出版社より献本御礼。
これ、「フクシマ」抜きでもっと早く出版されるべきだった。
放射能に縁がある--ということは実は全ての人々--が手元においておくべき一冊。価格も千円未満だし。
本書「放射線のひみつ」は、東大病院放射線治療チーム、@team_nakagawa の中の人々の真中の人による、放射線を正しく--そしてあえて語弊リスクをとるのであれば「楽に楽しく」--怖がるための一冊。寄藤文平イラストのおかげでそう仕上がっている。
目次今そこにあるリスクに対して、我々がとれる方法というのは二通りあると私は考えている。一つはリスクの存在そのものを「知らなかった」ですませること。養老孟司もこのアプローチを勧めている。「健康診断のおかげでかえって不安になるならスルーしよう」。
しかし困ったことに、この方法は一度知ってしまうと使えない。残念ながら我々の脳というのは電脳のように記憶消去ができないのだ。それではどうするか。
「正しく知る」しか方法はないではないか。
さもなければ、そこにあるリスクそのものではなく、そのリスクに対する恐怖で我々は傷つき、そして死ぬのだから。
「福島原発の事故で放射性物質がばらまかれた」ことを、もう我々は知ってしまった。
しかしそのばらまかれた放射性物質が我々にどれだけのリスクをもたらすか。知られていないのはそこだ。
その意味で、2011年03月11日以降の日本人はガンを告知されたばかりの人に似ている。
あとがきがんは、日本人にとって、最大のリスクになっていると思います。2人に1人が、がんになると言いましたが、タバコ、お酒、偏った食事、運動不足などの結果、日本人男性の6割以上が、生涯に一つ以上のがんになります。しかし、私はがんになった患者さんは「格上の人間」だと思っています。
今や、がんの半分以上は完治しますから、「不治の病」ではありません。しかし、いまだに「死の病」といったイメージが定着したままです。ゼロリスク社会の中で、がん患者さんだけは、「自分の死」という最大のリスクを意識せざるを得ません。リスクなどないと「勘違い」している一般市民とがん患者の「死生観」を比較する為の調査研究をしたことがあります。その結果、がん患者さんは、「あの世がある」、「死んでも生まれ変わる」などと考えない反面、「生きる意義」を感じ、「使命感」を持っていることがわかりました。リスクを意識することが、「生きる意味を深める」ことにつながるのではないかと感じました。
その意味で、「フクシマ」は我々を「格上の人間」にする絶好の機会なのかも知れない。
Dan the Man at Risk
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