これ、DECについては正解なのだろうけど…

2011-02-17 - 未来のいつか/hyoshiokの日記
DECの凋落の原因は、むしろ無能な経営者によって引き起こされたというよりも、むしろ、有能だったがゆえに、成功の呪縛から逃れられなかったという風に考えられる。

VMSについては違うのではないか。

DECユーザーにして、(ほぼ)非VMSユーザーとしては、納得しかねる。

私は VAX で Computer Science というものにはじめて触れた。厳密には、それに接続されたVT-220と、2400bpsのモデムを通して。100台以上の端末をぶらさげても何とか動く VAX はすごいな、と、後に Sun や Apollo を使うようになって感銘はより強くなった。

ただし、そこで動いていたのは VMS ではなく Ultrix だった。BSDのふるさとだということを考慮すればそれはむしろ当然のことだったのかも知れないけれど、 VMS に触れる機会というのはついになかった。

1995年、私がはじめて買った Wintel マシンはDIGITAL HiNoteだった。プリインストールされていたWindows 3.1には目もくれず、Windows 95 と Linux のデュアルブートにしたっけ。後に Linux は FreeBSD に入れ替えたけど、ずいぶんと長い事愛用していたものだ。

VMS は、インストールすらできない。

私の DEC という会社に対する印象はすこぶるいい。なのに VMS に直に触れた機会はただ一度。TWICSというかつて存在した ISP のアカウントが VMS だったのだ。その時の印象はいいものとは言えない。まずもって勝手がわからない。そしてそれ以上に参考書もなければユーザーコミュニティもない。それでも当時は日本で大学外でインターネットにアクセスできる数少ない環境だった。しかしISPが雨後のたけのこのように出来る過程で、Unixアカウントは簡単にとれるものとなり、いつしか私はTWICSにアクセスしなくなっていた。

わたしも一介のエンジニアとして、VAXのアーキテクチャーは、コスト性能比もいいし、スケーラビリティーもあるし、互換性も申し分ない、VMSは性能もいいし、使い安い。それに比べればUnixなんておもちゃだと本気で思っていた。Unixとの機能比較表を作れば、VMSには○がいっぱいついて圧勝という風に思っていた。実際そうなのであるが、顧客は安いSunのワークステーションを買って行った。多くの顧客にとって、VAX ClusterとかSMPとかスケーラビリティよりも、Unixの方が安くて使いやすかったのである。

そういくら中の人に主張されても、そもそも触れる機会すらないのでは、比較などしようがない。

その一方、1987年に初代Honda Civicを売り払って Macintosh SE 買って以来、私は未だに Mac User である。学割がずいぶん効いたし、BMUGというユーザーグループもあった。そのBMUGのミーティングに、 Bill Gates が Word のプレゼンに来たのも今となってはいい思い出である。もちろん Microsoft もさまざまな学割を用意していてくれた。NeXTですら、学割が効いた。まあ6000ドルが4000ドルでは私にはとても手が出ず、金持ちのぼんぼんの友人に触らせてもらうに留まっていたのだけど。

とにもかくにも、今も生き残っている技術ブランドは、四半世紀前から右も左もわからず金もない学生をユーザーとして受け入れるための便宜をはかっていたのは確かだ。

VMSは、どうだったか。

私にはBSDのふるさとでOSの産湯を浸かったという強烈なバイアスがかかっているのでとても断言はできないのだけど、 Apple や Microsoft のような種まきを、DEC はしていたのだろうか? VAX はさておき VMS は?

これこそが VMS が衰え、 Unix が栄えた理由ではないか。少なくとも破壊的イノヴェーションが理由でないことは断言できる。Unixが生まれたのは VMS より先なのだから。製品に投資をしても、ユーザーを育成しようとしなかった結果がこれだよ。

どっかの国に似てるなあ、ぞっとするほど。

Dan the Seeded by Some, Neglected by Others