盟友宋文洲の大人気メルマガ「宋メール」連載コラムの第二回目をこちらにも掲載します。
- メールマガジン申し込み | ソフトブレーン株式会社
助けられる力
小飼弾
http://blog.livedoor.jp/dankogai/
この記事がみなさんのお手元に届く頃には、3月11日から四週間が経っていることになります。その3日前の4月5日現在、警察庁の発表による東日本大震災の死者1万2431人、行方不明者1万5153人。未だに死者の数を行方不明者の数が上回る状況に言葉もありません。
しかしこれですら「史上最悪の震災」より一桁少ない。地震のマグニチュードでほぼ同等の2004年スマトラ沖地震の死者・行方不明者は合計で227,898人(USGS)。M7.8の1976年の唐山地震では公式発表で242,419人(wikipedia)。日本震災至上最悪の関東大震災は、M7.9で14万2800人。地域比較においても、時代比較においても、現代日本の防災力の強さが見てとれます。
それだけに、今回の東京電力の不手際が、なおのこと目につきます。福島第一原子力発電所の状況は言うにおよばず、計画停電の実施のありかた一つとっても、世界最高の防災技術を持つ、世界最大の電力会社のやっていることにはとても見えない。
実施の詳細をWebページで告知したら、Webサーバーが過負荷で落ちる。やっと情報を入手できたと思ったら、今度は茨城県や千葉県外房などの被災地を「予定通り」に計画停電させる。そのくせ計画停電の最大の原因である、火力発電所の被害状況については「地震のため停止中」としかプレスリリースを出さない…。
なぜ、東電の対応はこうも後手後手にまわってばかりなのか。
「助けられる力」が足りなかったから、というのが私の見立てです。
例えばWebページへのアクセス集中は、キャッシュサーバーをたてることで回避可能でした。実際、つながらない東電のWebサーバーを補完したのは、大はYahooから小はblog(私のそれを含む)に至るWebサイト。いずれも東電より小さな組織が運営するものです。また、これらのサイトは単に東電のデータを再配布にとどまらず、それを検索可能にするなど、東電よりずっと優れたアクセス環境を提供しています。
「未来改造のススメ」http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51646097.html の共著者でもある友人、岡田斗司夫はtwitterでこんなことを言っています。
ニュースを見ないのは、僕たちには固有の「悪い癖」があるから。僕たちは「普段は知らなすぎ」「非常時はムキになって知りたがり」だ。これ、逆であるべき。平時は注意深くニュースを監視すべき。非常時は思い切って専門家たちに任せるべき #otakingex
東電は電力のプロではあっても、Webのプロではない。もし東電が日常Webを監視していたら、普段から公開データはPDFやエクセルのような二次利用しにくいフォーマットではなく、テキストファイルなどで用意していたことでしょう。そうしておくだけで、Webの専門家たちは「勝手に」任されてくれるのです。
震災の際、電力というのは最も先に復旧するライフラインです。電力がなければ他のライフラインの復旧すらおぼつかない。その意味で電力会社というのは「助けること」に関しては専門家。しかしその電力会社ですら、「助けてもらう」しかない状況があるということを我々は今回学びました。そして助けられる力が足りないことが、自分だけではなく他の人々まで危機に追いやるということも。
Dan the Contributing Writer Thereof
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。