編集部より献本御礼。
これまた惜しい。
ここで引っかかってしまった。
【会話術】『会話は「最初のひと言」が9割』向谷匡史:マインドマップ的読書感想文■4.「遅れた理由」は口にしない
約束の時間に遅れたときは、「遅れた理由」を口にしてはならない。
「申し訳ありません」
と、このひと言だけでいい。(中略)
本書「会話は「最初のひと言」が9割」の「なぜその一言なのか」には多いに同意する。同意できないのは、肝心のその一言。で、一番同意できなかったのが、「(遅れて)申し訳ありません」。
なぜか。
「お待たせしました」という、遥かによい一言が存在するから。
理由は三つ
- 「申し訳ありません」の主語は「わたし」、「お待たせしました」の主語は「あなた」。
- つまり、「わたしが悪い」のではなく「あなたが良い」というのが、「お待たせしました」の背後にある論理。「申し訳ありません」は実は単なる自分語りだが、「お待たせしました」は相手があってはじめて成立する。どちらが「会話」にふさわしいのかは論を待たない。
- 自らの非を、その時点では認めていない。遅刻は「罪」だが、認めずに済むのであればそれに超したことはないし、非を咎められたら改めてその時に「申し訳ない」と言っても遅くはない。
- 「お待たせしました」は相手の忍耐に感謝すると同時に、それがもう不要であることの宣言でもある。つまり「待たせたことに関する話題はここでおしまい」というわけで。実際よほど待たせたのでない限り、本題そっちのけで「遅刻裁判」がはじまる公算は「申し訳ない」より「お待たせしました」の方が低い。
日本語は主語が省略される言語で、どころか文法的には存在しないとすら金谷武洋は主張しているが、それはあくまで文法の話であって、話そのものの話ではない。なぜそんな話をはじめたかといえば、主語を誰にするかが、会話上手と会話下手の一番の差であると私が感じているからだ。
会話上手は、なるべく「あなた」を主語にしようとする。
会話下手は、主語が終止「わたし」のまま。
主語が省けない英語だと、この差はかなりはっきりするし、はっきりする分「主語に迷ったら You にしろ」というのプレゼンテーションにおけるイロハのイとして確立されている。しかし「相手が主語」の方が相手に伝わりやすいというのは言語ではなく生理に依っている以上、日本語だってそうしない理由もないのだ。
Don't say "I'm sorry" when you can say "Thank you".
交通事故でなくとも、これはなりたつ。
というわけで各方面のみなさん、今しばらくお待ちを(笑)
Dan the Nullingual

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