これなのだけど…

浜岡原発:全面停止へ 政府が異例の要請 - 毎日jp(毎日新聞)
菅直人首相は6日夜、首相官邸で緊急記者会見を行い、中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)について、現在稼働中の4、5号機を含むすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請したことを明らかにした。

しばらく考えてでた結論は、「安全のため」。

ただし、政治の。

1. 止めても安全度はすぐには上がらない

まず、現在の商用炉に共通の脆弱性に関して。

我々素人が福島第一原発で学んだ最大の教訓が、これ。原発は、止めても「止まらず」、「止めたら」事故になる。福島第一原発の事故は、臨界停止後だった。1号炉から3号炉までは、臨界は停止しても余熱を捨てる機構が停止して、その結果過熱。

「それは停止後だから。冷間停止まですればずっと安全」という意見は一理ある。が、4号炉は冷間停止どころか燃料棒が空の状態だったのに、建屋を同じくする使用済み燃料棒プールの冷却が止まって水素爆発したことを鑑みれば、結局のところ、現在浜岡4・5号炉で燃えている核燃料を全て取り出して津波の手の届かないところに移動するまで安全宣言は出せないはずだ。

2. 浜岡4・5号は福島第一1-4号炉の違い

次に、炉ごとの違いに関して。

同じ福島第一原発でも、比較的新しい5号炉と6号炉は無事だった。福島第二原発も。浜岡4・5号も比較的新しい炉で、特に5号はABWRという最新型。同形の柏崎刈羽6・7号は中越地震の時に止まったが、2年5ヶ月かけて再稼働にこぎつけている。同じような災害で同じような事故が起きるか、かなり疑問ではある。

3. 地震予知など役に立ったためしがない

それでもまだ原発は人が設計したものである以上、「こうすればこうなる」はわかりやすい。地震はそうはいかない。我々が知っているのはせいぜい「どこで起こりやすいか」程度であって、「いつ起こる」まではわからない。なのに

具体的には文部科学省の地震調査研究推進本部が「30年以内にマグニチュード8程度の東海地震が発生する可能性は87%」との分析をしていることを挙げ

というのは一体なんなのだ。もしこれが真に受けてもよいのであれば、なぜ誰も東北地震を警告していなかったのだ?「東海地震」のかけ声ばかりで阪神大震災も中越地震もスルーしてきた地震調査研究推進本部というのは、失礼ながら、原子力安全・保安院以上に役に立たない組織に見える。

要するに、科学技術的な見地からは、「なぜ浜岡」かはまるで理解できないというわけだ。

では、政治的・経済的な見地ではどうか?

1. 浜岡なら止めてもしのげる

EURO SELLERの悠遊通信 電力会社9社の原発依存度も指摘しているとおり、原発依存度は関電は5割を超え、震災前の東電も3割を超えているのに対し、中電は1割強。これなら電力確保は問題なさそうだ。営業的には大問題ではあるけれど。

浜岡原子力発電所 - Wikipedia
中部電力は業界平均と比較し、原子力発電の比率が低位で推移しており、火力発電にて年間発電電力量の7割以上を賄わなければならず、業績の不安定要素として重くのしかかっており、2000年代後半の原油価格高騰の影響を受け2008年7月、29年振りの赤字に転落した

「浜岡止めても電気は止まらない」、もうこの一点だけでも、「止めるなら浜岡」となるのはなるほどではある。止めなければいけないから止めるのではなく、止めやす(い|そう)から止めるというわけだ。

404 Blog Not Found:原発萌えな私ですら、原発はオワコンと言わざるを得ない理由で述べたように、私自身は原発を徐々に廃止して行くのは賛成だしそれは充分可能だと考えている。しかしこういう形をとるのが望ましいとはとても思えない。少なくとも…

浜岡原発:全面停止へ 政府が異例の要請 - 毎日jp(毎日新聞)
浜岡原発が停止した場合の中部電力管内の電力需給について、首相は「バランスに大きな支障が生じないよう政府としても最大限の対策を講じる」と説明。「電力不足のリスクは地域住民をはじめとする全国民がより一層、省電力、省エネルギーの工夫をしていただくことで必ず乗り越えていけると確信している。協力をお願いします」と呼び掛けた。

その「最大限の対策」の具体的な内容を提示すべきではないのか。「浜岡止めろ」というのが具体的な要請である以上、対価もまた具体的でなければ要請された側も困惑するばかりのはずだ。

Dan the Taxpayer