶賛する「メイド・バイ・ジャパン」」は、「日本これからどうするよ」を考えるにあたって一冊だけで読むとしたらコレ!という一冊。これでも足りなければ前著「オタクで女の子な国のモノづくり」を。

なぜか。

日本はなぜ世界でいちばん人気があるのか」をはじめ、他が皆「ツン」が足りないと言っている中にあって、本書だけは「もっとデレ上手になりましょう」と喝破しているから。

オビより
かくも弱々しく日本は世界を魅了する
目次
はじめに
第一章 極東・辺境国のポップ・カルチャーが世界を救う
Jサブカルの世界認知
平和の産物、同時に負け組の大量生産
少数の勝ち組と大多数の負け組
魂の救済の役目
辺境の地の力学
衣食足りて問われる心の機能
キーマンは二代目世代
モノやコトづくりへの橋渡しの大事さ
日本の魅力ある物語り性とは
第二章 技術とサブカルの相乗効果
愛着こそ最強のきずな
道具への愛着を演出する
ツンデレに見るセンスの工業利用
おもちゃ屋ならではの発想
使うほどに価値が増す
業界間でなく世代間の感性の違い
選ばれし者
第三章 いじられる前提の商品設計
カスタムカー「痛車」の可能性
自分の部屋が動く「痛車」ワールド
カスタム品に上から目線で静観するメーカー
醒めない愛着:新妻~古女房への愛の形
日本ならではの愛着の出し方
ユーザーの愛を育む
市場と協力して完成させる車
カスタム化に見る「ケーレツ2・0」時代のモノづくりのヒント
第四章 心の安寧のための道具
日本独特の産業観
プチプチに見る病み付きの構造
技術の本質について考える
ペン回しに見る道具の本当のゴール
「しょせんは子どもだまし」という意識を捨てる
神の領域にまで入れる道具
第五章 技術は弱者のためにあり
弱者向け技術を磨く
車椅子界のポルシェ
自助努力を促す甘やかさないアシスト技術
強い人向け技術と弱い人向け技術の相似性
弱者にかぶせる魔よけのお面
第六章 あちら側技術とこちら側技術
得意なのはどちらの技術か
人間の脳の中に潜む宇宙
魂の合成
こちら側の盟主
オカンアートに見る天然への衝動
天然夫婦の間に生まれた子どもたち
痛い文化の拓く道具の未来
第七章 真のクールジャパンの完成形
カラクリ人形に込められた演出家のセンス
「寸止め」という設計思想
職人気質とクールジャパンの融合
求められるのはバランス
おわりに

日本鬼子は、どのようなキャラであるべきか。

ツンデレ、である。

クールでかつキュートなジャパン。

それが著者の答えであり、私の答えでもある。

日本はデレっぱなしでいるにはあまりに出来る子で、しかしツンを貫き通すほど強い子ではないのだから。

普段はツレないのに、困った子を見ると放っておけない。

そんな子が、モテないわけがないではないか。

著者の慧眼は、そんな心理が日本のオタクに固有のものではなく、世界に通じるということをきちんと指摘したことにある。著者による指摘は本書で確認していただきたいので、私はここで一例だけ指摘することにする。

右のキャラが、いまいち萌えない理由を3つあげなさい」を見て、私が最初に思い起こしたのは右の絵だった。

これは萌えないを通り越して萎えるが、なぜ萎えるだけなのだろう。そしてこちらは萎えで終わってしまったのに、なぜ「いまいち萌えない娘」の方は、皆で「どうすればいまいち萌えない娘が萌えるようになるか考えてみて」もらったのだろうか。

「いまいち萌えない娘」には、キャラがあったからだ。

キャラがあったからこそ、皆がこぞって手を差し伸べたのだ。

そのことは、日本人だけではなく中国人だって実は知っているのである。ひそみに習うの故事の出自は中国なのだから。

ツンデレは、全世界に理解される。

しかし、誰もがツンデレになれるわけではない。ツンとすますだけの実力と、デレるだけの誠意がなければなれないのだから。どちらが欠けてもだめなのだ。

ではどちらが難しいのか。

実はデレの方なのである。

おわりに
世代によって多少の違いはあるものの、どの世代も多種多様なキャラクターたちと共に育ち、膨大な述べ時間、アニメ画像にさらされていて、それはあたかも青写真のように思考回路に焼き付いています。ただ、これらの感覚はいずれの点もオフの時には盛り上がれる話題ではあるものの、いざ仕事モードになると「それはさておき…真面目に考えますか」と急に違う力学が出っ張って来てギクシャクした動きになる傾向があります。

スバルはこれの公式痛車をリリースするのだろうか。

論評はこれくらいにして、〆ることにしよう。

本書読了後は、安心してこう言える。

「日本のことなんか、全然心配じゃないんだからねっ」

Dan the Part of Her