編集部より献本御礼。
こういう本を、待っていた。
これこそ、(ライフ)ハッカーが最も苦手とし、しかし「ふつうの奴らの上を行く」のに最も欠かせない力なのだから。
本書「がまんできない人のための 真の忍耐力養成ドリル」は、「超★ライフハック聖典」「プラス思考をやめれば人生はうまくいく マイナス思考法講座」の著者の、ニンタイ力の成果。
本を上梓するというのもまた、ニンタイ力なくしてなし得ないのだ。
目次- ■第1章 諸悪の根源は忍耐力不足にあり! - トレーニングに入る前に
- ■第2章 忍耐力養成2週間トレーニング - 読むだけでみるみる身につく!
- 【基礎的な忍耐力を身につける4日間】
- 1日目 人生を倍生きる! 時間管理に耐えぬく方法
- 2日目 「沈黙は金」といっても、うまい「黙り方」がある!
- 3日目 ダイエットの王道、食欲を撲滅する方法
- 4日目 「考えない力」を駆使し、脳内リストラを断行する!
- 【忍耐を着実に仕事力アップに結びつける5日間】
- 5日目 雑念を鉄の意志で取り払い、集中する方法
- 6日目 ひたすら謝り続けることで生産効率をアップさせる
- 7日目 ナルシシズムを捨てると仕事がスムーズに進む
- 8日目 同じページを見続けることで知力はアップする
- 9日目 やりがいなき仕事に耐え、生産性アップ!
- 【万人に愛される忍耐力を身につける5日間】
- 10日目 自己主張を禁じることで愛される自分になる!
- 11日目 滅私奉公の会話術で会話が盛り上がる
- 12日目 ルサンチマンに打ち克ち、器をビッグにする
- 13日目 何を見ても無視し、好感度を下げない
- 14日目 短い気を忍耐力で長くし、人に好かれる方法
- ■第3章 口にしてはならないフレーズ39 - 今すぐやめて失言をなくす!
ニンタイとは、何か。
堪え難きを耐え、忍び難きを忍ぶことでは決してない。
著者もまた、この言葉で終わった66年の戦争をこう一刀両断している。
あとがき現状認識をしないままの忍耐だと、勝てるはずのない戦争について、「欲しがりません勝つまでは」と言ってしまいますし、「改革には痛みが伴う」と言われて、その改革の是非については考えずに「痛み」に酔いしれるだけで終わってしまいます。
忍耐というのは、考えるのが面倒なときに取ってしまう方法でもあるのです。
忍怠のあげくの忍滞では、待っているのは自暴自棄でしかない。イギリスの暴徒を見るまでもなく。
ニンタイ力とは、明日のために今日あえて待つ力のことだ。米百俵に手を付けない力のことだ。
あえて、待つ。認待。
待ってでも手に入れたいものを手に入れるための忍耐なのだ。
手に入れたいものが大きければ大きい程、必要な忍耐力も大きくなるのは当然のことである。Appleが時価総額世界一の会社になった最大の理由は、同社が保有する忍耐力が最大だったからに他ならない。iPadを待たせてiPhoneを先に出すなんて。
なぜ、それだけの忍耐力を持ち得たのか。
想像力、なのである。
現状を冷徹に認識し、「ここで忍耐できなかったらどんな目に遭うか」を、なるべくリアルに考えること
創造力にかけてはAppleをも凌ぐGoogleにないのが、これだ。とにかく動くとなれば出してしまう。「それが出ることで世界はどうなるのか」という視点が同社にはまるで見受けられない。
しかし著者が書き落としていることがある。
それは、忍耐には何が必要なのか、ということである。
兵糧、である。
たとえ来年になれば一粒の種籾が千粒になることを知っていても、今食べるものがなければなければ米百俵に手をつけてしまうしかない。その意味において、忍耐とは持てるものの特権でもあるのだ。
逆にいくら食べてもなくならないだけの蓄えや稼ぎがあれば、忍耐力などなくても種籾は残る。GoogleはそうやってGoogle+までこぎつけた。
しかし本書の想定読者である日本人は、この点においてイギリスの暴徒よりははるかにGooglersに近いところにいる。「明日になったら本気出す」という台詞が笑い話になるというのは、世界がうらやむ充実ぶりではないか。先達たちの忍耐力の賜物である。
しかしそれを考慮してもなお、忍耐するだけの米すらおぼつかなかった時代と比べて、忍耐力を養成しにくくなったと私は感じている。今日がまんしてでも明日手に入れたいものが何か、その頃よりずっと見えにくいのだ。その頃は「足りないもの」が「手に入るまで待つ」程度で十分な動機だったのに、今は「わざわざ考えない」とそれが何なのかはわからない。忍耐力養成に必要な想像力は格段に上がってしまった。
その意味で、震災後の電力不足というのは未曾有の機会である。「原発を再開しろ」という忍耐力不足の人々もまだ少なからず見受けられるが、電力需要を見れば、総体としての日本人の忍耐力は彼ら忍滞族を上回るのは確かだ。
しかし結局のところ、我慢は忍耐力行使の一過程にすぎない。結局忍耐力というのは、その結果何を得たかによって推し量られるのだ。まわりが我慢しているからわたしも我慢するというのは、忍怠以外の何物でもない。
あなたは、どんな明日を望むのか?
真の忍耐力は、そこからはじまる。
Dan the Impatient
自分が既にそうであると思い込む」
妄想力過剰で忍耐力皆無な人が増えたからね