ついに、ついに、ついに文庫化。

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フラクタル幾何学(上下)
Benoit Mandelbrot / 広中平祐監訳
[原著:The Fractal Geometry of Nature]

著者が亡くなる前にそうして欲しかった。そして著者に見せて上げたかった。

この版形に、これがきちんと収まるとは、想定の範囲外ではないか。いや、版形というものもまたフラクタルの一種である以上、当然著者も想定するだろうけど、それが装幀できるとなればまた別問題なのだから。

本書「フラクタル幾何学」は、「フラクタル」という言葉と概念を世にしらしめた"The Fractal Geometry of Nature"の、1984年に日経サイエンスより刊行された邦訳を文庫化したもの。

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シャノンの最大の功績は、情報という曖昧模糊としたものに、計測可能で明快な定義を与えたことにある。そう。情報は計れるのだ。

だとしたらマンデルブロの功績はさらにすごいと言えるかもしれない。ある意味曖昧模糊そのものを計測可能にし、明快な定義を与え、その上名付けたのだから。

自然そのもののように、アトラクティヴでエレガントな、名前を。

マンデルブロ以前にも、フラクタルな現象は知られていた。ペアノ曲線シェルピンスキーのギャスケット…しかしそれが「自然の幾何学」であることを見抜き、Fractalと命名したマンデルブロの功績はとてつもない。

さらにとてつもないのは、それを見抜いたに留まらず、その見抜いた知見をさらに計算機に投じることで、今まで誰も見たことがない「自然」をも提示したことにある。

もう、何度目にしたことか。

これから何度目にすることか。この書評を書いている今でさえ、このアニメのOPで目にすることになるのだし。

自分でも何度描いてみたことか。

なのに飽きないのは、これがやはり自然だからだろう。

本書を文庫化されるにあたって一番心配だったのは、この自然な図画がきちんと再現されているかだったが、それは杞憂だった。下巻に至ってはカラー図版もきちんと再現している。フラクタル次元ごとの索引も。この二つがあるので、本書は必ず上下巻とも入手すること。

「それならいっそ分冊しなければ」というのは一般論としては正しいが、こと本書に関しては分冊は正しい。この厚さで合冊してしまうと、どうしても中ほどの図版はきちんと見えなくなってしまうのだから。

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そうではない可能性も懸念したのだが、本書がまさにあのフラクタル幾何学の文庫化であることを現物であることを確認した今ならはっきり言える。これはとんでもないバーゲンであると。

しかし、待たせ過ぎでもある。文庫化に27年とはマンデラの獄中生活なみではないか。27年前の私は、日経サイエンス版を地元の図書館に購入してもらうしかなかった。これほど「モダン」な古典がずっと若くて貧乏な人々に届かない状態にあったなんて、なんともったいない。

中学生でも「感じ」とることが出来て、高校生でも「追う」ことが出来て、それでいて中年でも「味わえる」。原典というもののよさを知る意味でも、これほどの本は空前ではないのだろうか。是々非々自らの目と手でご確認を。

Dan the Part of the Fractal Nature